644: トゥ!ヘァ! :2017/09/16(土) 18:15:37
大陸ガンダムseed 支援 とある親子の語り


その日。ギレン・ザビは父デギン・ソド・ザビの部屋に呼ばれていた。なんでも個人的な話があるということだ。

ギレンはいぶかしみながらも時間通りに父親の部屋を訪れていた。

「父上。話とはなんです」

「ああ。お前もそろそろいい歳だ。経験も積んできた。故にこの国…大洋連合に関する真実を伝えようと思ってな」

デギンはそう言ってギレンに対面のソファへ座るように促した。ギレンは促されるままにソファに座った。
彼個人としての父の言う真実というものが気になったからである。

「率直に言う。大洋連合を操っている秘密組織がある。そして儂はその組織に長年属している。その組織の名は夢幻会という」

ギレンは絶句した。夢幻会。聞いたことがある。まだ大洋連合ではなく日本単独であった旧世紀時代から続く秘密組織。その組織としての源流は戦国時代にまで遡ると言われている古の組織である。
無論こんな話は都市伝説として語られるだけで、昔から大洋連合の裏には謎の組織が存在するなどと言われる定番の法螺話であった。

「父上…冗談ではないので?」

デギンは答えず重々しく頷くだけ。つまり真実ということだ。まるで特撮映画のような事実に眩暈を覚えた。
デキンは変わらず語り続ける。

「とはいえ秘密組織と言ってもそこまで大仰なものでもなくてな。何もかも全てを意のままに操っているわけではない。所属している各業界人のパイプを使って事前に話の取り決めを行っているというのが真相だ。言ってしまえば巨大な談合組織。意見調整をスムーズにするための利害調整機関だな」

デギンは簡単に言うが逆にそれがギレンにとっては信じられないことだと思えた。巨大な談合組織。言うことは簡単だがそれがスムーズに機能させるのに一体どれだけ広い伝手や権力、資金力が必要となるのか。
更に言えば良識もだ。もしも個人的な欲望のためにその力を使えば大きな混乱や損失を招く。だが今のところ表立っては、そしてギレンの知っている限りではそういった大きな混乱や停滞はない。つまり彼らは必要とされる良識を持ち、私欲に左右されず組織を動かしている証拠というわけだ。
聖人の集まりかなんかか。ギレンは内心そう思った。
デギンの話は続く。

「儂はそこに所属しながら長年コロニーのために様々な交渉を行ってきた。いわゆるコロニー派閥の代表だな。ダイクンをトップに儂が補佐する形じゃった」

ダイクン。ここでダイクンというと息子や娘の方ではなく、その父親であるジオン・ズム・ダイクンのことであろう。つまり父デギンはジオン・ズム・ダイクンと共にその秘密組織に所属しながら今までコロニーのための利益を引き出し続けてきたということなのだろう。

「今まで長くやってきたが儂もそろそろ歳じゃからな。貴様に儂の後任を譲ろうかと思いこうして読んだわけじゃ」

「つまりこれからは父上に代わり私がその席でコロニーの利益を引き出せと?」

「そうじゃ。とは言えいきなりとは言わん。まず儂と共に会合に顔を出して皆に顔を覚えてもらう。儂の後継者としてじゃな。それから徐々に貴様に任せていくつもりじゃ。因みにダイクンの後任としてはダルシア・ハバロが務める。まあ彼はダイクンの息子であるキャスバル坊やが経験を積んで会合に出られるようになるまでの繋ぎらしいがな。本人もそのことを納得しておるようじゃ」

父は簡単に言うが今まで大洋を動かしてきた海千山千の化け物共と渡り合えということだ。今すぐどうこうという話ではないようだが、だからと言って簡単な話ではない。表面上は取り作りながらも内心では冷や汗ものだ。
何せ大洋連合のは人口、経済、軍事共に世界一の超巨大国家だ。地球の東アジアとユーラシアの持つ中央アジアを除けばほぼ全てのアジア圏とインド洋、オセアニア、太平洋の2/3までを手中に収め、宇宙では先んじてのコロニー進出のみならず火星や木星までその勢力圏を伸ばしているような文字通り並ぶ者のない大帝国だ。

645: トゥ!ヘァ! :2017/09/16(土) 18:16:21
そんな国を裏から動かすような組織…今までただの噂話でしかないと思っていたそれに行き成り入ってお前これから儂の後継じゃから頑張れと言われても、二つ返事で覚悟を決めることはできない。とは言え断れる話でもないが。
ザビ家の長男として、デギン・ソド・ザビの後継者という看板は昔から背負わされてきた。今更嫌ですとは言えない。

「あとこれはまだ想定の範疇を超えないが夢幻会はアンノウン…しかも敵対的で尚且つ現状の我々よりもずっと上の技術力を持つ連中が存在していることを前提で技術開発と国土開拓を進めておる。いわゆる異星人とかエイリアンの類じゃな。宇宙クジラの化石からその手の存在を大真面目に想定しているそうじゃ。無論そんなことを表沙汰にはできんからこれは夢幻会でも極限られた人間しか知らない事実じゃが…」

父がまた突飛もないことを言い出した。もう何を言われても驚かないと思ったがまさか本気で宇宙人と戦うことを前提に諸々の開発を進めているなど、どこのSF映画の話だ。なんだ…夢幻会とかいうとこに所属している連中は揃いも揃って狂人や夢想家の集まりなのか?
いや、この父が数十年も所属しているのだから真面目な人間達が大真面目に想定して取り組んでいることなのだろう。
宇宙クジラの化石のこともある。広い宇宙では何があるか予想できない。宇宙生まれのスペースノイドとしては確かに一理あるとも頷きたくなることだ。

…そして私もこれからはそんな組織の一員となるのだと思えば何も可笑しなことは…いや、やっぱ可笑しい。気苦労が絶えない気がする。また胃痛薬の量が増えそうだ。
そんなことを考えながら密かに胃を痛めている時ふと思ったことを父へ質問した。

「父上。大洋連合というのは巨大な国家です。それこそ地球圏随一と言っても過言ではないでしょう。経済や軍事に始まり、人口や資源、領土に更に言えば宇宙進出まで」

「そうだな。色々苦労もあったが結果的にはそうなった…がむしゃらにやっていた昔が懐かしいものだ」

「つまり実質地球圏一なわけです。大西洋や東アジアは認めたがらないでしょうが世界経済は大洋無しには立ち行かず、ユーラシア連合とはかつてからの盟友。気炎を吐いているとはいえ大西洋連邦や東アジア共和国、オーブなどがまとまったところでユーラシアと共に戦えばほぼ必ず勝てます。これはもう世界の半分と言ってもいい。
…ということはその大洋連合を裏から操っている夢幻会。これ実質世界征服を半ば完了させているのでは?」

「…ギレン。世の中には思っても言ってはいけないことがあるのだ。そりゃ今を見れば結果的にはそうなったが儂が若いころはそれはそれは他に追いつかれるんじゃないかとがむしゃらに前に進んでいてな…」

父デギンは話を逸らすかのように昔話を始めてしまった…やっぱ父も薄々そう思っているらしい。
世界の半ばを征服済み。そんな組織に所属する…これはどうみても悪役だ。最後には正義のヒーロやら愛の使者やらそんな感じの主人公達に倒される感じの。
ただでさえうちの一族はガルマやミネバ以外悪役顔が多いのに…これでは本当に悪の組織の幹部になってしまう。

父デギンが大総統とするとキシリアが女幹部、ドズルが力自慢の幹部、ガルマがイケメン系幹部でサスロは冷徹系幹部が似合いそうだな。
ミネバは敵となるヒーロー側と心を通わせる姫君といったところか。そうすると何か。私ギレン・ザビは参謀ポジの幹部か。終盤あたりで組織のトップに反逆して力を取り込むんでラスボス化する役どころ的な…

イカン…なんか変な思考になってきてるぞ。ここは頭を切り替えるためにも何か話題を振らねば。

646: トゥ!ヘァ! :2017/09/16(土) 18:17:10
「父上。ところで話は変わるのですが巷で父上がソドたんの名前でコミケに同人誌を出版しているとの話を聞いたのですが流石にこれには私も笑いましたよ」

「……………」

いきなり父が沈黙した。え、嘘…まさか…え?
「あ、あの父上。何か言ってください?ま、まさかそんなはなずないですよね?

「………ギレン……他の皆には内緒じゃぞ?」

「マジですか…」

思わず素になってしまった…まさかあの父上が…そんなうっそだろおい!?
内心でギレンが混乱しているとデギンが話し出す。

「いやね。昔仕事で忙しくてストレス溜まっている時に夢幻会のさるお方から誘われてな…取りあえず同人誌制作手伝っているうちにこう…染まってな…
実は若いときはコスプレなんかもして会場でぶいぶい言わせたもんじゃ。あ、母さんともそこで出会ったんじゃよ」

悲報。母も同じ界隈の人だった。そういえばあの人は妙にサブカルチャーに詳しかったな…

「母さんは当時そら美人なコスプレイヤーで有名でな。一目惚れじゃった」

そうして父のノロケが始まる。こうなると長い。そう思いまたしても話題転換をするために別の話を振った。

「そ、そういえば父上のその噂と聞いた時にソドたんと双璧を成すコロニー同人会の重鎮ズムたんなる人物の話も聞いたのですが、こちらの人物はなんとあのジオン・ズム・ダイクンという噂でしてな」

「………」

父またしても無言。まさかそうなの?本当にそうなの?嘘でもいいから否定してくれマイダディ!?

「さて。お前にはまだ色々と教えねばならないことがあるが、それはまたの機会としよう。今日はここらでお開きということで」

「ちょっと待って!否定して!嘘でもいいから否定して!え、マジなの?マジでそうなんですが父上!父上!父上ぇぇぇぇっぇぇ!!!!」

ギレン・ザビ。とある日の父との語らい。この日彼は幾つもの重要な秘密を抱えることとなった。そしてそのことは死ぬまで墓に持っていったという。

647: トゥ!ヘァ! :2017/09/16(土) 18:18:24
投下終了

ギレンさん&デギン公ギャグキャラ化する。

デギン公って年齢的に嶋田さんの先輩かもしくはフシみんあたりの同期っぽいのではと思うこの頃。

タグ:

大陸SEED
+ タグ編集
  • タグ:
  • 大陸SEED

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2024年03月05日 21:15