798: 635 :2021/03/31(水) 23:54:24 HOST:119-171-231-231.rev.home.ne.jp

銀河連合日本×神崎島ネタSS ネタ ゲートの先は神崎島もヤルバーンも無いようです三十二後編


「ウソだろ…?」

「キレイ…。」


東京渋谷の街でその光景を見る者達は言葉を零した。


全ての人々がそれを見た。
今尚、欧州の戦場で祖国を守る兵士が、中東で戦う正しき殉教者が、中華の地で今後の父祖の大地を憂う者が、

その身に神を宿し文字通り神々しいその姿に希望を見て、


中欧で滅びを企んだものが、中東で教えを捻じ曲げた背教者が、中華の地で自らが天ならんとした者が、

神々しいその姿に絶望し、


日本で、神崎島で、イゼイラで、ティエルクマスカで彼女達の無事を願う者たちが、

その神々しい姿に全員の帰還を願う。



純白の艦体が青い燐光を放ち、重力子の波を掻き分け、歪曲圧縮された空間の津波すら超えていく。
それは死と生の境界はおろか、異なる世界の間、遥かな時のうねりすらもを渡る艦。

人の祈り、死者の願い、神々の想い、深海棲艦の悔恨、艦娘の誇り。
それらが託されたその眞鐵の艦体(からだ)はその程度で折れたりなど、
いや二度と折れたりなどしない。


数分、いや数時間にも思える空間の津波を超えて戦艦大和はティアマトの姿を捉えた。
驚愕したかの様に見えるティアマト、その瞬間その巨体が揺らぐ。

隙を突き海中より姿を現した巨鯨、蛭子命が体当たりをしたのだ。
その瞬間を逃しはしない。


『機関増速、両舷一杯!!』

「神崎提督!?」

「提督、了解です!機関増速、両舷一杯!!」


いたのかと驚愕の声を上げる柏木を無視して艦娘大和でもある伊耶那美命は声を上げる。
空間振動波機関に合わせ艦尾の斥力推進機関のスラスターも輝きを増し速度を増す。

ティアマトと戦艦大和の二百メートルを超える巨体が反航戦の様な形で接触する。
大きな音を上げて激突する竜の身体と眞鐵の艦体。


『右舷に全火力を集中!!』


右舷に浮かぶティアマトに指向可能な全ての火器が向けられる。
超重力砲十六門、四六センチ斥力砲、一五.五センチ斥力副砲、重粒子ビーム、ディスラプター、高角砲、ディルフィルド魚雷、侵食弾頭。


『撃ち方始めー!』

「うちーかたーはじめええ――!」


声と共に放たれる火器がティアマトを穿つ。
そして戦艦大和の下、海面が割れ突如として空間が波打つと大和はそこへと吸い込まれ姿を消す。
同時にティアマトに光の柱が叩き付けられる。

799: 635 :2021/03/31(水) 23:55:22 HOST:119-171-231-231.rev.home.ne.jp




対馬より遥か上空五〇〇キロ、衛星軌道上へと移動したアルテミス。
その現在の身体、それは遥か遠き世界の機械仕掛けの神を模した神の器、此度月女神が降り真なる機神となる。


「星間狙撃砲起動。神核接続、神核励起。原初の母よ食らいなさい!これが我が神意、我が一撃!」


『汝、星を穿つ黄金』、異聞たる歴史の世界で人理を取り戻そうとする星見の天文台の者達に対して振るわれた神代を守るその一撃、
この世界では人代を、人の世の理を守ろうとする者への助力として同じ女神により放たれる。

都市一つをまるごと消滅させた光の柱、それすらも上回る全てを焼き尽くす圧倒的な暴力。
十二の蘇生と魔術師達による十全の支援を受けた大英雄すら消し飛ばした火力がティアマトへと降り注ぐ。
戦艦大和によって作られた傷を広げ、竜体を焼き尽くすがそれでもティアマトは再生を始める。
しかし動きが止まった今が千載一遇の好機。




「ダーリン!」

「応よ!」


アルテミスの声にオリオンが応える。
オリオンが立つは航空母艦大鳳の甲板、その上で弓に矢を番え天を狙う。

弓は日ノ本が神弓にして生命の神器たる生弓、
その矢の矢柄は平和の祝福が込められたオリーブより作り出され、矢羽はオリーブを齎した鳩のもの、
そして鏃は鳩そのものがその身を転じさせた平和の概念そのもの。
最早それは誰かを殺す為の武具ではない、ティアマトを止める為だけの神器。

されど生弓は神の弓なれば五人張りどころか万人張り、いや万でも足らないかもしれず。
万夫不当、無双の狩人にして水神となった身といえど荷が重いやもしれない。


しかし此度の生弓は一人で射るものに非ず。
この場に集う常人の目には見えぬ者達と日ノ本の民の心がオリオンと共に生弓の弦を引く。

目に見えぬ者達、それは武人。
一所懸命、神々がこの日ノ本の大事と集うというこの時、この場に集わぬ日ノ本の武士(もののふ)があろうか?
いや、それはない、それらは九段を始め各地の産土神の社等で祀られる八百万でもあるのだから。
上代の防人から鎌倉の御家人、戦国の将、大戦の兵士までここにいる。
名だたる者も少なくない。

摂津は多田の社よりは多田権現が子源頼光公、近江は瀬田の唐橋より藤原秀郷公。
菊水の旗に、赤備え、神崎島よりは己が子孫である浅間智の身体を借りて鎮西八郎源為朝公が馳せ参じた。


オリオンは不敵に笑う、悪くはないと。
共に弓を射るはこの国の現在を生きる者達の心とこの島国が誇る古強者達。
相手は創造神たる始原の竜にして古きオリエントの母神。
相手にとって不足無し。

そして何より、愛する者と共に戦っている。
八百万の神となるのも悪くはない、そう思う。

八百万の神々。その存在は永劫ではない永遠ではない寄り添う儚き命達と共に変わり続ける。
時を移ろい変わりゆく四季を持つこの国のように。



嗚呼、遥か遠き故郷ギリシャ、永劫で傲慢でそれでも偉大なるオリュンポスの神々よ、

主神天照大御神、そして八百万の祖神伊耶那美命よ。照覧あれ。

刮目せよ。これが我が、いやこの国にある者達の一撃。

800: 635 :2021/03/31(水) 23:57:06 HOST:119-171-231-231.rev.home.ne.jp



黄金の輝きが大鳳の甲板より天に放たれる。
その一矢に名前などない、されど太陽の如く輝くその光こそはこの国にある者達の黄金の精神そのもの。

その矢が、最早対神砲撃というべきそれが向かう先は衛星軌道上の機神アルテミス。
それは異聞の世界の神話の再現、しかしそれはアルテミスを撃ち落とす為に非ず。


「ゲートオープン!!」


アルテミスの声を共に機神アルテミスの周辺の空間が水面のように揺らぐ。
ディルフィルドゲートの次元境界面、そこに矢は突入する。

直接ティアマトの頭部を狙うのは如何にオリオンともいえど骨が折れる。
だが、陸上生物の死角である真上からならばどうか。
そのためのこの世界の機神アルテミス、そのベースとなった砲艦アルテミスの高度なディルフィルドゲート制御システム。

再びアルテミスが開く次元境界面、黄金の輝きが空間波動を纏い現れ地表、ティアマトの頭部を目指す。
無双の狩人オリオンと狩りの月女神アルテミス、二人に射られた矢から如何なる者も逃れることは出来ない。


そして矢は………ティアマトの額に突き刺さる…!!


その瞬間に神の使いたる鳩が転じた鏃に込められた平和の概念が解放されティアマトの身体へ流れ込み動きを止める。
それだけではない、矢柄のオリーブが急成長しティアマトの身体へと絡みつく。
オーリブは五行の木気、塩水であるティアマト・水気により相生し、大地たるティアマトの身体・土気を相克する。
オリーブは平和の祝福と相克によりティアマトの身体の自由を奪う。



そして、



ティアマトの真上、対馬の海域の空間に稲妻が走り、空が割れ、次元の穴が開き艦首を海面、ティアマトに向けた白亜の大戦艦が姿を現す。

そして龍の顎にも見えるその艦首の最奥の亜空間次元反転縮退砲、菊の花にも似たソレが紫電を帯びる。

ティアマトは障壁を幾重にも展開する。
加護、事象可変シールド、クラインフィールド、空間圧縮による質量断層。


戦艦大和の艦首、竜の顎より星の輝きを纏う吐息が放たれ、対馬に光が生まれた。
亜空間次元反転縮退砲は障壁に阻まれ拡散しながらも全ての守りを貫く。
しかし、最後は頑強な神代の竜の皮と甲殻に阻まれる。 

だが問題ない世界、いや宇宙最強の武器を残している。




それは…『戦艦大和』それ自体。




拘束されてもなお行うティアマトのあらゆる反撃を弾き返し、大和の艦体が竜体の皮と甲殻ごと身体を貫き、骨格を粉砕する。

夥しい量の血がティアマトより溢れ純白の芳容を深紅に染め上げる。
大和はより深く竜体を貫きその艦体を以て海面にティアマトを縫い止め、ようやくティアマトは動きを完全に止めた。
だが完全に息絶えた訳ではない、大和の艦体が離れれば即座に再生を始めるだろう。

801: 635 :2021/03/31(水) 23:58:37 HOST:119-171-231-231.rev.home.ne.jp




ティアマトに突き刺さったまま水面より垂直に立つ戦艦大和の甲板、
重力制御により艦底に向かい重力が働くそこで柏木達は多川達の操る旭龍の手に乗ろうとしていた。

これより彼らはティアマトの竜体へと上陸する。
対州要塞姫もまた自身の決着をつけるため、ネロ達や大和に乗り移れた艦娘達も同行する。
戦艦大和に残るのは姫迦と伊耶那美命、そして神崎のみ。
神崎はティアマトを艦のセンサーで監視している為にこの場にはいない。


「柏木さん。ティアマトを縫い止め、彼女を八百万とするための呪力を貯めるため私が動くことは叶いません。
故にここからは貴方達自身の力で事を成しなさい。」


姫迦を抱く伊耶那美命の言葉に柏木は頷く。
ここから先天照大御神らの助けこそあるが、ここまで手を引き導いてくれた伊耶那美命の助力はない。

過ちの内人では手に負えぬものを母は鎮めてくれた。
ならばここから先は自らの手でしなければならない。
全ては人が起こしたこと、人の手で決着しなくてはならない。



柏木達を乗せた旭龍は背中の空間振動波機関を展開し大和の甲板を飛び立つ。
伊耶那美命の腕の中で頑張れと手を振る姫迦の、
電子の海の日本の世界の宇宙の果ての声援を受け空を駆ける。


「我が子らよ…必ず…必ず生きて帰りなさい。生きて帰ればそれが勝利です。」


伊耶那美命は自らの子らの無事を思った。

802: 635 :2021/03/31(水) 23:59:27 HOST:119-171-231-231.rev.home.ne.jp
以上になります。転載はご自由にどうぞ。

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最終更新:2021年04月04日 16:22