104: 加賀 :2022/04/18(月) 20:31:02 HOST:softbank126241192103.bbtec.net


「来ましたね西住隊長、BT戦車多数視認しました」
「………」

 7月3日、戦車・装甲車19輌、対戦車砲数門と歩兵500名のソ連軍が攻撃してきた。それを迎え撃つのは第334独立戦車小隊と歩兵一個小隊だった。

「島田大尉車より無線です。『我、突撃セリ』」
「……徹甲弾装填」
「装填用意!!」

 装填手を務める秋山軍曹は採用されたばかりの97式徹甲弾を装填する。

「五十鈴軍曹」
「照準宜し」

 砲手の五十鈴軍曹は眼鏡を覗きながらニヤリと笑う。それを見た西住小次郎大尉はゆっくりと声を発した。

「撃てば必中……この火力を思い知るがいい……砲撃始めェ!!」

 2両の97式自走砲『ホイ』(擬装済み)は砲撃を開始した。放たれた97式徹甲弾は2両のBT-7戦車の正面に貫通し砲塔を吹き飛ばす事に成功する。

「次弾装填!!」
「装填急げ!!」

 75ミリの空薬莢がカランカランと床に落ちて秋山軍曹が新しい徹甲弾を装填する。砲撃に気づいた他のBT戦車等は砲塔を旋回させて砲撃しようとしたがその側面から奇襲攻撃を受けたのである。

「天下の独立懸架およびシーソー式連動懸架を舐めんなよォ!!」

 島田車の操縦手である名倉伍長はそう叫びながら最大速力である39kmを出させながらジグザグ走行でソ連戦車(BT戦車)に突撃する。

「下地、装填」
「了解です!!」

 装填手の下地上等兵は57ミリ徹甲弾(97式)を装填しつつ砲手の安芸軍曹に叫ぶ。

「装填完了!!」
「用意、撃ェ!!」

 放たれる57ミリ砲弾はBT戦車の後部エンジンを吹き飛ばし爆発させる。それを見ながら島田大尉はカンテレを引いていた。

「しかし隊長、楽器を引きながら戦闘なんてよくやれますね?」
「なに、むしろ君たちの心を落ち着かせるためでもあるんだよ」

 下地上等兵の言葉に島田はそう答える。

「そうは言いますがそれをやってたら西住大尉に怒られたじゃないですか。戦車の中で音楽を奏でるなんて邪道だと……」
「まぁ西住大尉にも色々とあるさ。それにな下地……」

 島田はキューポラから顔を出す。辺りはソ連戦車が多数破壊されていた。

「彼も同じ戦車乗りだ。だから彼も戦車を愛しているのは分かる、戦車には人生の大切な全てのことが詰まってる。
でも多くの人がそれに気付かないんだ。悲しい事だがね」

 そう言う島田に下地は肩を竦める。

「なら戦車の意地をこの戦いで見せましょう!!」
「そうですよ隊長!!」
「ハハハ、意地……それは戦車にとって大切なことかな? だがしかし……今は君たちの判断を信じよう……」

 下地と安芸の言葉に島田大尉はニヤリと笑うのである。

「では風と一緒に流れていこう……行くぞッ!!」

 そして島田車はカンテレを奏でながら突撃を敢行する。無論ソ連戦車も負けじと反撃をするが反撃する前に西住大尉の『ホイ』に狙撃されて破壊されるのである。

「ホイにまぐれなし……あるのは火力のみ!!」
(やだもぅ……隊長、中身が引っ張られてないか?)

 西住の姿に通信手の武部少尉は溜め息を吐くのである。

105: 加賀 :2022/04/18(月) 20:32:03 HOST:softbank126241192103.bbtec.net
変な電波受信しながら直ぐに書きました。
なお、時系列的に戦車第三連隊が壊滅した直後の話です。

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最終更新:2022年04月19日 11:49