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銀河連合日本×神崎島ネタSS ネタ ゲートの先は神崎島もヤルバーンも無いようです欧州大戦その十六 盛者必衰



竜の鱗が百足の甲殻が脱皮する様に剥がれ落ちる最中、それは竜のその身より弾き出された。
それは取り込んだ怨嗟の対象であるドイツの者ら、竜の新たなその身に必要なきもの。
海面に落ちたそれは蠱毒に完全に汚染され蠱毒となった蠢く肉塊、それが蠱毒を生んだものの末路だがそれでも生きていた。


「ジェーナスさん!」

「ホウショウ、分かってるわ!後これお願い。皆行くわよ!」


ジェーナスは鳳翔に軍配を預けると背の白い翼をはためかせ戦乙女にして天の御遣いである彼女は飛び上がり他の者もそれに続く。
そして肉塊の上に来るとそれを見下ろす。


【ああ…苦しい助けてくれ…】

【主よ我らをすくい給え…】

【正しきことをした我らが何故こんな目に…】


自らの所業を顧みず肉塊は救いを求めイオー・ジマに手を伸ばす。


「全くあれだけのことしながら救って貰えると思ってるの?」


ジャービスは吐き捨てジェーナスは肉塊達に告げる。


「心から反省し罪を贖う者に主は手を差し伸べるわ…だけど贖わず救いだけ求める者に手を差し伸べられる筈ないわ。」


ジェーナスは手を掲げ皆もそれに続く。
その手の中に光りが生まれる神鳴るもの、雷電。
神のものであり、人の手にある文明の証。


「蠱毒を生み出し世に災いを振りまき蠱毒に成り果てた者よ。
貴方達にこの世界に居場所はなく魂も汚染された貴方達は天国にも地獄にも行けないわ…。
主とか神とか関係ない貴方達を私達は許さない…。消え去りなさい!」


雷の大槍が一斉に放たれる。
それは肉塊の魂を焼き尽くしその存在すらも消去する。


【何故…この様な目に…】


肉塊はその存在を消去される際まで己を顧みることはなかった。




「さあ戦を終わらせようぞ!」


毒竜、いや英仏海峡棲姫の新生を見届けると秀郷は叫ぶ。
天に還る者がいる。輪廻の輪に戻る者がいる。ここに人でなくとも残る者もいる。
故にこの戦いを儀式を終わらったことを示さなければならない。


「ちょっと待ちなさい!」

「葛城か、何か?」


それを止める葛城の声、傍らには海兵隊司令官。

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「終わらせるならばコレが必要でしょう?」


葛城の言葉に司令官が頷き差し出したのは葛城の愛用する梓弓。
兵器であった時分。戦いの終わりを見届け、他者を殺さず他者を生かしその身血穢すことなくことなく一つの終焉を見送った艦の一部。
結びにこれ程相応しき神器はあるまい。


「有り難い。振わせて頂こう。」


海兵隊司令官…【将軍】より【弓】を受け取り艦娘、深海棲艦らが飛び立ち囲いの無くなった土俵に立つと秀郷は弓を高く掲げると振り回し始めた。
四方八方に弓をしならせ秀郷は縦横無尽に土俵の上で舞いを披露する。
弓を持ち簡素な舞いを舞う。ただそれだけであるのにそれを見る者に心を落ち着かせる。

これ即ち弓取り式、その最初は時の相撲取りが【将軍】より【弓】を賜り感謝の舞いを舞ったことろに始まるという。
その様子を父母を救った少女も両親と共に見守る。
その少女を狙う一つの影。


『セメテ!セメテオ前ダケデモォォォォ!!』


腐り崩れかけたかの様なヒトガタ、ドイツの指揮官の成れの果て。
雷の槍よりどうにか逃れたそれは呪いを解いたただの人間の少女だけでも道連れにしようと凶行に及ばんとする。
しかしその手が少女に届くことはなかった。


「最後の最後まで往生際の悪い…!」


怒りの表情をした鳳翔が人であったものの頭部を掴むと艦橋の壁に叩きつけるめり込ませる。
コレはあれのせいで、だが未来を祈り散っていった若鷲達(子ら)の死を穢した。
コレはあってはならない忌まわしき物とよりにもよって忌まわしき呪いと組み合わせ復活させた。
驕れる者が未だ世にあってはならぬ、塵は塵に灰は灰に。


「……祇園精舍の鐘の声、諸行無常の響きあり……娑羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらわす。
驕れる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし…猛き者も終にはほろびぬ…ひとえに風の前の塵に同じ……。」


人であったものを艦橋の壁に押し付けめり込ませたまま目を瞑り鳳翔は詠う。
今この場、鳳翔の紡ぐ言葉は力を得て人であったものの身がさらさらと崩れ塵になり始める。
己の身が崩れ始め人であったものは叫ぶ。


『ヤメロ…!ヤメロオォォッ!?』


その間も秀郷は【弓】を持イオー・ジマの甲板を【踏み締め】て舞い踊る。
弓を持ち大地を踏み締める…それは古い地固めの呪法。
神代、天照大御神が【弓】を携え、【大地】を踏み締め高天ヶ原に昇る素盞嗚命を威嚇し止める為に行った事にまで遡る。
弓を振るうは邪気を払い、土俵を掘り祓う所作は大地を祓い鎮める。
大地を踏むは悪しき者を封ず。


「……遠く異朝をとぶらえば秦の趙高、漢の王莽、梁の朱忌、唐の祿山…これらは皆舊主先皇の政にもしたがわず。
楽しみを極め、諌めをも思い入れず。
天下の乱れん事を悟らずして民間の愁うるところを知らざつしかば久しからずして亡じにし者どもなり……。」

『オデノ…オデノ身体ガァァァァァ!!?』


鳳翔の、そして言の葉に込められた琵琶法師が詠えば亡霊の魂も揺さぶるという程の言霊。
人であったものが崩れていく。鳳翔が世の儚さをその身に直接説き、無常の理(ことわり)を魂に刻む故に。
十字の教えに救われず十字の教えの罪と神仏の悟る理(ことわり)故に世界より消える。

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「……近く本朝をうかがうに承平の将門、天慶の純友、康和の義親、平治の信賴、これらはおごれる心もたけき事も皆とりどりにこそありしかども。
まぢかくは六波羅の入道、前太政大臣平朝臣清盛公と申しし人のありさま傳へ承るこそ心もことばも及ばれね……。」

『アア…アアアア…アアアアァァァァッ!?』

「……その先祖を尋ぬれば桓武天皇第五の皇子、一品式部卿葛原親王九代の後胤、讃岐守正盛が孫、刑部卿忠盛朝臣の嫡男なり。
かの親王の御子、高見王、無官無位にして失せ給いぬ……。」


神に人々に感謝を捧げ俵藤太が舞いを舞う。
秀郷が舞う毎に戦いに昂ぶった精神を静め、邪悪な者を押し込め、海域を鎮めていく。
その身一つで行う秀郷の勇姿に誰もが見惚れる。
秀郷が四股を踏む。神代より万世、天津日より継がれて来た呪い(まじない)が戦場の終わりを告げ……


「……その御子高望王の時、初めて平の姓を賜はつて上総介に成り給いしよりたちまちに王氏を出でて人臣に列なる。
その子鎮守府将軍良望、後には國香と改む。國香より正盛に至る六代は諸国の受領たりしかども、殿上の仙籍をば未だ赦されず……。 」


諸行無常、盛者必衰…鳳翔が言葉を結ぶ。




鳳翔が目を開くとそこに人であったものはなく、あるのはただ風に吹かれ消えゆく塵のみ。
終わったのだ。鳳翔は息を吐き日の落ちた空を見上げる。


「鳳翔…。」「鳳翔さん…。」「鳳翔…さん…。」

「雲龍さん…天城さん…葛城さん…ええ…今度こそ終わりました。」


暗雲は吹き祓われ夜空は晴れ渡る。
その空には星が降る程の夜空が広がっていた。

303:635:2022/10/09(日) 23:39:34 HOST:119-171-248-234.rev.home.ne.jp
以上になります。転載はご自由にどうぞ。
次回よりロンドン市街戦になります。

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最終更新:2022年11月14日 22:54