792: 弥次郎 :2022/05/31(火) 22:10:00 HOST:softbank126041244105.bbtec.net

憂鬱SRW アポカリプス 星暦恒星戦役編SS「テセウスの船」



 地球連合の来訪以来、通信や行き来が復活したことによりこれまで以上の交流や連携が可能となった星暦惑星各国。
着々と各戦線でレギオンの排除が進み、レギオン支配域に対する侵入と間引きが行われていることもあり、各国は戦後というものを見越し始めて策動していた。

 ギアーデ連邦やヴァルト盟約同盟は鹵獲されたレギオンの解析を進めることによる技術発展を進め、供与戦力も含めレギオン支配地域への浸透を。
ロア=グレキア連合王国はレギオンのルーツの一つである人工知能「マリアーナ・モデル」の開示と「無慈悲な女王」の情報提供を。
レグキード征海船団国群は摩天貝楼の攻略時において他国では不可能な艦隊戦力の提供と協力を。
それぞれができうる限りの準備と備えを行い、尚且つ地球連合とのつながりを深くし、レギオン戦後を見据えるか、ということである。
 悲しいながらも、地球連合の力はこの星暦惑星の国家を束ねたよりもさらに上を行く。それにゆえに、如何につながりを持ち、支援を勝ち取るかが勝負。
弱者と言わば言え。されども、その手を取らざるを得ないのもまた事実であった。

 そして、外交上の問題点の一つとして各国共通で浮上しているのが、サンマグノリア共和国であった。
 もはやこれに関しては語るまい。
 開戦後に自国民の有色種を敵性市民として市民権および一切の資産をはく奪、強制収容所に送り込み、あるいは強制労働につかせる。
そして自らは安全なところに引きこもり、人ではない人型の豚を載せた無人機を送り出してレギオンと戦わせる。
そして現在のところ、その戦力---エイティシックスと呼ばれる彼らはほとんどが少年兵ばかりとなっている。
おまけに、市民権は最初から変換するつもりが全くないという最終的に死ぬように仕組まれたシステムが存在するという状態。
平時であれば、レギオンによる遮断と分断がなかったら、即座に戦争犯罪のオンパレードとして非難と制裁を受けていたであろう振る舞いだ。

 各国が黙っていなかったのは、開戦時にサンマグノリア共和国にいた各国の人間がエイティシックスに含まれていたこともかかわっている。
あるいはサンマグノリア共和国にとどめ置かれていた各国の資産や財産なども、強制的に徴発されたことも。
前述のサンマグノリア共和国の政策が連合を経由して判明したことでただでさえ世論が沸騰していたところに拍車をかけたのが、その共和国の態度だった。
 各国からの追求に一切こびることもなく、反省もせず、悪びれもしなかったのである。
 最初は隠すつもりであったであろう外務大臣は、しかし、追及から逃れられないと分かると開き直ったのだ。

 曰く、自国にいた他国の人間が手引きをして被害を拡大させた。
 曰く、有色種がいたからこそ序盤戦から大きな被害を受けた。
 曰く、有色種は優秀な白系種が管理しなければならない。
 曰く、地球連合さえも共和国の先兵となっている。
 曰く---

 ここから先は書くことも憚られるであろう。
 これを誇らしげに各国に言ってのけるというのは胆が太いのか、はたまた無知であるからか。
 ただ一つ言えるとすれば、各国の外交官がもはや人を見る目をしていなかったということだ。

 各国としては全力でサンマグノリア共和国をぶん殴りたいところであった。
 幸いにして彼らの領土は狭まっており、人口も少なく、兵役に耐えうるのはエイティシックス達ばかりということも判明していたからだ。
つまり、戦争という負担を人型の豚に押し付けたことにより、自ら戦う術を捨ててしまったのが現在の共和国なのだ。
なればこそ、いくらでも軍事的なオプションが通用するということになる。

793: 弥次郎 :2022/05/31(火) 22:10:47 HOST:softbank126041244105.bbtec.net

 しかし、しかしである。虐殺などサンマグノリア共和国の犯したことを繰り返せば、それは同じレベルに落ちることとなるのである。
そんなことは願い下げである。しかして、この白系種至上主義と排外主義を掲げるサンマグノリア共和国が残るのは非常に面倒である。

 では、サンマグノリア共和国に対してどう対処すべきか?
 宣戦布告をして制圧するというのは確定である。国の資産や人材を無為に消費され、尚且つ国益を損なわれたのだ。
更にはこれまでのレギオンに対する事実上の利敵行為もあって懲罰の一つも課さねば腹が収まらないし国民が納得しない。
 そも、初の民主制を採用した国家として五色旗の理念を掲げながらも、白系種至上主義の政策を打ち出している時点で共存不可能である。
レギオンとの戦いが終わった後において、このままのサンマグノリア共和国ははっきり言って邪魔でしかない。
積極的にこちらを害そうとしてくるのは明白だ。まさしくパブリック・エネミーというべき存在であろうか。

 次に問題となったのは、いかなる手段で正当化を図り、尚且つ合法的に乗り込むかである。
 侵略だのなんだの言われるのは面倒であり、且つ、戦後のさらにその後を鑑みて遺恨を残さないか、誰かに押し付ける状態で行いたいのである。

 そして、各国は協議のうえで一つの答えを出した。
 即ち、各国に開戦時に取り残されてしまい、それ以来ずっと残っていたサンマグノリア共和国の国民を使うのである。
長らく各国の中で生活を続けており、すっかり生活に溶け込んでいる人間が多いのだが、帰化していなければサンマグノリア共和国の国民であることは確か。
さらには、おあつらえ向きに各国にはサンマグノリア共和国の大使館があり、政治的に話の通じる人間がいたのである。
彼らは開戦以来ずっと国外におり、言うまでもなく、現行の共和国の政策に反対する立場にあった。
エイティシックスの烙印を押された知り合いや家族や親族がいただけに、その鼻息はとんでもなく荒かったほどだ。
つまるところ----探してみれば、カードというものはそろっていたということであった。

 斯くして、星暦惑星合同の元で正統サンマグノリア共和国政府が結成されることとなった。
 各国に残っていたサンマグノリア共和国の国民と外交官などから構成されるそれは、各国にいた白系種の希望ともなっていた。
なまじ各国に白系種が大多数を占めるサンマグノリア共和国の悪行が広まったこともあって、白系種の多くが肩身の狭い思いをしていたのだ。
まるでテセウスの船のようでもあった。同じ素材と同じ設計で作られ、しかし致命的に違う船。
最もその船の舵取りや行く先を決めることに他国の意志が大きく絡んでいるというのは言うまでもないことだが。

 問題のサンマグノリア共和国は、これに当然のごとく気が付けない。ほとんど外交を拒絶し、内側に籠っている彼らに、国外の動きなど知る由もない。
レギオンがいるのだから各国が軍事的行動には出ないだろうという楽観さえ抱く彼らは、外を気にすることさえ忘れているようですらあるのだし。

 ちなみにであるが、この正統サンマグノリア共和国政府には地球連合は関与していない。
 星暦惑星各国がこれは自分たちの惑星の中での話と断ったのもあるし、地球連合も同様の理由で断ったためだ。

 ともあれ、準備は着々と進むに至ったのである。
 訪れるであろう戦後、あるいはレギオンの脅威が削られた後に、為さなければならぬ報復の準備。
 当事者が壁の中に籠り、安穏としている間に、刃は鋭く、そして切れ味を増していくのだった。

794: 弥次郎 :2022/05/31(火) 22:11:18 HOST:softbank126041244105.bbtec.net
以上、wiki転載はご自由に。
サンマグノリア共和国のあずかり知らぬところで、着々と準備が進むのでした。
まあ、彼の国は知ろうともしていませんけどねぇ
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最終更新:2023年07月10日 20:19