146: 加賀 :2020/10/04(日) 14:46:54 HOST:p1931009-ipngn200701osakachuo.osaka.ocn.ne.jp



「ミッドウェーは前回とは異なりましたね」
「二空母の喪失はやはり避けられなかったがな」
「ですが『サラトガ』と『アトランタ』は此方に渡りました」
「偶然の産物だがな。ところで嶋田さんは目覚めたのかね?」
「えぇ。南雲さんや古賀さん、三川さん達も目覚めました」
「では我々ももう少し積極的に行こうか」




 6月20日、全艦隊は内地へ帰還した。

(よくぞ……戻って来てくれた……)

 橋本は佐世保のドック入りをする『加賀』を見つつ静かに涙を流す。なお、機動部隊の被害状況は一段と酷かった。
 『赤城』『蒼龍』は曳航すら出来ない程の炎上でありやむを得ず『赤城』は自沈処理、『蒼龍』は史実通りに艦尾から沈んだのである。
 『飛龍』は二発が命中、中破の判定となる。三発が命中した『加賀』は佐世保にて修理と改装を受ける事になる。同じく三発命中した『翔鶴』も横須賀にて修理と改装を受ける事になっている。
 そして最後は捕獲した『サラトガ』と『アトランタ』である。二隻は共に呉にて修理と日本艦への改装が予定されている。特に海軍が喉から手が出る程欲しかったのが『アトランタ』に搭載されていた射撃統制システムであるMk.37と対空捜索用レーダーであるSK-2である。

「こいつは……凄すぎる……」
「誤差最大が0.7度って……」
「これは中央でも揉めるぞ」

 後に7月上旬に研究者達が立ち会いの元で行われた射撃試験では海軍関係者を卒倒させる勢いであった。なお、この射撃指揮装置は丸々パクる事が即座に決定され大急ぎで量産態勢に移行される。
 それはさておき、内地に戻ってきた連合艦隊だがその責任追求も酷かった。

「本職は宇垣参謀長に事前に連絡しましたな? 敵機動部隊の兆候があれば素早く無電を発してくれと。それを大和が危険だからと却下するとは黒島参謀、如何なる了見だ!!」

 『大和』の作戦室で山口少将は吠える。南雲機動部隊の面々は黒島参謀を睨んでいた。その黒島も顔を真っ赤にして反論をする。

「機動部隊であれば対処出来ると考えた次第だ。それに『大和』は最新鋭戦艦だ、それを無闇に損傷させるわけにはイカンのだ!!」
「最新鋭なら『翔鶴』型も最新鋭だろう!! 損傷させるわけにはイカンのなら空母が優先だろうが!! 戦艦は数発の爆弾・魚雷を食らっても問題は無かろうが!! そして今回、空母でそうなったのだぞ!!」

 山口の発言は尤もだった。だがそれを制したのは山本であった。

「山口、放たなくても良いと最終的に決断したのは私だ。今回の作戦、全ての責任は私にある」

 山本は内地に帰還後、軍令部に辞表を提出していた。全ては作戦を認めた自分にあると処置を待っていたのだが山本の代わりとなる人物(古賀ではまだ荷が重いだろうと判断されていた)がいなかったので未だ結論は出ていなかったのだ。

「今回の作戦、結果は非常に残念であるが戦訓も得られる事も出来た。我々はその戦訓を次の戦いに活かさなくてはならない」

 山本はそう言って南雲に視線を向けた。

「南雲、機動部隊の指揮は引き続き任せる」
「はっ。ですがそれには私にも条件があります」
「ん。聞こう」
「機動部隊司令部の刷新です」

147: 加賀 :2020/10/04(日) 14:47:46 HOST:p1931009-ipngn200701osakachuo.osaka.ocn.ne.jp
 南雲の言葉に隣にいた草鹿らは目を見開いた。つまり自分達はクビである。

「分かった。それについては考えておこう」

 二人程、口から魂が抜けているが他の者は気にしようとはしなかった。(草鹿と源田)
 そして急務なのが搭乗員の確保であった。今回のミッドウェー海戦による航空戦で機動部隊は零戦17機 九九式艦爆68機 九七式艦攻82機を喪失していた。(三空母で破壊されたのを除く)
 航空戦でこれだけ喪失しているという事はパイロットも大量に戦死していたという事である。パイロットの育成は急務なのは言うまでもない。
 6月24日、日本海軍はFS作戦の中止を発せず米豪分断を機動部隊から基地航空隊で行う方針を決定。ソロモン諸島のラバウルから以南から基地航空隊を進出させる事にした。
 6月29日、日本海軍は新たに三川中将を司令長官とした第八艦隊を創設(外南洋部隊)、ラバウルに停泊していた『鳥海』に長官旗が掲げられたのである。

「早急に基地航空の建設だな」
「ではガダルカナルに?」
「いや、まずはブーゲンヴィル島からだ」

 三川は参謀長の大西と作戦室で話をしていた。

「ブーゲンヴィル島のブインにまず機械化工作隊を派遣して滑走路を建設する」
「あぁ、あの部隊ですな」

 ウェーク島で捕獲したブルドーザーを元に陸海が共同で改造したハ号の前面に鉄板を敷いた工作機を数両、ラバウルに送り込んでいたがラバウルの拡張に大いに活躍しており現時点では五個飛行場が完成していたりする。

「直ぐに送りましょう」
(……もしかしたらガダルカナル攻防は遅くなるかもな)

 史実では飛行場が完成寸前に上陸されて奪われていた。ならばガダルカナル島の飛行場建設を遅らせるしかなかった。だが此処で大西はやらかしてしまう。

(7両もあるし3両くらいガダルカナルに送っても問題は無いだろう)

 ミッドウェー海戦の報は大西も承知しているし大西からにしてみれば軍令部のFS作戦を早期に行ってしまいたい気持ちもあった。そのため改造ブルドーザー3両をガダルカナルの岡村少佐の第13設営隊に送ってしまうのであった。
 7月14日、南雲中将の第一航空艦隊は解隊され新たに第三艦隊が新編された。司令長官は引き続き南雲中将が陣頭指揮を取り参謀長は草鹿少将から市丸少将へと交代、源田参謀も内藤中佐に交代したのである。


 第三艦隊
 第一航空戦隊
 『翔鶴』(修理中)『瑞鶴』『瑞鳳』
 第二航空戦隊
 『隼鷹』『飛鷹』『龍驤』
 他、史実通り

 喜ばしいのは『飛鷹』が史実より早くに就役して戦列化した事である。だが、彼女らにとって大切なパイロットはまだ揃ってはいなかった。

「当面は育成が中心だろうな」
「やむを得ません」

 戦没した『赤城』『蒼龍』の飛行隊は優先的に各空母に乗艦していた。また『加賀』『飛龍』『翔鶴』の飛行隊パイロット達も空母に半数は乗艦しつつも残り半数は練習航空隊に組み込まれていた。

(橋本や近藤さん達がパイロットの育成をしていなければ本当に不味いところだったな……)

 今回のパイロット補充で戦前に予備していた(雀の涙程度)母艦パイロットは完全に底を突いたのである。

「8月には『祥鳳』も戻って来ますし今あるのでやりませんとな」

 市丸の言葉に南雲は無言で頷くのである。だが8月7日、ソロモン諸島のツラギ島から悲鳴のような電文が届いたのである。

『敵機動部隊来襲。敵兵力大、最後ノ一兵マデ守ル。武運長久ヲ祈ル』

148: 加賀 :2020/10/04(日) 15:01:19 HOST:p1931009-ipngn200701osakachuo.osaka.ocn.ne.jp
  • 日本軍、各種兵器類を捕獲
  • 海軍関係者、白目
  • 三艦隊創設
  • 旗艦は『瑞鶴』(七面鳥ですって!?)
  • 大西、善意のつもりがやっちまった

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最終更新:2020年10月26日 23:00