373 :名無しさん:2014/01/31(金) 23:55:34

これはいつかのスレで投稿された原作世界に迷い込んだサクラがシンジュクゲットーの事件に出会したというSSのリレー的な物で、ちょっとしたハッピーエンドの話
誰か続き書いてちょとあったので書いてみた
掲載OKです


一つの救い



新宿ゲットーで起こった虐殺事件。

潜伏したテロリストの掃討作戦であるとして罪もないイレヴンと呼ばれる元日本人達が数多く犠牲になったこの事件で、奇妙な噂が一つ流れていた。
その噂というのが、ブリタニア帝国の皇帝に仕えるナイトオブラウンズという皇帝直属の騎士集団の一人、ナイトオブトゥエルブ モニカ・クルシェフスキーがグラスゴーを駆り味方であるはずのブリタニア軍を攻撃していたというものだ。
無論、エリア11に赴任等していないナイトオブトゥエルブが新宿ゲットーにいるはずがなく、唯のデマであると一笑に付されたのだが、偶然にも現場に居合わせていたイレヴンの親子が一部始終を目撃していた。

「あの方は間違いなくモニカ・クルシェフスキーだったよ。どうしてブリタニア人の、それもあの方のような皇帝直属の騎士が私達親子を助けてくださったのかわかりませんけどね。私はブリタニア人は嫌いだけどあの人だけは別として考えるようにしましたよ」

「騎士のお姉ちゃんありがとう」

親子を助けたとされるナイトオブトゥエルブはその後近くにいたイレヴンらしき少年と共に姿を消したとされていたので、本当にいたのか、そのような救出劇があったのかは定かではなかったが、「冷酷なブリタニア人でも弱者を助けるナイトオブトゥエルブだけは違う」という意識をエリア11に住むイレヴンたちに植え付けるには充分な出来事であった。
この噂はクロヴィスの元にも届いていたが、実際に相対したとされる兵士が皆戦死していたのに加え、ナイトオブトゥエルブはブリタニア本国にいると確認が取れていたために所詮はイレヴンの作り出した与太話であるとして相手にもされずに幕が引かれることに。

しかし、後年この噂を耳にしていたナイトオブゼロ枢木スザクは、第99代皇帝となったルルーシュと共にゼロレクイエムを目指す中で反乱を起こした旧皇帝派との戦闘時に幻とされるトゥエルブによる救出劇を思い出していた。

「我らはシャルル陛下に忠誠を誓った存在」

「皇位の簒奪など認められぬ ん? 迎撃部隊? しかしたった一騎でッ!?」

「このランスロット・アルビオンならッ!」

迫り来るナイトオブワンを筆頭としたラウンズの反乱軍。
まず最初に目を付けたのは、ナイトオブフォー ドロテア・エルンストの機体。

「えッ!?追い掛けきれない!!」

エナジーウィング機であるランスロット・アルビオンの動きを捕らえられずにいるドロテア機にスーパーヴァリスの弾丸を情け容赦なく発射する。

「まさかッやられたッッ――」

狙い違わずコックピットブロックがある機体中央部を穿った弾丸は機体その物を爆発させ、コックピット内にいたドロテアを爆風に包み込み彼女の身体を炎で焼き尽くした。
ドロテアに恨みはない。だが反乱を起こした以上彼女にはゼロレクイエムの完遂のため死んで貰わなければならない。だから情け容赦なく殺す。それだけだ。

「んッ?アルビオンか?!」

ドロテアの機体が爆発し乗っていた彼女が脱出出来ずに死んだであろうことを確認したスザクは驚くビスマルク機に目も向けず上空から四方八方に刃状粒子を撃ち出しラウンズの親衛隊機を次々と撃ち落としていく。
この時も容赦なくコックピットを狙う。運良く脱出したのならば追い打ちを掛けるつもりはなかったが、皆脱出できずに死んでいった。

374 :名無しさん:2014/01/31(金) 23:56:31

(お前達の死は無駄にしない。先に地獄で待っていてくれ)

ドロテアもラウンズの親衛隊達もこの手で殺したが。その命を奪ったことそのものを無駄にしない為にもゼロレクイエムを成し遂げて世界から争いを無くしてみせる。
戦闘中にも拘わらず死んでいった者達の命を無駄にしないと誓いを新たにした彼は、続いてナイトオブトゥエルブの機体に目を付けるとランスロット・アルビオンを急加速させて飛翔した。

「これが第9世代ナイトメアフレームのッ」

その圧倒的な戦闘力と速力に付いていけずコックピット内で戸惑いの色を隠せずにいたモニカの呟きなど一顧だにしないとばかりに有り得ないほどのスピードで迫ってきたアルビオンは、一瞬の後に眼前へと姿を現した。
正面モニターに姿を現したアルビオンはその銃口をモニカ機ではなく、彼女自身に対して向けている。
コックピットブロックの目の前、ゼロ距離の射程でフルバースト状態のスーパーヴァリスを構えているのだ。
引き金を引いた瞬間、スーパーヴァリスフルバーストの弾丸がモニカのその華奢な身体に撃ち込まれることとなる。
機体の爆発か。はたまた弾丸による破壊エネルギーによるものかは不明だが、彼女の身体は爆発と灼熱の炎に飲み込まれて焼き尽くされ、一瞬の内に灰となって消えるか蒸発してしまう。

(……)

だが、その銃口は機体下肢へと向けられ発砲された。

「枢木スザク――ッッ!」

4つの銃口から迸る目覆いたくなるような閃光がモニカの機体下肢を一瞬にして吹き飛ばし、機体に深刻な破損が生じた時に発生する警告音と共に脱出装置が作動。
イジェクションシートが射出されて地上へと落下しながらパラシュートが開かれた。

本当のことを言えばスザクはモニカも殺してしまうつもりであった。偶然脱出できたら放って置くが、そうでないならコックピットを撃ち抜いて葬るつもりであった。
スザクが手加減をして見逃そうと考えていたのはあくまでナイトオブスリー ジノ・ヴァインベルグただ一人。
彼とは友達だった。そのよしみもあり手加減して命だけは奪わないでおこうと決めていたが、特に親しくもないモニカについては反乱すればどうなるのかの見せしめとして、そしてゼロレクイエム完遂の生贄として、容赦なく撃墜するはずだったのだ。
それをこの土壇場に来てジノだけではなく彼女にも手加減したのは、かつて彼女が新宿ゲットーの事件で日本人の親子を助けていたと聞いていたからだ。
本人は知らないと言っていたが、それは公表するのがマズイから黙っていただけなのかも知れないとスザクは考えていた。
だからこその手加減。最早冷徹に事を進める以外には道は無く、ルルーシュと共に修羅に入った彼が出した小さな仏心。
それは、命を見逃された当のモニカでさえも与り知ることが出来ない、異界より来訪せし彼女の娘が起こした一つの奇跡だったのかもしれない。




こうして命を落とすことなく脱出したモニカは自分以外で唯一生き延びたジノと合流して日本へと舞い戻り、シュナイゼルや黒の騎士団と共闘。
終戦までを生き延び、貴族位を剥奪された両親との再会後、家に唯一残された財産である小さな農園を手伝っていく事となった。

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最終更新:2014年02月22日 19:09