69: リラックス :2020/11/29(日) 17:15:30 HOST:119-228-232-201f1.kyt1.eonet.ne.jp
乙です。私も思いつきのネタを

ネタ:超時空大戦~逆襲の艦隊~

(私も終わりか……)

朦朧とする意識の中、戦艦パシフィカは自分が消滅しつつあることを悟った。

中国海軍の増強を受けて俄かに注目されつつあった環太平洋連合艦隊構想、それに日米の対中戦略の一環を受けて彼女は生を受けた。

しかし、元々が俄かに盛り上がっただけの構想で複数の国家をまとめられるほど、東南アジア各国の間に横たわる因縁は柔ではない。

更にこの動きを警戒した中国や欧州の妨害もあり、環太平洋連合艦隊構想はグダグダのまま有耶無耶となった。

その計画の中で建造されたパシフィカ級戦艦も、誰がどのくらい負担して建造し運用するかといった調整が上手くいかず、呆れた日米は二番艦の建造を中止、建造の進んでいた一番艦パシフィカこそ引き渡されたが、熱し易く冷め易いのは別に日本の専売特許ではなかったらしい。

皮肉にも彼らは戦艦の持つ魔力に幻惑され、「パシフィカ級さえあれば国防は万全」 で思考を止めてしまったのである。

ASEANが何ヵ国かで購入したことで何処がどう運用するかも曖昧なままに。

結果的に戦艦の幻想に胡坐をかき、「ユニット」としての海軍戦力の強化をやめてしまったため、 艦隊の実戦力 において、中国海軍に大きく後塵を拝することになっていた。

その結果がこれだった。

“領土回復計画”の野望を抱く中国による侵略に、ASEAN加盟国はロクな連携も取れず、個々に対処せざるを得なくなった。

米国の度重なる警告と危機喚起を、中国よりも隣国とのトラブルの方が余程問題だと嘲笑し、信頼などと言う煮ても焼いても食えないような曖昧なものより小遣い稼ぎの方が重要と日本の失望を買い続けたことから両国は既に対中戦略において東南アジアを協力者としてはとっくに見限っていたことから早期の援軍も望めず、

実際に戦闘するなど考慮の外、この戦艦は自国の戦艦であると艦内で縄張り争いばかりに熱心だった水兵達は右往左往するばかりで、ロクに主砲を放つことすら出来ないまま、彼女は沈みつつあった。

「私、何の為に生まれたんだろ……」

自分を生み出した日米(父)は自分を送り出す時、「お前は中国の脅威に怯える東南アジア諸国を安心させる為に行くんだ」と言った。

しかし、実際の思惑を私は知ってる……

東南アジア各国の民心を安定させる為にアメリカのパパは偉大なるエイブラハム・リンカーン級を巡回させていた……

でも、対中戦略なら東南アジア方面にエイブラハム・リンカーン級を巡回させるくらいなら、沖縄や台湾にでも置いておいた方が遥かに効果がある。

民心の安定の為なんて曖昧な理由だけにエイブラハム・リンカーン級を拘束されるのはいくらなんでも割に合わない、だから日本のお父さんとアメリカのパパは私を造ったんだ。

『こんな半端な戦艦で何と戦うんだ…』テスト航海で私に乗り込んだ国防海軍の佐官から言われた言葉だ。

その通り、私の性能は定遠級とまともにやって勝てるものじゃない。

日本のお父さんとアメリカのパパは私をその為に造ってない。

あくまでも東南アジアに戦艦がいる、その事実があれば良いという理由で私を設計したんだ。……A・D・M級には勝てるという最低限の性能を持たせて。

70: リラックス :2020/11/29(日) 17:17:56 HOST:119-228-232-201f1.kyt1.eonet.ne.jp
「お前は中国の脅威に怯える東南アジア諸国を安心させる為に行くんだ」という言葉は何一つ間違っていない、私が戦うのは東南アジア各国の人々の心に巣食う不安という魔物。

少々効果があり過ぎたかもしれないけど……

(それでも、いざ、こうして戦いになったなら、戦艦らしく戦いたいって思うのは悪いことだったのかしら?)

祖国……どの国が祖国なのかは彼女自身も答えられないが……が、真面目に中国を仮想敵国にして国防計画の見直しを行っていればもっと色々と手はあったはずだ。自分の出番も相応にあっただろう。

少なくとも、中国そっちのけで戦艦保有国というステータスを巡って内輪揉めしていなければ、日米も東南アジア各国を丸ごと切り捨てて日米は日米で勝手に対中戦略を戦うからお前らはお前らで好きにやれ、となった現状よりは遥かにマシだったはず、それにつけても……

「あの構想が実現してさえいれば……」

唇を噛み締める。

悲しみと虚しさと悔しさがない混ぜになって両目から溢れそうになるのを堪える。

(私にもっと力があれば……)

身体が末端から消えていくような感覚に囚われた。

(迎えが来たのか……)

彼女はそれに抗うことなく意識を手放した。


戦艦パシフィカ、現代型戦艦として初の喪失例となり沈没。


だが、彼女を憐れんだのか、世界は一つの奇跡を起こす。


次に私が目覚めたのは、環太平洋連合艦隊構想が潰える五年前の時間軸だった。

だけど、全てが前の世界のままじゃない。

私が人、それも男性として存在していることもそうだし、日本が超大陸化していること、東南アジアとの関係も大きく違う。

まあ、それは良い。むしろ好都合。

理由や原因は何かだなんて、どうでもいい、これが今際の際に見た幻影だというなら、それでも良い。

あんな無念と屈辱は一度で充分だ。

だからこれは… 攻撃でもなく 宣戦布告でもなく

もう一度機会を得た私による…

"逆襲" だ

「私は、二度と負けない…!」

彼となった彼女は、5年後、数々の妨害を乗り越え環太平洋連合艦隊構想を実現させた第一人者として歴史に名前を刻むことになる。

71: リラックス :2020/11/29(日) 17:19:00 HOST:119-228-232-201f1.kyt1.eonet.ne.jp
以上、何処かの世界線のパシフィカが人として別の世界線に転生するネタ。一発ネタなので続かない

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最終更新:2020年11月30日 15:07