116: 加賀 :2020/10/03(土) 22:56:41 HOST:p1931009-ipngn200701osakachuo.osaka.ocn.ne.jp



「何!? 敵空母が至近に居るだと!!」
「はい、米機動部隊に向かった瑞雲隊からの無電です。なお、瑞雲隊は急遽この敵空母攻撃に向かいました」
「……このまま前進だ。敵機動部隊の前にまずこの敵空母を叩く!!」
「……戦艦が四隻いますからね……」
「言うな。確実性を求めるんだ」

 五藤少将は松田艦長とそう話す。さて、瑞雲隊15機は上空に敵戦闘機がいない事を確認すると一斉に急降下を開始した。だが狙いは敵空母を護衛している巡洋艦隊だった。
 瑞雲隊が巡洋艦隊を狙ったのにも理由はあった。というのも瑞雲隊は腹に250キロ爆弾を抱えていたが急降下爆撃だけで『サラトガ』を仕留めるにはやはり無理があった。
 インド洋では第一航空艦隊の九九式艦爆隊が巡洋艦『ドーセットシャー』『コーンウォール』を空母『ハーミーズ』を急降下爆撃で撃沈しているがそれは護衛艦艇がいない事や旧式艦艇だったからであり『サラトガ』も旧式艦艇では在るもののその防御力は計り知れなかった。
 そのため護衛の巡洋艦隊を攻撃する方がまだ良かったのだ。だがその巡洋艦隊には防空巡洋艦として名高いでもある『アトランタ』が存在しており『アトランタ』の対空砲火で瑞雲6機が撃墜されてしまう。が、6機目の瑞雲は被弾炎上しながらも『アトランタ』へ体当たりを敢行、爆弾を抱えたままの体当たりであり『アトランタ』は瞬く間に誘爆して大破炎上したのである。

「sit!! ジャップめ……」

 護衛艦隊の司令官である第16任務部隊第2群司令官のトーマス・C・キンケイド少将は舌打ちをしながらも『サラトガ』を見る。

「『サラトガ』の舵はまだ直らないのか!?」

 『サラトガ』は第一次攻撃隊の攻撃時に雨宮機を含む2機の艦攻による雷撃を二本受けていた。だがその命中箇所が悪かった。というのも二本とも『サラトガ』の舵と右舷機関室に命中して舵を破壊、右舷機関室は全滅という戦果を叩き出していたのだ。しかも舵故障は更に酷かった。『サラトガ』が航行する先は日本軍艦隊(第七艦隊)の方向だったから余計である。
 スプルーアンス少将は修理を急がせつつも護衛艦艇を付けて機動部隊は退避したのであった。そして退避する前に放った第二次攻撃隊は第一航空艦隊上空にいた。

「敵機来襲ゥ!!」
「出るな、外に出るな!! 伏せろォ!!」

 士官室で第三次攻撃隊の準備をしていた艦攻隊の北見中尉は他のパイロット達にそう叫びつつも自身も床に伏せて頭に手を置いた。上空では零戦隊25機が米第二次攻撃隊(SBD32機のみ)を迎撃していた。

117: 加賀 :2020/10/03(土) 22:58:27 HOST:p1931009-ipngn200701osakachuo.osaka.ocn.ne.jp
「クソッタレ!! 『飛龍』はやらせんぞ!!」

 『飛龍』戦闘機隊の松浦中尉はそう叫びつつも機銃弾をSBDに叩き込んで撃墜する。

「左へ転舵!!」
『取舵イッパァーイ!!』

 『飛龍』は回避運動を展開していた。その回避は見事だった。だが雲に紛れて接近していた2機のSBDには気付かなかった。そして『加賀』上空にも3機のSBDが存在していた。その存在を確認した見張り員が叫んだ。

「敵ィィィィィ急降下ァァァァァァァァァ!! 直上ォォォォォォォォ!!」

 そして二空母は炎上した。一瞬の隙を突かれ、『飛龍』は二発、『加賀』は三発が命中した。二空母は炎上するも『赤城』『蒼龍』のように誘爆はしなかった。というのも二次の攻撃で攻撃隊の被害に山口は第三次攻撃隊の準備を指令しつつも翌日に行う事にして被弾機の修理を優先させていたのだ。

(危なかった……もう少しで史実となるところだったな……)

 山口は艦橋で思っていた程の被害が無い事に安堵の息を吐いていた。そして主力とも言える二空母の被弾に山口は『龍驤』『隼鷹』だけでは攻撃力が不足と判断、事後の指示を山本長官に委ねたのであった。
 そして第七艦隊は……艦隊決戦を敢行していた。

「敵艦隊発見!!」
「間に合ったか!!」

 見張り員の報告に五藤少将はニヤリと笑う。瑞雲隊の報告通り、敵艦隊は此方に直進していた。その理由は五藤少将も知らないが恐らくは『サラトガ』が故障したのだろうと判断していたが五藤にはそんな事はどうでも良かった。

「全艦砲雷撃戦用意!! 敵空母に纏わり付く護衛艦艇を叩け!!」

 動いたのは『伊勢』『日向』だった。二隻は距離32000で砲撃を開始、瑞雲隊の観測の下での射撃でありその砲撃は正確だった。三斉射目で『日向』が放った35.6サンチ砲弾が『ペンサコラ』に直撃、キンケイド少将は重傷を負った。『日向』『伊勢』は『ペンサコラ』に砲撃を集中して『ペンサコラ』は炎上しつつ砲撃開始から僅か17分で波間に没するのである。
 更に六戦隊も橋本少将の三水戦と共に突撃、駆逐艦『フェルプス』『モーリー』を撃沈するのであるが此処で五藤少将は何か考えたのか攻撃中止を発令した。

「司令官、何を……?」
「敵艦隊に発光信号を送れ。勝敗は決した、空母を置いて立ち去れとな」
「まさか司令官!?」
「あぁ。捕獲して喪失した分の補填にしてもらう」

 松田の言葉に五藤少将はニヤリと笑うのである。





「本音は?」
「『サラトガ』ちゃんがストライクだった。反省はしているが後悔はしてない」(キリッ

 そんなやり取りがあったかどうかはさておき、キンケイド少将は救出された駆逐艦『ベンハム』の医務室で第七艦隊からの発光信号を聞いた。

「(やむを得んか……)分かった。直ちに総員退艦させるように言おう。無駄な命を減らしたくはない」

 斯くして、『サラトガ』は総員退艦が発令され『サラトガ』の乗員は脱出して残った駆逐艦隊に救出されるのである。第七艦隊は救出されるまでは砲撃せず砲身を駆逐艦隊に向けていたが全員が救出されると『サラトガ』を包囲して曳航準備に移行するのであった。なお、『アトランタ』も放棄されていたが曳航は可能と判断され『アトランタ』も曳航する事が決まったのである。

「……このままで済むと思うなよジャップ……」

 二隻を引き連れて水平線上に消えていく第七艦隊を見つつキンケイド少将は呪怨のように呟くのである。
 2115、戦闘の経過報告を聞き終えた山本長官は全艦隊に対し夜戦の中止と主力艦隊への合流を命じた。此れに対し2211、南雲機動部隊は反転した。そして2355、山本長官は連合艦隊電令161号でAF攻略中止を発令した。
 ミッドウェー作戦の中止が決定した瞬間でもあったのである。

118: 加賀 :2020/10/03(土) 23:03:05 HOST:p1931009-ipngn200701osakachuo.osaka.ocn.ne.jp
  • 二空母、やっぱり被弾
  • 艦隊決戦!艦隊決戦ですよP!(そうじゃない
  • 『サラトガ』『アトランタ』捕獲(くっ殺!!



てなわけでこれでミッドウェー海戦は漸く終わりを迎えます。
え?正規空母?そらぁ『瑞鶴』一隻しかいませんよ(白目

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最終更新:2020年10月26日 22:56