664: 加賀 :2020/11/08(日) 16:51:09 HOST:om126208205013.22.openmobile.ne.jp
「ブイン基地から電文です。山本長官の遺体を発見したそうです」
「……今の段階で彼も死に場所を得たのは良かったのかもしれないな……」
「山本……いや田中……」
「大丈夫だ嶋田。後で水饅頭を供えないとな……」
「古賀長官の新補は予定通りとの事だ」
「近藤さんとかで大分争ったらしいな」
「近藤さんもなまじ『ワシントン』とか沈めてますからね……」
「それより橋本少将からの作戦案、面白いな」
「フッ博打打ちは気に入るか」







 4月7日、ガダルカナル島からの撤収作戦を成功させた山本長官は戦線の縮小のため『い号作戦』を発令する。大本営はソロモン及びニューギニア方面からの撤退を決意しその過程で山本は陸海軍が円滑に撤退を実施出来るためにと集められるだけの航空隊を集めてガダルカナル島、ニューギニア島南東部のポートモレスビー、オロ湾、ミルン湾へ大規模攻撃を仕掛けるのであった。
 当初は再建途中の第三艦隊母艦飛行隊も投入予定だったが第三艦隊司令長官に就任した小沢中将は母艦飛行隊の派遣を反対した。

「長官、母艦飛行隊の練度は芳しくありません。むしろヒヨコ同然です。そのヒヨコパイロットをみすみす靖国へ行かせる気ですか?」

 第三艦隊参謀長に就任した山口多聞中将も小沢中将の横で頷いている。

「しかし小沢長官、ソロモン及びニューギニアからの撤退を成功させるには……」
「それは理解出来る。だが母艦飛行隊が再び壊滅したら今度こそ貴様の首は飛ぶぞ」

 黒島の指摘に山口はジロリと睨み付け黒島を黙らせる。

「分かった。母艦飛行隊の投入は中止しよう。三艦隊は引き続き日本海で再建を頼む」
「長官!?」
「構わないよ黒島」

 慌てる黒島に山本はそう諭す。山本は内地と協議して雷電を装備した二個航空隊をラバウルに送ってもらう事で何とか数を揃えたのであった。
 ラバウル等の航空隊は求められた場所へ出撃し攻撃を行うも戦果は芳しくなかった。結果として海軍は戦闘機19機、九九式艦爆16機、陸攻13機を喪失してしまう。が、GF司令部は報告の戦果から米軍に打撃を与えたと判断する。
 そして4月18日、山本長官らのGF司令部は二機の一式陸攻に分乗して護衛の零戦6機と共に前線視察のためブーゲンヴィル島上空を飛行していた。

「敵機だ!?」

 護衛零戦隊指揮官森崎武予備中尉は忍び寄ってきた16機のP-38を発見、増槽を投棄し5機の零戦と共にP-38に向かい陸攻を逃がそうと懸命な空戦をするも空戦の輪を潜り抜けたP-38が逃げようとした一式陸攻を銃撃した。

「あぁッ!?」

 勝負は一瞬だった。長官機の陸攻は左エンジンに機銃弾を受けて炎上、暫くは飛行していたがやがてブーゲンヴィル島のジャングルに墜落したのである。

「長官ー!?」

665: 加賀 :2020/11/08(日) 16:52:39 HOST:om126208205013.22.openmobile.ne.jp
その一方で草鹿参謀長が乗る二番機も銃撃され海上に墜落するのである。その後、捜索隊が長官機を発見するも山本長官の死亡が確認されたのであった。
 4月21日、新しくGF司令長官には古賀峯一大将が就任した。古賀長官は訓示にて示した。

「最早戦争は総力戦を越えた戦いになっている。全員、死力を尽くせ」

 古賀長官はマリアナ沖決戦のために動き出す。手始めはソロモン諸島からの完全撤退だった。

「そのために五戦隊は死線を潜れと」
「その通りだ。そのために試作兵器類を五戦隊に優先して配備しているのだよ。不服かね?」
「いえ、空母以外で40ミリを優先的に配備させてもらいましたからね」

 ラバウルの外南洋部隊司令部で古賀長官と橋本はそう話していた。

「この先、ソロモンはガ島攻防戦より厳しい戦いとなる。やってくれるな?」
「無論です。史実より二回目よりも多くの人を救うために……後、艦娘と仲良くなるためにも」
「……最後が無ければ松田君と同じ同類にならないんだがなぁ……」
「解せぬ」

 5月1日、トラック諸島に漸く改装と母艦飛行隊の錬成が完了した第一航空戦隊(『翔鶴』)と第二航空戦隊(『加賀』『飛龍』)が護衛艦艇と共に進出し、約九ヶ月近く奮闘してきた『瑞鶴』は内地への帰還の途につくことが出来たのである。内地へ帰還する『瑞鶴』は正しく満身創痍の姿であり三空母の乗組員達は全員集合して『瑞鶴』に対して最高位の敬礼を送るのであった。
 5月12日、激闘が続いていたアリューシャン列島のアッツ島では日本軍が玉砕した。
 6月8日、柱島泊地において戦艦『陸奥』の艦内において古参水兵と新人水兵との間でのイジメが発覚、当該の新人水兵は自殺しようと第三砲塔に閉じ籠ろうとしたが専属料理人の奮闘により新人水兵は投降、爆沈は免れたのである。そして7月6日、クラ湾夜戦が発生。史実通りの海戦となり秋山少将以下三水戦司令部は全滅してしまうのである。
 同12日、コロンバンガラ島沖海戦が発生。史実では輸送任務だったが今回はコロンバンガラ島からの撤退支援のために待機していた。
 更に橋本少将の五戦隊(7月からは『摩耶』も編入されている)も護衛についており戦力バランスは日本側にあった。

「しまった!?」

 米指揮官のエインズワース少将が気付いた時は既に遅かった。その直後、レーダー員から接近する複数の航空機が報告された。

「対空戦闘用意!!」

 エインズワースの命令は全て後手後手だった。艦艇の砲身が上空に向けられた直後、吊光弾が投下された。眩しい光がエインズワースの艦隊をさらけ出しその様子を双眼鏡で見ていた橋本はニヤリと笑う。

「砲撃始めェ!!」

 砲撃は『ホノルル』に集中した。『ホノルル』は瞬く間に炎上、エインズワース少将らは何とか脱出する事に成功するも『ホノルル』は戦闘開始11分で撃沈された。次に狙われたのは『リアンダー』であり此処で『妙高』『摩耶』が探照灯を照射、『リアンダー』もあっという間に猛火に包まれ最後は一回目に突撃してきた二水戦の酸素魚雷三発が命中して爆沈した。
 奮闘したのは『セントルイス』であろう。『セントルイス』は味方駆逐艦を逃すために突撃を敢行、『摩耶』の前部三番砲塔を吹き飛ばす戦果を上げるも『妙高』『羽黒』の砲撃で滅多撃ちにされ炎上、再度突撃してきた二水戦の雷撃により撃沈するのであった。
 8月17日、外南洋部隊はコロンバンガラ島からの撤退を完了させベララベラ島の守備隊の撤退支援中にメリル少将以下の艦隊が突撃、『鳥海』が探照灯を照射して被害担当艦になり大破。同乗していた栗田中将も重傷を負ってしまう。(負傷回復後に軍令部へ)追い払う事には成功し撤退も成功するが指揮官不在となった外南洋部隊。
 そして古賀は後任に目ぼしい人員を見つけていた。

「自分が……ですか?」
「君にこそ適任と思っている。橋本君の線もあったが海軍省側は難色を示していてね……たまたま海軍兵学校にいた君に目を付けた……というわけだよ」
「……分かりました。ソロモンは自分の因縁の場所です。必ず期待に答えてみせます」

 古賀長官の言葉に五藤中将はそう答えた。9月1日付で五藤中将は外南洋部隊司令長官に就任したのである。

666: 加賀 :2020/11/08(日) 16:55:31 HOST:om126208205013.22.openmobile.ne.jp
  • 山本五十六、後世界へ(そうじゃない
  • 『瑞鶴』、満身創痍ながらの帰還
  • 『華の二水戦』ならぬ『華の五戦隊』(オイバカヤメロ
  • 五藤中将、外南洋部隊司令長官就任へ


『瑞鶴』自身はまだ戦い足りないかもしれないが一先ずの内地帰還。
さて次は……

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最終更新:2020年11月10日 10:43