854: ham ◆sneo5SWWRw :2021/01/14(木) 01:21:06 HOST:sp1-75-247-26.msb.spmode.ne.jp
戦後夢幻会ネタ ham世界線 マレー沖夜戦 接敵


「フィリップス提督、フォーミタブル所属のソードフィッシュから『敵潜水艦を発見、撃沈した』との報告です」
「付けられていたか・・・」

フィリップスは報告を聞いて、そう呟く。
彼のZ部隊には、史実と違い、フォーミタブルが加わっていた。
史実では41年5月に地中海で独空軍のJu87の攻撃で大破し、ノーフォークで修理中だったが、この世界では迎撃機の活躍で爆弾を回避して無事だった。
このため、インドミタブルが座礁したことを受け、急遽替わりとして派遣されていた。
格納庫の都合から、搭載機は若干劣るものの、護衛機の無い陸攻には脅威と成り得た。
さて、敵潜を撃沈したものの、発見されたことに変わりはなく、参謀が進退を訊ねてきたが、フィリップス提督の意思は変わらなかった。

「もうすぐ夜だ。所詮レーダーを持たぬ有色人種だ。容易く接近して撃退できるさ」

日本もとことん舐められたものである。


さて、一方で馬来部隊、第22航空戦隊から出撃した各機は必死に英艦隊を捜索していた。
同時にいつでも爆撃できるように爆装、雷装した陸攻が上がり、捜索していた。
しかし、スコールで幾度も阻まれ、発見の機会を失っていた。


夜の帳が降り、馬来部隊は以前として南下を続けていた。
南方特有のスコールの多発で、月はすっかり雲に隠れ、視界は最悪であった。
それでも史実では由良と上手く合流できないなどトラブル続きだった状況に比べれば、既に合流を終え、電探と逆探を装備している状況ははるかにマシであった。
小沢は英軍の逆探を警戒し、逆探のみでの捜索を実施しており、21時、ついに逆探が英艦隊のレーダー波を捉えた。
小沢は、戦後資料の記憶を頼りに、英艦隊は20浬以内に居るものとしてさらに接近するために増速。
同時に、マレー半島への行く手を遮れるようにするため、針路を南西に取った。
順調にいくかと思った21時30分頃、突如、鳥海の上空に吊光弾が上がった。

「いかん!陸攻が誤認しているぞ!」

史実と同じく、美幌航空隊の武田八郎大尉の96式陸攻3機による誤爆未遂が発生したのだ。
史実では北(正確には北東)を進んでいたために誤認したが、今回はマレー半島の方角に向かっているために誤認してしまったのだ。
急ぎ、サイゴンへの連絡と陸攻への発光信号、さらに零観を飛ばして直接連絡することで事なきを得ようとした。
しかし、史実では英艦隊に目視されていた吊光弾。
史実と違って接近を目指していたことにより、英艦隊に有利に働いた。
突如として、艦隊の周囲に水柱が上がった。

「敵艦から砲撃を受けています!」

吊光弾とそれに照らされた馬来部隊を確認したフィリップス提督は自らが発見されたと判断し、快速の巡洋艦部隊では逃れられぬと攻撃を決断したのだ。
幸い相手は巡洋艦ばかり。戦艦を擁する自らが有利であり、適当に打撃を与えて離脱できるという判断であった。
かくて、史実では擦れ違った日英艦隊が激突することとなった。

855: ham ◆sneo5SWWRw :2021/01/14(木) 01:21:38 HOST:sp1-75-247-26.msb.spmode.ne.jp

「なんてことをしてしまったんだ!」

武田大尉はそう言って自らの過ちを悔やんだ。
最初、敵艦隊発見と勇んで吊光弾を落とし、味方艦隊だと知って慌てて攻撃を止めたが、それが原因で英艦隊に先手を取られてしまっていた。
もし自分が誤認しなければ、馬来部隊は優位な位置で攻撃できたかもしれない。
そう思うと悔やんでも悔やみきれなった。

「ここに至ってはなんとしても敵艦に痛打を与えるぞ!」

武田大尉の決意表明に、他の搭乗員たちも頷いて答えた。



「無線封止解除! 電探も直ちに起動せよ! 電探で位置を特定次第、砲撃を開始せよ!」

小沢はそう命じて反撃を開始した。
まだ見張り員から位置特定の報告が無い以上、電探で探すしかなかった。
位置を特定されると言われている電探も、既に見つかっている以上、それを気にする必要はない。

「吹雪を護衛に、瑞鳳は退避しつつ攻撃隊を上げさせよ!」
「今ですか!?就役したばかりの瑞鳳に夜間攻撃は・・・」
「かすり傷程度でも構わん!とにかく戦いの主導権をこちらに引き寄せなければいけない。そのためにも攪乱が必要だ」

小沢はそう命じて、瑞鳳に攻撃隊を準備させる。
先手を取られた今の状況では、主導権が英軍の手にあり、機を見て水雷戦隊による雷撃という事も難しい。
夜間航空攻撃という攪乱で機を作り出すしかない。
そう小沢は判断した。
そして、その機は意外にも早く上空から舞い降りた。

「上空の陸攻が低空に降ります!」
「今更何する気だ!」

先ほど馬来部隊を誤認した武田大尉の96式陸攻3機が低空に降りてきた。
上空に居る彼らは英艦隊の発砲炎を確認し、先頭を進むPOWに雷撃を仕掛けたのだ。

「双発機で夜間雷撃だと!?」

この予想外の攻撃に英艦隊は大いに慌てた。
POWご自慢のポンポン砲や13.3cm砲が慌てて火を噴いた。

856: ham ◆sneo5SWWRw :2021/01/14(木) 01:22:21 HOST:sp1-75-247-26.msb.spmode.ne.jp
しかし、ポンポン砲はすぐに故障し、人力装填の13.3cm砲では対応が遅れた。
おまけにPOWの対空指揮装置はKGV級で一般的に搭載されているレーダー連動できる機械式コンピューターではなく、一世代も昔の装置で、レーダー連動もできない代物だった。
加えて、対空信管も遅い複葉機に合わせて設定したこともあり、高速の双発機のはるか後方で爆発する有様だった。
そうこうしている内に武田隊の3機は魚雷を次々に投下していく。
あとは上空に退避するだけだが、偶然にも至近で13.3cm砲弾が爆発。武田機に火が噴いた。
しかし、武田機はなおも飛行を続け、POWを目指す。

「突っ込んでくるぞ!」

英艦隊は必死に抵抗し、POWのリーチ艦長は回避運動を行うが、武田大尉の信念が実を結んだのか、武田機はPOWの艦橋に激突した。
フィリップス提督は一命を取り留めたが、リーチ艦長はこの自爆で戦死し、艦橋に居た幕僚や要員に死傷者が大勢出た。
さらに、武田隊の魚雷2本がPOW艦尾の推進軸、舵周辺に命中。
推進軸付近に命中した魚雷により推進軸が捩れ曲がり、回転するタービン・シャフトの先端が隔壁を連打して破壊し、大量の海水が流入。
加えて、たった1枚しかない舵も根本から折れ曲がり、舵の効きが半分以下になるという有様だった。
まもなく、機械室冠水によりタービン2基が使用不能、加えて発電機故障による電力低下で後部にある3番主砲と4基の13.3cm連装両用砲が全て使用不能になった。
この惨状に「なにが不沈戦艦だ!」とPOW乗員たちが叫ぶ中、速力が15ノットまで低下したPOWの周囲に水柱が上がった。
日本艦隊がついに英艦隊を見つけたのだ。






以上です。
答えはフォーミタブルでした。
実はハーミズも加えようかと考えたのは内緒。
さて、ついに接敵しました。
まぁ、史実以上に近付いて、吊光弾で照らされたら攻撃されますね。


POWの装備や被害状況ですが、実は史実でもこんな有様です。
史実では第2波攻撃の雷撃で1本当たっただけでタービン2基・発電機故障し、速力20ノットに低下、操舵不能に陥ってます。
あと、英艦はなぜか司令塔の装甲が駆逐艦並みしかなく、各国の戦艦と比べると異常なくらいペラッペラですので、双発機が突っ込んだらこんな惨状にはなるでしょうね。
実際、POWはビスマルクの主砲弾が当たって、リーチ艦長と見張員1名を除く艦橋要員が全員戦死してますし。

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最終更新:2021年01月14日 23:07