582: 加賀 :2022/06/21(火) 18:30:11 HOST:softbank126241215239.bbtec.net





「さて、1936年となると……」
「226だなぁ」
「我々は渡辺閣下の軍隊ではありません!!天皇陛下の軍隊です!!」
「寝言は寝て言えと言っとけ」
「ところで陸も対戦車砲、完成したんですよ」
「そいつは素敵だ、面白くなってきたぞ」
「……このやり取りは毎回いるのか?」
「まぁ……コミュニケーションの一つだから……」
「ところでガンちゃんのメイド写真集出来たから欲しい人ー? ちなみにカラー化してるよ」
『よくやった杉山!!』
「待てゴラァ!!」





 1936年の幕が開けた。なお、初っぱなの1月15日にはロンドン海軍軍縮会議から脱退を表明する。

「まぁ……どうせ奴等は戦争にさせる気だからな」
「今のうちに技術力や工業力を向上させるのが先決先決」
「それと226だが……」
「高橋さんや斎藤さんは是が非でも救わねばならん」
「二回とも救えなかったですからね……」
「陸戦隊も二個大隊は用意しましょう」
「問題は叛乱軍だが……」
「むしろ全面衝突したら案外大陸には目を向ける必要も無い気が……」
「いや全面衝突して帝都が燃えたら……」

 畑達はそう話すが橋本や近藤達もどうするか悩んでいたが不意に古賀はネルソンに視線を向けた。

「ネルソン殿はどう思いますか?」
「フム……余なら全面衝突もやむ無しだな。内密に処理しても膿は再度復活する。大々的な処置をするのであれば……」
「私達もネルソンの意見には賛成です」

 そこへ口を挟んだのはオリガ達だった。

「少なくとも国が割れる心配は無いのだから衝突しても構わないと思います」
「ですね。その時には瑞雲で上空を飛行しますよ」
「いやそれは困るんですけどマリア皇女」

 ムフーと意気込むマリア皇女に新見がツッコミを入れる。だが、畑達も国を亡くした者達の意見には納得して頷いた。

「やるしかあるまいな」
「畑さん……」
「陸戦隊は此方で任せてほしい。二個大隊を特別訓練の名目で海軍省に派遣して警備させよう」
「感謝します宮様」

 斯くして夢幻会側も二・二六事件に備えるのである。2月24日に宮様らは密かに海軍省に陸戦隊を招集させた。ただし決行日ギリギリでの招集だった事もあり予定していた二個大隊ではなく二個中隊の警備だった。
 それでも25日の夕方には追加の人員もあり何とか一個大隊(混成四個中隊程度)にまで増強が完了したのである。

「奴等が気付く前に配置を完了させる」

 時に時刻は0130、海軍陸戦隊は宮様の命により各中隊、各小隊毎に分かれてそれぞれ総理官邸等の緊急警備に移行した。
 また高橋、斎藤、渡辺、鈴木の四名に関しては陸戦隊が私邸に赴き事情を説明し家族共々自動車に乗車させ海軍省に避難させるのであった。
 そしてそれを知らない安藤大尉や栗原中尉、坂井中尉らの叛乱軍1558名は史実通りの時刻に襲撃した。

「駄目です、家はもぬけの殻です!!」
「勘づかれたのか!?」

583: 加賀 :2022/06/21(火) 18:30:53 HOST:softbank126241215239.bbtec.net
 0505頃、斎藤内大臣私邸を襲撃しに来た坂井中尉、高橋少尉らの150名はもぬけの殻である私邸をくまなく捜索するも斎藤内大臣の姿はなかった。それは同時刻に襲撃に来た高橋大蔵大臣私邸でも同様であった。

「おのれ!! 何処に逃げたのだ!?」
「中橋中尉、此処は総理官邸の部隊と合流しましょう!!」
「……やむを得ん」

 中島中尉の言葉に中橋中尉は頷き、高橋大蔵大臣私邸襲撃部隊約100名は総理官邸の方向へ向かった。
 0510頃、安藤大尉ら約150名の襲撃部隊は鈴木侍従長官邸への襲撃しに来たがもぬけの殻であり安藤大尉は全てを理解した。

(しまった……情報が漏れていたのか……そうなれば急ぎ総理官邸に向かわねば……)

 安藤大尉らは直ちに総理官邸に向かう。だが三個部隊は総理官邸に向かえば栗原中尉らの襲撃部隊約300名は総理官邸を包囲するに留まっていた。

「何をしているのだ栗原中尉!! 早く総理官邸の攻撃を……」
「駄目です安藤大尉、あれを見て下さい!!」

 栗原中尉の指差す先ーー総理官邸の入口には海軍陸戦隊が展開していたのだ。

「海軍陸戦隊……そうか、海軍に情報が漏れていたのか!?」
「どうしますか!?」
「いっそのこと交戦しよう!!」
「馬鹿な、皇軍同士で争うというのか!?」
「ですが昭和維新の完遂には必要な犠牲もやむ無しです!!」

 中橋中尉らは徹底抗戦を主張するが安藤大尉は決めかねていた。

(皇軍同士で争うのは……陛下の心を痛めるのでは……)

 そう思っていた矢先、動いたのは海軍陸戦隊だった。

「撃ェ!!」

 陸戦隊は曲射の射撃ーー迫撃砲で砲撃してきたのだ。

「陸戦隊が砲撃してきました!?」
「陸戦隊が野砲を保有しているだと!?」

 栗原中尉はそう驚くが正確にはフランスのストークブラン社で開発された『ブラント81ミリ迫撃砲Mle27/31』であった。
 史実では昭和6年(1931年)にストークブラン社から売り込みがあったが陸軍はこの頃に九二式歩兵砲の導入が決定したばかりだったので迫撃砲の採用は見送られていた。
 だが夢幻会(古賀や百武ら海軍側)はこれを海軍陸戦隊で運用するという形で20門が購入され1934年から横須賀海軍陸戦隊で運用されていたのだ。
 今回の事件で二個小隊8門が投入されその効果は覿面だった。

「大尉、こうなればやりましょう!!」
「大尉!?」
「大尉!?」
「……よし分かった。全部隊は陸戦隊を攻撃ーー」

 安藤大尉は攻撃を決断したが不意に上空から風切り音が聞こえた。咄嗟に安藤大尉は伏せたが一瞬の間を置いて爆発と爆風が安藤大尉らを襲う。
 爆風が収まり安藤大尉が顔を上げれば先ほどまで論議していた栗原、中橋らは吹き飛ばされていた。そして安藤大尉自身も破片で腹を割かれて負傷していた。

「これが……これが我等の報いというのか……」

 安藤大尉の呟きは陸戦隊の射撃によって掻き消されたのである。叛乱軍ーー特に下士官や兵士達は味方である筈の陸戦隊からの砲撃に混乱していた。

「おい、どうすんだよ!?」
「俺が知るかよ!!」
「こうなりゃ陸戦隊に降伏だよ降伏!!」
「おい、アレを見ろよ!!」

 兵士達がアドバルーンを見た。それは史実にもあった『勅命下る 軍旗たな手向かふな』と記されていたアドバルーンであった。それを見た下士官や兵士達は降伏を決断したのである。なお、陸戦隊は最初の砲撃は確実に殺傷を目的にした砲撃だったがアドバルーン等が上げられてからは威嚇射撃に留まっていた。
 これにより下士官や兵士達の多くから死傷者を出す事はなかった。

「そうか……何とか鎮圧は出来たか。現在までの死傷者は?」
「現在まで約200名弱の死傷者です」
「よし、首謀者らは何としても捕らえるのだ!!」

 斯くして安藤大尉らの昭和維新を目的とした軍事クーデターによる政権打倒は僅か半日で崩れ去るのであった。

584: 加賀 :2022/06/21(火) 18:32:43 HOST:softbank126241215239.bbtec.net
というわけで久しぶりの投下になります。
え、226?
終わりましたはい。後は陸軍が吹っ飛ぶくらいです。

ガンちゃんのメイド服のカラー写真が欲しいと思ったのは自分だけでは無いはず(何

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2022年06月23日 22:14