993: 加賀 :2020/08/23(日) 18:39:54 HOST:p2761248-ipngn200907osakachuo.osaka.ocn.ne.jp
「やはりMI作戦はやりますか」
「何とかAL作戦を縮小されるだけにはなったがな」
「確か五航戦も参加すると?」
「『翔鶴』の損傷も軽いからな。ただ飛行隊は補充されたばかりだから島への爆撃が任務になる」
「何とかしませんとね……」




 MO作戦は米機動部隊の壊滅は成功するもポートモレスビー攻略自体は失敗した。だが空母を沈めた事でGF司令部は高評価だった。それでもまだ空母は残っているので山本は残った空母を殲滅するためにMI作戦を進めた。

「山本長官はこの作戦が認められないなら長官を辞任すると言っておられます」

 MI作戦に難色を示す軍令部に山本は腹心の黒島参謀を東京に出して真珠湾と同じ手口を使って作戦を認めさせる事に成功した。此処までは良かったが旗艦『大和』で行われた図上演習で実戦部隊の指揮官達は猛烈に反対をした。

「敵空母と島の占領、どちらをやる気なのですか? まさか二つともする気と?」
「二つともは今の現状ではやれません。更に島を占領したとしても補給はどうするのですか? 補給線は此処まで維持出来ません」
「やるなら敵空母撃滅のみに絞るのみです」

 反対したのは二艦隊の近藤中将、二航戦の山口少将、六戦隊の五藤少将等であった。特に作戦を批判された事に黒島は顔を真っ赤にしており身体が震えていた。
 山本は反論を聞きつつ静かに口を開いた。

「諸君らの気持ちも分かる……だが帝都を再び空襲させないために敵空母の撃滅は元よりミッドウェー島を占領する必要がある」
「なら米豪遮断をすべきでは? 確率的にはそちらに空母は出てくる可能性は大いにあります。それにソロモン諸島を航空基地化すれば機動部隊の援護にもなります」

 近藤の言葉に隣にいた南雲も頷いていた。だが山本はそれを良しとしなかった。

「今回の作戦には正規空母六隻をも投入する。六隻もすれば敵も出てくる」
「長官、私達が主張しているのは二兎を追うのはやめろという事です。不用意に島に近づけば輸送船団や護衛艦艇はウェーク島の前例もあります」
「せめて輸送船団は敵機動部隊を殲滅してから島に近づいても遅くはないでしょう」
「それに機動部隊は連戦続きでありドック入りや長期休暇もないので艦・人員共に疲労はたまっています」
「いや、ミッドウェー島は6月上旬に攻略せねばなりません。月の満ち潮により6月上旬はリーフ(珊瑚礁)を越えやすくなっています。なので6月上旬が最適なのです」

 山口少将達の批判に黒島は多少口調を強めにしつつ発言をするがその発言に六戦隊の五藤少将が噛みついた。

「ならば余計に攻略する必要は無いだろう。考えてもみろ、我々海軍は近海海軍として形が成り立っていた。それを今戦争で外洋海軍になろうと背伸びをしようとしている状態だ。無理に攻略する必要は無い。むしろ敵空母撃滅に専念すべきだ」

 だがそれでも山本は二兎を追う事を選択、近藤らは直も反論したが押し切られる形で作戦会議は終了したのである。だが救いも多少はあった。
 当初はAL作戦に『龍驤』『隼鷹』の四航戦第二小隊が参加していたが二隻はダッチハーバーへの空襲後は五艦隊と共に南下して第一機動部隊と合流する事になっていた。だが合流は5日0400であり史実を知る者にとってはかなり際どかった。
 また、機動部隊の被害を減らすために『伊勢』『日向』の四航戦第一小隊が機動部隊より更に前進して瑞雲隊をミッドウェー島爆撃に向かわせる修正もあった。

「今回も五藤さんと行動を共にしますのでよろしくお願いします」
「いやなに、橋本さんがいるし心強いよ」

 橋本の三水戦は連合艦隊直率だったが五藤少将の六戦隊と共に『伊勢』『日向』を護衛するために回されていた。

「兎も角だ、今回もあの悲劇は避けるぞ」
「勿論ですが……それ死亡フラグですよね?」
「それは言わない約束だ」
「そうですな」
(おい、松田の奴。えらく大人しいな?)
(瑞雲改二の設計をしてるらしいです)
(そのうち空技廠の人間に殺されるぞ……)

 斯くしてMI作戦は開始され5月26日には『伊勢』『日向』を主力とした水上艦隊が、5月27日には南雲中将の第一航空艦隊が柱島泊地から出撃した。また、翌日の28日にはミッドウェー島攻略の輸送船団が水上機母艦『千歳』駆逐艦『親潮』『黒潮』と共にサイパン島を出撃した。
 29日には第一艦隊等の主力艦隊も柱島泊地を出撃したのである。

994: 加賀 :2020/08/23(日) 18:40:34 HOST:p2761248-ipngn200907osakachuo.osaka.ocn.ne.jp
 第一航空艦隊
 司令長官 南雲中将
 第一航空戦隊
 『赤城』(零戦×21 九九式艦爆×21 九七式艦攻×21)
 『加賀』(零戦×21 九九式艦爆×21 九七式艦攻×30)
 第二航空戦隊
 『飛龍』(零戦×21 九九式艦爆×21 九七式艦攻×21)
 『蒼龍』(零戦×21 九九式艦爆×21 九七式艦攻×21 十三試作偵察機×2)
 第五航空戦隊
 『翔鶴』(零戦×36 九九式艦爆×18 九七式艦攻×18)
 『瑞鶴』(零戦×36 九九式艦爆×18 九七式艦攻×18)
 第三戦隊第二小隊
 『榛名』『霧島』
 第八戦隊
 『利根』『筑摩』
 第十戦隊
 『長良』
 第四駆逐隊
 『嵐』『野分』『萩風』『舞風』
 第十駆逐隊
 『風雲』『夕雲』『巻雲』『秋雲』
 第十七駆逐隊
 『磯風』『浦風』『浜風』『谷風』



 第七艦隊
 司令官 五藤少将
 第四航空戦隊第一小隊
 『伊勢』(瑞雲×22)
 『日向』(瑞雲×22)
 第六戦隊
 『青葉』『衣笠』『古鷹』『加古』
 第三水雷戦隊
 『川内』
 第十一駆逐隊
 『吹雪』『白雪』『初雪』『叢雲』
 第十九駆逐隊
 『磯波』『浦波』『敷波』『綾波』



 注記 他艦隊は史実通りの編成であるため二個艦隊のみの編成表を記載




「不安事項は大量だなぁ……」

 『瑞鶴』の飛行甲板で寝転がりながら岩本は呟く。珊瑚海海戦で『翔鶴』は中破したが突貫工事で何とか今作戦には間に合わせていた。だが中身の飛行隊は五航戦全体では技量が低下していた。更に飛行隊長級は在籍していたが分隊士級のベテランは同じく損耗していた『加賀』へ補充という形で異動していた。
 AL作戦が無ければ『隼鷹』の飛行隊を振り分ける事も可能だったがAL作戦は実施されるので飛行隊を借りれる事も出来なかった。そのためミッドウェー島へ配備予定である第六航空隊の零戦21機、大破して暇が出来ていた『祥鳳』飛行隊を五航戦に分配し更には着艦が出来る程度のマシなパイロット(日本側基準)をかき集めて間に合わせてたのである。

「ま、やるしかないか……」

 そう呟く岩本だった。そして米軍側も日本が出てくるのを予測していた。

25: 加賀 :2020/08/30(日) 11:10:36 HOST:om126255145150.24.openmobile.ne.jp
改訂部

「何とか五隻を投入する事は出来たが……」

 スプルーアンス少将の機動部隊を見送るニミッツ大将はそう呟く。米軍も珊瑚海海戦で『レキシントン』『ヨークタウン』を喪失していたがキングは大西洋から『ワスプ』『レンジャー』を回航させてミッドウェー攻略を阻止しようとしていた。『レンジャー』も引き抜く事で大西洋のUボート狩りに穴が開くと懸念されたが就役間際の護衛空母を未成ながら投入する事で穴を防ぐ事にしたのだ。
 また伊6の雷撃で大破していた『サラトガ』も修理中だったが動かせるなら良しとして未修理のまま参加する事になったのだ。
 この時点で米軍は『エンタープライズ』『ホーネット』『サラトガ』『ワスプ』『レンジャー』の五隻を主力とする機動部隊を編成、その機動部隊を皮膚病で入院したハルゼーの代わりにスプルーアンスに預けたのである。
 また護衛艦艇には戦艦『ノースカロライナ』『ワシントン』『サウスダコタ』『インディアナ』の四隻も投入していた。本来であれば『サウスダコタ』『インディアナ』の二隻はまだ艤装工事中であったがキングの命令で戦線に参戦する事となった。

「パイロットの腕も不安しかない。むしろ飛行甲板を叩くだけで満足だ」

 出撃前、ニミッツは艦艇喪失回避のためハルゼーが行っていたヒットエンドラン戦法を行うようスプルーアンスに厳命した。スプルーアンスもそれに従う事にしていた。
 だが、その行動は海戦にも大きく影響する事にはまだ気付いていなかったのである。

995: 加賀 :2020/08/23(日) 18:52:08 HOST:p2761248-ipngn200907osakachuo.osaka.ocn.ne.jp
  • 一航艦勢揃い
  • 米軍も空母五隻投入


お久しぶりです。何とか仕上げられたかなと思います。さて次はいよいよ……

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最終更新:2020年09月01日 12:58