914: 加賀 :2020/12/25(金) 11:27:47 HOST:softbank126243060102.bbtec.net


「とりあえずはアメリカとの戦争は終わりましたね」
「問題はまだある。ソ連が満州の国境を筆頭に怪しい動きをしている」
「……やはり来ますか」
「来るだろうな」

 6月1日に施行されたワシントン講和条約は日米の戦いに終わりを告げた。しかし、未だイギリスやソ連との停戦及び講和は不透明な状態だった。

「イギリスを動かせ。日本と講和せねば支払いの回収をすると脅せ」
「何が何でも……ですかな?」
「日本の底地を理解していない馬鹿どもには十分な勉強になっただろうさ」

 ウォレスは連合国の長としてイギリスも動かして(脅迫)日本と連合国との講和を乗り出していた。アメリカの脅迫に近い要請に最初はチャーチルも不満な表情をしていたがレンドリースの件を言われて日本との講和に承諾する。
 だがソ連のスターリンは回答しなかった。当初、ウォレスも「ドイツの統治の件で忙しいのかもしれない」とドイツでのソ連占領統治の動向を気にしつつ日本の武装解除のため軍(パットン軍団)を日本に進駐させたりして回答を待っていたがソ連の回答は8月8日、ソ連満州侵攻によって行われたのである。

「ソ連軍が国境を越えました!!」
「フン、予想通りだな。住民の避難は?」
「国境付近の邦人は全て避難して新京にいますが順次旅順に避難、旅順にて手配した輸送船で日本へ向かう予定です」
「うむ。住民の虐殺を絶対にさせぬよう関東軍は邦人を防衛する」

 新京の関東軍司令部で山田大将はそう発する。この時、関東軍は大陸からの戦線後退によりある程度の戦力を回復していた。14個師団・5個独混旅団・4個独立戦車旅団が今の関東軍の手持ちであった。満州にも米陸軍は上陸していたが山田大将は会見にて「万が一、ソ連が満州侵攻をした場合は邦人保護のため自存自衛を開始する」と通告しており日本占領司令官のパットン元帥も最初は動向を伺っていたがソ連侵攻の報に「やはりソ連は信用ならない」と頷く程だった。
 そもそも、関東軍は日本がワシントン講和条約に受諾した時点でソ連が満州に侵攻する事を想定、国境付近の開拓民の邦人は強制的に避難させ守備隊も順次新京方面に退避させていた。その作業がほぼ完了したところでのソ連侵攻である。

「海軍は沖縄を守るため米軍を相手に消滅した……ならば我が関東軍は満州の邦人を守るためソ連軍を相手に消滅するぞ!!」

 山田大将の叫びに秦総参謀長達は力強く頷いたのである。そして満州に侵攻したソ連はソ連でも頭を抱えていた。

「クソ、あのチハのせいで思ったより戦車の被害が多いぞ……」

 陸軍の戦車はほぼチハなので突撃してくるソ連戦車軍団をその強大な砲身で叩きのめしてはいたがやはりそもそもソ連の数が多すぎるのである。だがそれでも日本の戦車兵達はソ連戦車の喉元を食い破るのである。
 そして樺太でも日本守備隊はソ連の侵攻を食い止めていた。樺太には第88師団の他にも本土決戦に備えていた第七師団と第115師団、更に二個独立混成戦車旅団が配備されていた。ソ連軍も戦車部隊の情報を仕入れていたので三個戦車大隊を伴わせて参戦前から北樺太に移送しており今回の参戦である。
 また、第七師団は北海道を守備する最精鋭師団だったが杉山の命に南樺太に移動していた。しかもこの時、杉山は樺太に配備された第334独立混成戦車旅団の視察に訪れていたのだ。

「ソ連が侵攻? 宜しい、ならば即座に出撃だ!!」

 旅団司令官島田大佐らの説得を振り切り杉山は新たに制式採用されたばかりの五式中戦車『チリ』に乗り込んで出撃したのである。(16両が参戦)
 この『チト』は砲塔が無いチハとは異なりほぼ史実四式チトであった。それでもやはりネックだったのが30トン近い重量であった。内地ではほぼ扱えないのではあるがソ連侵攻に備えて杉山か樺太に持って来させたのだ。そのため発動機は史実『チリ』が搭載した液冷発動機を搭載していた。(それでも27トン程度)
 他にも先の沖縄戦で活躍した四式中戦車や五式砲戦車等も参戦していた。
 また、試作に『チト』の砲塔を搭載した史実三式改(約22トン)も旅団に配備されており侵攻してきたソ連軍を押し返していた。

「良いぞ、そのまま押し返せ!!」

 チト隊は第178・第678独立戦車大隊を壊滅させ第214戦車旅団と死闘を繰り広げていた。そして側面から試作チヌ改隊が側面攻撃を展開した。

「戦車前進!! 奴等を叩きのめせ!!」

 思わず身を乗り出した杉山、その時に一発の銃弾が杉山の腹部を貫通した。

「グッ!?」
「閣下!?」

915: 加賀 :2020/12/25(金) 11:29:49 HOST:softbank126243060102.bbtec.net
倒れる杉山に装填手が手当てをする。

「人には相応しき生と死を……か」
「閣下?」

 手当てをした装填手に礼を言うと杉山は再びキューポラから身を出す。

「さて、誰が名誉を背負うのだ? 杉山元が生涯で最後に殺した相手という名誉をな……」

 その直後、物陰に潜んでいたJS-2が側面から攻撃し砲塔に命中。杉山は車外に飛ばされた。

「閣下!?」

 歩兵がロタ砲でJS-2の後方から攻撃して破壊、複数の歩兵が杉山に駆け寄るが杉山は瀕死の状態だった。

「しっかりしてください!!」
「賀島……」

 杉山を起こしたのは破壊された戦車長である賀島少佐だった。

「賀島……これからも……日本は戦争に巻き込まれるだろう……だが……」
「閣下、これ以上は……」
「戦車戦だけは……戦車戦だけは負けるな。負けたのはノモンハンだけで良い、良いな賀島ォ!!」
「……はいッ!!」
「後は任せた……ぞ……」
「閣下!?」

 杉山は空に向かって一言、ニヤリと笑いながら息絶えたのであった。一方、ソ連侵攻の報に海軍も残存艦艇を伴って日本海へ出撃していた。

「ウラジオストクを爆撃するぞ」

 重傷の山口から新たに第三艦隊司令長官に就任した吉良中将は旗艦『信濃』と共に修理が完了した空母『銀鶴』『笠置』『阿蘇』『生駒』『龍鳳』を率いて出撃、三波に渡りウラジオストクを爆撃して港に停泊していたウラジオストク艦隊を全滅させるのである。
 そして橋本は第二艦隊司令長官に就任、旗艦『伊勢』と共に樺太救援に向かっていたのである。

「何!? 杉山元帥が戦死したと……」
「はっ、立派な最期だったと……」

 参謀長の松田少将も肩を落としながら報告をする。

(杉山さん……貴方、まさか……)

 杉山の行動に気付いた橋本は天を仰ぐ。

「……何としても邦人元より樺太と千島列島を救う。千島列島の状況は?」
「千島列島の最北端、占守島では激戦が続いているようです」

 千島列島最北端、占守島に上陸したソ連軍だが待っていたのは精鋭中の精鋭とも言える戦車第11連隊だった。

「諸君らに問う!! 赤穂浪士となって恥を忍び後世に仇を報ずるか、それとも白虎隊となり民族の防波堤として玉砕するか!!」
『オオオオオオォォォォォォォォォォォォォ!!』

 池田大佐の問いに戦車兵達は右拳を突き挙げて玉砕を決意する。戦車兵達が各車に散らばり準備をする中、池田大佐はポツリと呟いたのを傍にいた福田少尉は聞いていた。

「ありがとう……みな、ありがとう……」

 戦車第11連隊は出せる最大速度で占守島の地を駆け抜けソ連軍が上陸した竹田浜に殺到したのである。

「カクカク、各車弾種榴弾!!」
「撃ちまくれェ!!」
「ヤポンスキーの戦車だ!?」
「対戦車ライフルで迎え撃て!?」
「駄目だ、奴等の装甲が固すぎる!!」

 第91師団と戦車第11連隊の猛攻により上陸した竹田浜は元よりむしろ追い返された程であった。また、千島列島の武装解除を目的に占守島に上陸していた米陸軍一個連隊も日本軍と共に自衛のため戦闘をしており日米はソ連の侵攻に協力態勢を整えていた。
 ハワイでも新たに機動部隊司令長官に再抜擢されたフランク・J・フレッチャー大将が再編された空母六隻の艦隊と上陸船団を率いて千島列島に向けて北上していた。
 戦いは新たな局面を迎えようとしていたのである。

916: 加賀 :2020/12/25(金) 11:37:16 HOST:softbank126243060102.bbtec.net
髭親父(満面の笑み)
「満州と千島列島と南樺太に北海道頂戴♪」
関東軍(覚悟決めた顔)
「ぶち殺す」
杉山(掛かってこい)
「舐めるなよ」
信濃(能面)
「代わりにウラジオストク艦隊を全滅させました」
瑞鶴()
「まだ遅い能面」
池田大佐(相手になってやる)
「我等、白虎隊となる」




杉山は樺太の地にて散りました……

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2020年12月31日 13:01