572: 弥次郎 :2021/06/23(水) 23:22:37 HOST:softbank126066071234.bbtec.net

憂鬱SRW 融合惑星 パトレイパー世界編SS「WXⅢ」5-2



「こりゃあ、本当に映画みたいだ!」

 すっかり慣れたマグチェンジでラムロッド弾の弾倉を叩き込みながらも、秦は叫ぶ。
 戦闘が始まってどれほど経過しただろうか。時間の経過を忘れるほどに、秦は戦いに集中していた。
 振るわれる腕の一撃を見越して動いてクラインフィールドの陰に隠れ、隙を見せた相手に弾丸をぶち込み、弾が切れればリロードする。
最初こそ狙いやすい胴体を狙っていたが、ラムロッド弾の再生阻害能力を生かすため、ズイカクやイ400の攻撃で損傷したところを狙うようになっていた。
そうするように指示されたからだったが、なるほど、再生する動きが鈍っていて、効果を発揮しているというのがわかる。

「ああ、まったくだ…!」

 アシストスーツのおかげで足の怪我をものともせず戦う久住も、秦の叫びに同意するしかない。
 適当に映像をとって音楽をつけるだけでも、今の自分たちの戦いは映画になりそうだ。
 とはいえ、映画と違って今の自分たちは極めて命懸けだということが、緩みを許さなかった。
 二人のメンタルモデルが交互にクラインフィールドで防御をし、刑事二人を凌ぐ攻撃を浴びせることで出血を強いてダメージを重ねている。
 だが、相手の再生能力の高さはかなりのものだった。攻撃を防ぐことはできていなくとも、頭部や胸部を打ち抜いたり殴り潰しても再生してしまうのだ。

「どういう手品なんだよ、あれは!」
「阻害剤が効果を発揮していない……いや、体積が大きすぎるようだ!」

 プラズマ弾を撃ち込んでイ400は叫ぶ。そう、攻撃をいくら浴びせても再生してしまうからこそ、ラムロッド弾の使用を指示した。
そして、効果が最も出るように使用することもできていた。だが、そのラムロッド弾の効果は出ていても限定的で、限界があった。
 つまり、その怪獣の再生能力に対して阻害剤の絶対量が足りない、あるいはその大きな体に対して不十分な量であるということだった。

「どうする?」
「問題ない。追加の火器と増援を要請してある。それが到着すればこの状況を打破できるはずだ」

 それに、とズイカクはいわゆる高角砲のミニチュア版をいくつも浮かべて連射しながらいう。
 ビームの連射でハチの巣にしていくが、その傍から再生されていっているので一見無意味だ。
 だが、目的は果たせている。

「こうして我々に対して釘付けにしていれば、他への被害を減らせている。
 無作為に暴れられるよりもはるかにましだ」
「そうか、それならいいんだけど……!」

 だが、無尽蔵に近い体力を持つメンタルモデル二人に対し、刑事二人の体力は有限だ。
 年齢が比較的若く、野球をしていることで体を鍛えている秦はともかくとして、高齢の久住には中々にキツイものがある。

「くそ、弾切れか!」
「秦、使え。少しきつくなってきた……!」
「はい!」

 肩で息をしている久住から、予備のマガジンを受け取った秦は攻撃を継続する。
 メンタルモデル二人の攻撃に合わせ、打ち込む。最初は戸惑ったが、もう迷いなく引き金が引けた。

《グウウウウウウウウウウウウウウウアアアアアアアアア!》

 だが、怪獣も苛立ちを隠していなかった。攻撃が通用せず、一方的に痛みを与えられ続けているのだから。
 もちろん傷つけられた箇所の再生は進んではいるが、攻撃されれば怒って攻撃し返すというもの。
先ほどよりも熾烈な剛腕が襲い掛かり、あるいはその巨体を生かした突進を仕掛けてくる。
 しかし、食らってやる理由はない。それらはクラインフィールドをうまく使い、尚且つ刑事二人をメンタルモデルが運ぶことで防がれ、あるいは躱されていく。
周辺はその余波で大きく破壊されていくが、彼らが対峙する前と違い、その範囲は限定されていた。

573: 弥次郎 :2021/06/23(水) 23:24:25 HOST:softbank126066071234.bbtec.net

 つまり、この怪獣が本能のままに暴れまわるよりもはるかにましな状況を演出できている、ということだ。
 撃破できなくとも、拘束はできる。それこそが少ない戦力で選べる戦術だった。
 そして、流石にきつくなったのか動きが鈍る久住のフォローにイ400が入った。

「クズミ、回復に努めてくれ。無理は禁物だ」
「そ、そうか……ふぅ……」
「それと、我々のそばから離れすぎないように。守れる範囲は狭い」

 すでに戦闘開始から30分以上が経過しているが、やはり決定打に欠けている。
 遅滞戦闘に努めている分では問題がないが、かといって、増援が準備を整えて駆け付けるまで今の状況を維持できるかが問題だった。
久住か秦がまだ動けるうちはいい。だが、負傷や体力の限界などで動けなくなった時、敵の眼前で要救助者を抱えるという状況に陥りかねない。

(増援は……あと5分程度か!)

 追加装備のコンテナと増援として派遣されてくる戦力はすでにこちらに向かって全力で向かっている。
 情報によれば、東京湾各所でB.O.W.が確認され始め、連合の戦力が分散せざるを得ない状況に追い込まれていたのだ。
もとより研究所と大学の封鎖に人員を割り振っている状況であるなかでの戦力要求だ。むしろ、よくこの短時間で派遣を確約してくれたといえる。

「切り込むぞ!」

 秦がちょうどリロードを行い始めた時、ズイカクは叫びつつも前進した。マスブレードを形成したナノマテリアルが変化。
 今度は長い刀身を持つ物理的な刀へと変貌を遂げた。そして、それは刀身部にクラインフィールドを攻撃的に展開していた。
 それに気が付いた怪獣が、腕を振るってそれを迎撃しようとした。だが、人では視認も難しいそれを見切り、その腕を足場にしてズイカクは跳躍した。
空中に飛び上がったズイカクをさらにもう片方の腕が狙おうとするが、それを先読みしたイ400の砲撃が腕を根元から消し飛ばす。

「チェストォォ!」

 そして、刀を大上段に振りかぶり、上空から一気に迫るズイカク。それは、身体を一本の刀のようにした一撃を叩き込む薩摩示現流の型。
 刹那の間に、怪獣は脳天から一気に切り裂かれ、身体を縦に面白いように切り裂かれていく。
 ミリをこえ、ナノ単位で制御されたクラインフィールドにより、その刀は抵抗を受けることなく、一気に切り裂いた。
頭蓋骨に守られた脳を切り裂き、脊髄を切り、それらを守る筋肉や脂肪をないかのように分けていく。
 まさに刹那の一撃。流石の怪獣も、痛みを訴える間も抵抗する間もなく、真っ向から真っ二つにされた。
 大量の血液やら体液やらが噴出し、怪獣は後ろにぶっ倒れていく。
 だが、恐ろしいことに倒れていきながらすでに再生が始まっていったのをズイカクは見た。
 断裂したら治らない神経も脊髄も瞬く間に再生、いや新生していく。切られたところを起点にして、細胞が一気に分化して作り直してしまったのだ。

「しぶといな……まだ殺しつくせないとは……」

 もがくようにして、再生と新生を繰り返し、怪獣は起き上がろうとしている。
 しかして、その時は訪れた。上空をフライパスする輸送機。そのハッチから次々と空挺降下してくる戦力が見えたのだ。

「遅かったじゃないか……」

 それは、BSAAの分隊だ。無理を言って、重装備も備えた集団をこちらに回してもらった。
 空挺降下してきた彼らは正確なコントロールで周辺のビルの上や道路の上に着地。すぐに武装の展開を開始する。
 空挺投下されたのは何も歩兵だけではない。
 市街地での戦闘も容易いMTが、UNACが次々と降下してきたのだ。いずれもが、対B.O.W.兵装で武装し、蹂躙できるようにしてある。
数として決して多いとは言えないが、それでも先ほどよりもはるかに戦力は増えた。

574: 弥次郎 :2021/06/23(水) 23:25:10 HOST:softbank126066071234.bbtec.net


「これが……」
「ああ。Bioterrorism Security Assessment Alliance、通称をBSAA。
 この手のB.O.W.と戦うための専門の訓練を受けたプロフェッショナル達だ」

 助かった、というように秦は大きく息を吐き出した。
 数が多いというだけで、とても心強い。それに、先ほどまでは無視せざるを得なかった市民を誘導し、逃がす役割を任せられるのだ。
 そして、とズイカクは言う。

「この怪獣、やたらと再生能力が高くて苦労した。おまけに巨体だから阻害剤の絶対量が足りなかった。
 それも、今の状態ならばそれも解決できている」

 ズイカクが腕を上げると、周囲をドーム状にクラインフィールドが展開される。
 それを待って、展開した戦力の砲火が一斉に放たれた。
 それは怒涛のごとき、あるいは、雨が降り注ぐかのようだった。対B.O.W.を想定した強装弾や光学兵器などが次々と打ち込まれる。
MTやUNACだけでなく、降下してきた歩兵たちも持ち込んできた大型火器で弾丸を叩き込んでいくのだ。
ただの銃弾ではなく、ラムロッド弾や硫酸弾あるいは焼夷弾といった生物に致命的なものまでも容赦なく。
 怪獣は、最前までの攻撃で受けた損傷を再生しきって、動き出そうとしていた。だが、間髪入れずに次が襲い掛かったことで、その場にくぎ付けにされた。
というか、着弾で生じる砂ぼこりやら血しぶきやらついでに破壊される道路のがれきなどの中に、その姿が沈んでいくのだ。

「先ほどまでは、絶対量が足りなかった。だから再生されて千日手だったわけだが……今度はそうはいかない」
「とてつもないな……」
「街が消し飛びそうだ」
「致し方ない犠牲というやつらしいぞ、人間の言葉で言えば」

 そうこうしている間にも、攻撃は続行される。怪獣の悲鳴が、膨大な砲火の音の向こう側に聞こえるが、徐々に小さくなっていく。
 斯くして、東京都内の川沿いのライブハウスを襲撃した怪獣は、ここに倒れることになった。
 厳密には細胞や組織レベルではまだ活動していたが、再生に必要な栄養が度重なる負傷の再生の中で枯渇。
加えて、大量の対B.O.W.兵器の使用によって撃ち込まれた阻害剤や細胞破壊剤によって再生能力自体をほぼ失ってしまったのだ。
それでもなお動いている、というのは全くを以て脅威としか言えなかったが、大勢に影響は及ぼせない。
 そして、最早残骸レベルになったそれは一部の組織をサンプルとして回収したのちに、その場でナパーム弾や火炎放射器による焼却処理が行われた。
とにかく焼いて潰す。徹底的に滅却し、生き残る余地を奪い去る。残酷だと、残虐だと、人間のやることじゃないといわれるかもしれない。
 だが、自らの、そして不特定多数の人々の生存のためには、この生物は死んでもらわなくてはならないのだ。
 たとえそれが、とある女性研究者の愛した娘のがん細胞に由来した、ある意味では生き返った娘であろうと何であろうとも。
 久住と秦は、それをただ見ていることしかできなかった。同情してしまうのが間違っているのは理解している。
だが、人の手によって生み出されたと思われるB.O.W.が、創造主から見捨てられ、このような末路を迎えることに、どこか悲哀を感じてしまうのだった。
 フランケンシュタインの怪物。愛を求め、番を求めた、人が生み出した人ならざるモノ。それと似たものが、二人の前でその命を終わらせたのだった。

575: 弥次郎 :2021/06/23(水) 23:26:42 HOST:softbank126066071234.bbtec.net

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こっちは何が起こるかは…うん、まあ、お察しください。
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最終更新:2023年06月22日 22:32