968: 加賀 :2020/02/08(土) 09:39:05 HOST:om126200124198.15.openmobile.ne.jp
「二斉射目で命中しました」
「流石は米国製のレーダーだな」
「日本のも負けてはいませんよ」
「そうだな」

 旗艦『長門』で橋本達はそう話していた。

『敵二番艦、経路外れます。此方に向けています』

 電探室からそう報告が来る。

「旗艦を守るため……ですかな」
「火事場泥棒が好きなソ連にも男気がある者は少しはいるようだ……だが無意味だな」
「後方の『伊勢』『日向』から瑞雲改二が発艦しています!!」

 見張り員が叫ぶ。

「松田司令……」

 二戦隊司令官である松田海将補の動きに藤堂は呆れたような声を出す。

「構わん。松田が当たらんと思っていたら当たらんよ」
「操艦回避の神様たる所以ですか?」
「まぁそうなるな」

 藤堂の言葉に橋本は苦笑する。なお、松田本人に関しては二戦隊旗艦『日向』の飛行甲板で瑞雲の法被を着用し、瑞雲の発艦を踊りながら見送っていた。

「神様仏様瑞雲様!! 今日は敵戦艦の撃沈報告を是非とも聞かせて頂く!!」
(おい……松田司令は大丈夫か?)
(あぁ……お前は『隼鷹』からの異動だったな。大丈夫大丈夫、松田司令はいつもああだから)
(それで良いのか……?)
(だって松田司令だしな)

 踊る松田の後ろでは整備兵達はヒソヒソと話ながらも手を休めずに発艦の作業をするのであった。また、『伊勢』『日向』から発艦したのは爆撃に特化した瑞雲改二である。
 瑞雲が戦艦の撃沈(爆撃)報告が無い(戦艦以外への爆撃報告はある)事に嘆いた松田の肝煎りで開発された機体である。その為、機体は800キロ爆弾が搭載出来るように改造され(流石に魚雷搭載案は橋本達に握り潰された)両翼にはロケット弾を搭載出来る如くなっていた。
 また、発動機も試作機では金星だと速度や性能低下が散見された事で敢えて戦闘機用発動機であるハー43を搭載するという荒業に出たのである。
 これにより瑞雲改二は日本だと『伊勢』『日向』のみの運用となる。そう、日本のみである。
 なんと、瑞雲改二に目を付けたのはかつて敵国として戦った米海軍と海兵隊が目を付けたのである。

「上陸作戦でコイツは使える」

 日本軍との経験で上陸作戦には酷い目に逢ってきた米海兵隊とそれを支援する米海軍としては確実に海岸防御陣地を叩ける兵器が欲しかった事もあり『コロラド』が試験運用をした切っ掛けにより仁川上陸作戦時には星マークと米海軍塗装をした120機の瑞雲改二が参加、北朝鮮軍の防御陣地を壊滅させる実績が華々しく戦歴に追加されるのである。
 それはさておき、二隻から順次発艦した瑞雲改二は三機一個小隊を組みながら素早く高度3000まで上昇、ソ連義勇艦隊が対空砲火を撃ち上げる中で次々と急降下爆撃を開始するのである。

「まさか……これが噂に聞く『ズイウーン』か!?」

 眉唾物としか聞いていなかったソ連義勇艦隊司令は今まさに目の前で急降下爆撃してくる瑞雲に恐怖した。

「へっ!! 瑞雲様からの贈り物だ!! タップリと受け取れェ!!」

 瑞雲改二隊は落ち着いて800キロ爆弾を投下していく。投下されたソ連義勇艦隊は回避を行うも爆弾が命中、命中した艦艇は炎上する。
 その中には戦艦『ボロジノ』『ノヴォロシースク』『ポルタワ』も含まれていた。特に速度が遅い『ポルタワ』は800キロ爆弾を五発も命中させられ炎上、消火も追い付かない程であり海戦が終わる頃には弾薬庫からの爆発により轟沈するのであった。

「『長門』は敵旗艦に集中砲撃!! 敵二番艦以降は松田に任せる」

 橋本は同航戦を選択、ソ連義勇艦隊が面舵をした事で橋本は取舵を命令した。

「取舵だ」
「取舵になさるのですか?」
「左様。取舵だ。それに徐々に距離を詰めろ」
「……分かりました、とぉーりかぁーじ!! 一杯!!」
『とぉーりかぁーじ!!』

 『長門』は左へ舵を切る。『長門』が取舵をした同一地点を後続の『日向』『伊勢』がさながらダンサーの如く転舵していく。

「三戦隊に命令。突撃せよ」

969: 加賀 :2020/02/08(土) 09:39:42 HOST:om126200124198.15.openmobile.ne.jp
 『長門』からの発光信号を受け取った三戦隊司令官黛治夫海将補は発した。

「三戦隊は『妙高』に続け!! 奴等の喉元に食らいつくぞ!!」

 三戦隊は直ちに増速、ソ連義勇艦隊に向かう。これを見ていた『ヴォロシーロフ』以下の残存巡洋艦隊が阻止に向かうも『シベリア』は機関故障により迎撃に迎えず、『タリン』は『酒匂』の砲弾命中による大炎上でそもそも論外であった。結果として『ヴォロシーロフ』以下も三戦隊の乱打とも言える砲撃で炎上、瞬く間に行動を停止するのである。
 そして『長門』らの殴り合いも続いていた。

「四番砲塔被弾!!」
「四番砲塔応答せよ!! 四番、応答せよ!!」
「各所で浸水が発生!!」
「応急隊、掛かれェ!!」
「長官」
「『長門』よ……此処が踏ん張り時だ。堪えてくれ」

 各所からの悲鳴のような報告に橋本は額に涌き出た汗をハンカチで脱ぐい取る。『長門』は15射目の射撃をしていた、既にソ連義勇艦隊との距離は25000まで詰めている。

「流石は最新鋭艦……というわけか」
「タフですね」
「当たり前だ、だが『長門』も戦艦だ」

 その時、『長門』の艦体が再び揺れる。一番砲塔に直撃弾があり砲員は総員戦死であった。

「大丈夫ですか長官!?」

 思わず床に倒れた藤堂だが橋本は手摺に掴まっており倒れてはいなかった。

「『長門』が簡単に沈むか!!」

 それは後に『長門』を象徴付ける発言になるのを橋本はまだこの時知らなかった。

970: 加賀 :2020/02/08(土) 09:43:05 HOST:om126200124198.15.openmobile.ne.jp
てなわけで続きです。

  • 瑞雲改二
その……酔っ払った時に友人と考えてしまいまして……(白装束
  • 黛治夫
ほんとはこの人、『長門』砲術長でも良かったけど村田さんに任せました
  • 三戦隊
史実の五戦隊、マジパネぇです(『妙高』『羽黒』を見つつ)

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最終更新:2020年02月09日 13:00