406: ham ◆sneo5SWWRw :2020/04/20(月) 21:48:35 HOST:sp49-98-148-110.msd.spmode.ne.jp
戦後夢幻会ネタ ham世界線 第一次ミッドウェー海戦 夜戦

夜の闇が更けるのに合わせてレキシントン艦内は、どん底に空気が沈んでいく。
シャーマン艦長はあまりの損害に悪夢を見ているのかと疑った。
なにせ航空支援の無いはずの戦艦相手に艦載機が全滅と言って良い損害を受けたのだ。
上空直掩のF2A 7機と帰還できた攻撃隊の内、再出撃できるSBD 3機では、最早まともな攻撃もできない。
せいぜい、後から来るネバダ以下の砲戦の弾着観測くらいが関の山だろう。
報告を聞くと、一番に目につくのは目視圏内に入る前に受けた謎の攻撃、次いで、水上戦闘機部隊による空戦での被害だ。
謎の攻撃はさておき、まさか水上機相手に艦上機が負けるとは思えない。
修理不能の機体を確認した整備士から、弾痕からおそらく20mm機関砲だろうとの報告を受け、ようやく納得できたが、ここまでのキルレシオは信じられなかった。
とはいえ、もう夜である。"普通の航空機"なら、もう出撃はできない。
あとは戦艦同士の純粋な砲戦で終始するはずだ。とりあえず、ネバダとの合流を急ぐこととした。

日向と千代田から2機ずつ発進した試作電探を搭載した零式3座水偵は、米軍機が来た方角に引かれた索敵線に沿って飛行しながら、米空母を捜索していた。
防空戦闘後、上空の一式水戦、瑞雲、零観を急いで収容した砲撃隊は、米空母の撃滅を決断した。
今米空母を逃せば、後々に禍根を残すのは歴史が証明している。
収容に1時間ほど費やした後、陣形を整えた砲撃隊は瑞雲を飛ばし、米艦隊を捜索しながら南東海域を進む。
午後9時。ついに米艦隊は見つかった。

『ネバダ級戦艦1。レキシントン級1。甲巡3。駆逐艦8以上認む。位置、ミッドウェー島より135度230浬』

半年前にレキシントンに搭載されたレーダーから敵水偵を発見し、無線を打たれたことを知ったニュートン隊は、残されたF2Aをなんとか上げて零式水偵を追い払いつつ、急いで日本艦隊に迫った。
レキシントン航空隊も壊滅して航空支援が得られず、イセクラスに速度で負けているネバダを連れている現状では距離を取ることは不可能だからだ。
ならば航空機が飛べない夜に距離を詰めて水上戦闘に持ち込むしかなかった。
幸いにして、艦船の数では勝っているし、レキシントンだってこの時のために8in砲を備えている。
"純粋な砲雷戦"ならば有利であった。
日付が変わった8日午前0時30分過ぎ。レキシントンとシカゴのCXAMレーダーが捉えた。

「敵機確認!数4・・・いや、8・・・少しずつが、増えています!」

それは日本艦隊が発進させた瑞雲であった。
カタパルトの発進に最低でも6分かかるため、空母の発進と比べると、その速度はいささか緩やかであった。
最初は弾着観測機の発進を行っていると米艦隊は思ったが、その数が増えている事とミッドウェーからの報告から、水上機による夜間爆撃だと気付き、急いで距離を詰めることとした。
航空攻撃が来る前に、発艦作業中で応戦できない間に距離を詰めて、先制パンチを入れるしかない。
遅いネバダの速力を一杯にまで上げ、ニュートン隊は、日本艦隊に迫った。
しかし、最大速度でも20ノットのネバダではとても間に合わず、ようやくレーダーで日本艦隊を捉えた時には、既に瑞雲がほとんど上がった状態であった。
午前1時15分。
ここに、開戦後初の、そして日米戦艦による初の艦隊決戦の幕が上がった。

407: ham ◆sneo5SWWRw :2020/04/20(月) 21:49:16 HOST:sp49-98-148-110.msd.spmode.ne.jp
夜戦の第一撃を出したのは瑞雲であった。彼らは、照明弾を投下する零観の誘導支援を受け、米駆逐艦に襲い掛かった。
数的不利で、尚且つ目障りな駆逐艦を先に排除しようという目的である。
突然の夜間爆撃、しかも目標が大型艦ではなく自分たちだと気付いた駆逐艦たちは大慌てになった。
既に肉薄雷撃のために単縦陣を組んで突撃していた米駆逐艦隊は急いで対空射撃を始める。
だが、主力であるマハン級は5門の主砲を除けば良くてボフォースと20mm機銃を積んでいるが、多くは12.7mmM2が4挺のみであり、まともな対空射撃などできなかった。
転生者のパイロットの一人は後に、「この程度なら喫水線を狙える反跳爆撃で良かったかもしれない」と後述するほど、その防御網は貧弱であった。
20mm機関砲も駆使して襲い掛かった瑞雲により、先頭を進む嚮導駆逐艦のポーターが真っ先に沈められ、ドレイトン、フラッサー、ラムソン、カッシンの4隻が撃沈、ショーが中破し、マハンとタウンズは小破した。
米駆逐艦隊は、日本艦隊に一発も撃つことなく、壊滅した。

瑞雲が攻撃を行うのを横目に、日向は米重巡3隻とレキシントンを相手に砲戦を開始した。
日向はまず、砲塔機構内に装填されている砲弾を空にするのも兼ねて、三式弾を米艦隊に向けて発射した。
対艦攻撃には威力が乏しい三式弾であるが、デリケートな電子機器であるレーダーを破壊するには充分であった。
たちまち、シカゴとレキシントンのレーダーは故障し、特にレキシントンは甲板上で火災を起こした。
その火災を目印に、改めて九一式徹甲弾を装填した日向をレキシントンに浴びせた。
元巡洋戦艦とはいえ、レキシントンの水線装甲厚は最大178mm。20kmで307mmの水線装甲を貫通する日向の35.6cm砲弾の威力には敵わない。
レキシントンも備砲の8in砲で応戦して命中弾を与えるが、レーダー射撃を駆使して砲撃日向のほうが命中率が高く、砲戦開始から4分ほどで、レキシントンは大きく傾斜し、沈没は時間の問題となった。
シャーマン艦長は総員退艦を急ぎ退艦を始める。最後にシャーマン艦長がボートで離れた後、傾斜の影響で航空燃料タンクにヒビが入り、漏れ出した気化したガソリンに引火したレキシントンは大爆発を起こして沈んだ。

赤々と米艦隊を火災で照らすレキシントンを片付けた日向は、ネバダに目標を変更した。
同じ一次大戦型超弩級戦艦で歳も1歳しか違わない両艦は、主砲は共に45口径14in砲、副砲も航空戦艦化で共に5in砲で、唯一門数で三連装砲塔試験艦のネバダが有利であった。
だが、両艦の決定的な違いは、二次大戦までの改装の規模であった。
日向はユトランド沖海戦の戦訓を取り入れて主甲板の装甲を135mmまで強化していたが、ネバダの装甲は就役時の76mmのままだった。
この違いを熟知していた松田艦長は、水平装甲を狙い、22km以遠の中遠距離砲戦に徹した。
日向の対水平装甲貫通力は27.5kmで137mm、威力が落ちる中近距離の18.3kmでも76mmだ。対するネバダは22.4kmにおいて対水平装甲貫通力は102mm。
上述の装甲厚の違いもあり、戦闘は徐々にネバダが不利になっていった。
ネバダは第1、第3砲塔の天蓋を貫通破壊されて砲戦能力を大きく落とし、ますます被害が酷くなっていく。
日向も相当数被弾したが、それでも砲戦能力はほぼ100%を維持して射撃を続けていた。
一方で、ニュートン指揮の重巡3隻は、ネバダが引き付けている間に近距離砲戦に持ち込もうと日向に突撃を開始した。
第7駆逐隊が阻止に入るが、数で勝っても重巡と駆逐艦ではその差は覆しにくく、ポートランドが魚雷3本を受けて大破し落伍するも、漣と曙が中破して撃退された。
駆逐艦を退け、1万5千まで近付いたニュートンだが、彼の部隊は、思わぬ横槍を受ける。
千代田から発進した甲標的である。構造の都合上、半分の6艇が先行して発進していた。対潜戦闘ができない重巡には脅威であった。
夜間の闇に紛れて近付いた6艇は、距離4000まで一気に近付いて45cm酸素魚雷12本を一斉に発射し、先頭のシカゴに5本、アストリアは4本を受け、大火災を起こした。
シカゴはまもなく弾薬庫に引火してニュートンらを巻き込んで爆沈し、アストリアは航行不能となり、潮と朧の雷撃によって沈められた。
生き残ったポートランドとマハン、ショー、タウンズは散り散りになって離脱。
ネバダもついに砲戦で大破・傾斜して速力が大きく低下。最後はようやく発進した甲標的第2陣の6艇によって止めを刺され、ネバダは波間に大きな悲鳴を上げるかのように轟音を響かせて沈んでいった。
かくて、海戦の帰趨は決した。

408: ham ◆sneo5SWWRw :2020/04/20(月) 21:50:06 HOST:sp49-98-148-110.msd.spmode.ne.jp
第一次ミッドウェー海戦 戦闘詳報
日本側
中破:日向、千代田、漣、曙
小破:潮、朧


アメリカ側
ミッドウェー島
死傷者:233名
建造物:全倉庫大破、無線方位測定器全損、
PBY:12機中2機完全破壊、8機大破

ニュートン隊
沈没:ネバダ、レキシントン、シカゴ、アストリア、ポーター、ドレイトン、フラッサー、ラムソン、カッシン
大破:ポートランド
中破:ショー
小破:マハン、タウンズ


真珠湾攻撃で米空母を取り逃していたこともあり、砲撃隊が米空母の空襲を受けたと聞いた山本長官は南雲艦隊に救援に向かうように指示していた。
南雲艦隊も源田参謀が空母を逃すべきではないと攻撃を主張し、直ちに6空母中最速の2航戦が向かうが、翌朝にハワイ・ミッドウェーの中間を過ぎた頃には既に海戦は決し、しかもレキシントンを砲戦で沈めたと聞いて、山口はポカンと口を開けて固まったという。
とりあえず彼に出来たのは、所在不明の他の空母から砲撃隊を守りつつ、機動部隊に合流することであった。
なお、ウェーク島は史実と違い、充分な砲撃と空襲で壊滅させたが、やはり大発の展開に手間取り、最終的に哨戒艇を浜辺に擱座させて揚陸してなんとか占領した。
ちなみに、如月は砲座とF4Fが伊勢によって破壊されたために助かるかに見えたが、哨戒していたタンバー級潜水艦トライトンの雷撃で撃沈されてしまう。
上空で警戒している瑞雲や駆逐艦が怒りの反撃をかけるが、エンジン不調で帰還中のもう1隻のタンバーを撃沈するだけに終わり、トライトンは取り逃してしまった。
さて、話を戻し、砲撃隊からのレキシントン撃沈の報告を受けた連合艦隊も同然で、山本も確認の無電を打つように指示するほどだった。
それが本当だと知った時は大喜びし、機動部隊と合流して本土に帰還し南雲らと一緒に報告に来た角田司令官と松田艦長を「よくやった!」と言って、機動部隊の面々よりも誉めちぎった。
瑞雲教の松田はこの時、格納庫部分の被弾でいくつかの瑞雲が失われた事を涙していた(幸い、褒められたことによる感激か、戦死した兵達を思ってと解釈された)が、
山本の行為により12航戦と一航艦との間に確執が生じ、後にミッドウェー海戦で噴出することになるが、それはまた別の機会としよう。

一方で、この海戦では日本とアメリカ、双方に課題を残した。
日本側ではこれまで「闇夜の提灯」と蔑まれた電探が大活躍し、しかも夜戦の射撃に大きく貢献したことから、電探の価値が大きく見直された。
しかも海戦後に甲標的乗員の収容時に一緒に救助した米軍捕虜から、米艦にレーダーの全面配備が進められていることが分かり、マレー沖"夜戦"の戦訓も加わって、電探開発に拍車がかかることとなった。
また海戦で窮地を救った甲標的だが、母艦からの全艇の発進時間、雷撃距離へ接近するまでの時間、どれもこれもかかり過ぎていた。
おまけに攻撃を終えた後は乗員は脱出して自沈処理するという経済効率の悪さもあり、艦隊決戦にはほとんど使えないという最終的な評価を下されてしまう。
一方で、真珠湾攻撃では史実と違い、被発見による航空隊の奇襲失敗と生存率向上から、湾口での待機に変更していたため、
軽巡セントルイスを湾口で撃沈し、湾の出入りを制限させるという戦果を挙げていたことから、泊地襲撃に使えると判断され、泊地攻撃兵器として開発が進められていくこととなる。

アメリカ側では、海戦の一部始終を海中から記録していたアルゴノートによって、詳細な報告書がまとめられ、いくちもの衝撃に見舞われた。
特に航空戦艦の能力が過大評価され、真珠湾で着底した戦艦の復旧に際し、航空戦艦化計画が持ち上がることとなる。
建造中の新型戦艦も航空戦艦化計画の対象に加えられるようになり、米海軍は一時期建造計画で迷走を見せるのであった。
また、戦艦の主砲弾による対空射撃もその威力が注目され、専用砲弾の開発がスタートし、
潜航艇も真珠湾での被害により、その有効性から、後に追い詰められた米海軍の反攻計画の一つとして研究が進められることとなる。

以上です。
甲標的、意外と使いづらかった・・・
水中速力速いけど、航続力が無さすぎて6~9ノットくらいじゃないと行けない。
千代田からの発進は、艦内の4本の軌条に3隻ずつ納まっているけど、外側の6艇は内側の6艇を発進させてから1艇ずつ内側の軌条に移さなければいけない、道理で艦隊決戦に使えないと判断されるわけだ。
戦闘はネバダ有利かと思われましたが、ユトランドの戦訓を反映していないネバダが逆に不利でした。
水線装甲を狙えばなんとかなったでしょうが、速力で負けているネバダでは無理ですので。
マレー沖は夜戦が加わりました。
これは後程書きます。

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最終更新:2020年04月29日 21:34