494 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/10/30(月) 20:58:03 ID:softbank126036058190.bbtec.net [156/308]
憂鬱SRW ファンタジールートSS「氷の空の先に」7
- F世界 ストパン世界 主観1944年10月 オラーシャ帝国 ラドガ湖東部地域
輸送艦隊を編成しているのは陸上輸送艦が主軸だ。輸送に重きを置いたために、直接的な戦闘能力を削ったタイプと言える。
故にこそ、この襲撃を受けている状況下では自衛が精一杯で、とてもではないが迫りくるネウロイの撃滅は望めようがなかった。
勿論、こういった事態に備え、準備はなされていた。戦闘を主目的とする陸上戦艦が輸送艦の盾となり、その武装でネウロイを撃退していくのだ。
加えて、直掩となるウィッチや魔導士、あるいはウォーザードが展開してそれぞれ迎撃にあたることで、ネウロイの排除を進めていた。
「流石に疲労が重なってきたか……クソ、まだ来る!」
「直掩を援護しろ、撃てー!」
しかし、時間経過と連戦は輸送艦隊を不利に追い詰めていた。
すでにネウロイの群れを何度も退け、それでもなお増援を倒し続けているのだ。
どうやっても艦艇のクルーやウィッチたちの体力や集中力が消耗していき、また武器なども消耗していくのだ。
先遣隊がネウロイを倒していった後を少し距離を置いて追従していたのだが、ネウロイはこちらの予想以上に多かったようであった。
「くそったれめ、美女が寄ってくるなら大歓迎だが、こいつらはお断りだっての!
そっち!取り舵20!地形をよく見て進め!速度を落とすな!ああ、直掩まで振り切らない程度にな!」
オネストも必死に艦橋で指示を飛ばす。
決して平坦ではなく、また雪や凍結した樹木などもあるオラーシャの大地を進むのは楽ではない。
尋常ではない寒波によって凍り付いたそれらは、迂闊にぶつかるとこちらの速度もあって損傷を受けてしまう。
そして、足が止まると今度は艦隊全体の船足にまで影響が出てしまうという負の連鎖にはまるのだ。
かといって、展開している陸戦ウィッチやMPFなどまで振り切る速度で航行するのも、彼女らの安全という意味で無理な話だ。
連携すれば防げるのであって、どちらかだけでは確実に突破され、被害を受ける。それだけは絶対に回避すべきことだ。
その時飛び込んできた連絡は、待ちに待ったものであった。
「第502統合航空戦闘団AWACSより入電!同部隊のウィッチ2名が戦闘エリアに入ったと!」
「速いな!」
「ええ、どうやらジェットストライカーを使っているようです!」
「ほお、最新鋭機か。ぜひともうちの部隊にも回してほしいな。
それと、それを使えるくらい手練れのウィッチも」
「人材の奪い合いが激しいと聞きますからね……」
「まあ、そういうことだな」
ともあれ、と通信兵に指示を飛ばす。
「502のウィッチに友軍識別タグを送れ。
それと、彼女らは自由行動を許可してやれ。遊撃に回ってもらって、手が届かないネウロイの撃破を頼むんだ」
「了解」
表示されたロスマンとクルピンスキーの映像に若干どころではなく鼻の下を長くしていたが、それでもオネストは指示を忘れない。
今この場において必要なのは、防衛の手数ではなく、攻勢に出る遊撃戦力だ。
艦艇の火力と直掩によってネウロイの攻勢を受け止めて、横合いから殴り倒す。シンプルだが信頼のおける手法だった。
「もう少しで地球連合の増援も来る!持ちこたえるぞ!」
495 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/10/30(月) 20:59:08 ID:softbank126036058190.bbtec.net [157/308]
輸送艦隊からの要請を受け、クルピンスキーとロスマンは押し寄せてくるネウロイの群れへと向かっていく。
まさに千客万来。陸戦型も空戦型もごちゃ混ぜになり、輸送艦隊に殺到しようとしていたのだ。
先行して発射したロケット弾が次々と爆発し、こちらに進路を変えてきた集団が一気に爆殺され、風穴を開ける。
後はそこから飛び込んでの乱戦だ。下手に撃ち合っても、投射できる火力の差で押し切られるのは目に見えているのだし。
「全方位敵だらけだね」
「いいから、倒すわよ!」
ロスマンは不承不承ではあるものの、背中をクルピンスキーに任せる。
この距離では長物は邪魔になるため、両者ともに30ミリ機関砲を両手に構え、ひたすらにバラまいて排除していく。
加えてジェットストライカー本体に内蔵された12.7ミリ重機関銃も合わせるようにして主に小型種目がけて射撃を加えていく。
演算宝珠によるアシストによるそれは、通常では不可能な多、数目標に対する複数下記による同時射撃を可能としていたのだ。
「次!」
「地上も敵が多いね!」
一つの群れを潰すのに、そうたいして時間はかからない。
問題はそれが多数あることだけ。すぐさま武器を持ち換え、HUDに表示される敵の配置を読み取り、即座に飛翔する。
次の標的は陸戦型ネウロイだ。砲撃をしながら陸戦ウィッチたちの防衛ラインを突破しようとしているのが見える。
それを見て、対地砲撃に適した着弾後炸裂モードへとマギリングイェーガーライフルを切り替え、即座に射撃、しかも連打だ。
生じる爆発は、小型種を消し飛ばし、中型種でも大打撃を与える。そして大型種もその構成を大きく削られることとなる。
「まだ……それなら!」
だが、あくまでも爆風と爆圧でダメージを受けたに過ぎない。大型種はそれでも動こうとしている。
すかさず、ロスマンは吶喊を選んだ。
ウィッチとしてこれまで経験が乏しかったが、数々の戦場で実用性が認められ、搭載されたそれを専用の鞘から引き抜く。
柄の部分のコネクターと手を覆う装甲部のそれが連結され、出力されるのはマギリングブレードだ。
「喰らいなさい!」
肉薄し、通り過ぎざまに露出していたコアを切り裂く。
何度か経験しているが、未だに慣れているとはいいがたい。とはいえ、非常に有効なのは認めざるを得ないか。
その時、HUDに警報が出る。敵の攻撃、上空から!
「……ッ!」
すぐにブレードを収納、回避運動に入ろうとして---こちらを狙っていた航空型ネウロイが撃破された。
「もう、先生は無理しすぎだよ」
「……助かったわ」
クルピンスキーだ。彼女の抱える50ミリカノン砲の一撃が、正確にロスマンを救っていたのだ。
救援ということで焦りが出たのか、注意が周辺に向けられていなかったと、そう理解した。
襲われている友軍のウィッチたちに、あるいは作戦における最重要要素である輸送艦隊の状況に、心が逸り過ぎただろうか。
その自覚が冷静さが戻ってきたところで理解できたから、クルピンスキーに素直に礼を言うことができた。
496 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/10/30(月) 21:00:43 ID:softbank126036058190.bbtec.net [158/308]
弾倉を交換しながらも、クルピンスキーは何時もの軽い表情だ。
「先生でも慌てることはあるんだね」
「ちょっと余裕がないだけよ、今は特にね」
まだネウロイがいるから、とマギリングイェーガーライフルを構え、遠距離から危険度の高い大型種を優先して攻撃していく。
当然、近距離への対応が遅くなるので、直掩にはクルピンスキーが入る。周囲に目を走らせ、いざというときに守れるように、だ。
「重要な作戦なのは理解しているでしょう?」
「でも、だからといって余裕をなくすのは危ないよ。まだ前座でしかないんだから」
「……わかっているわ」
ロスマンとて、これが「グレゴーリ」の攻略に向けた前座だというのは理解している。
それ以上に、この作戦がベルリン奪還に向けてという大きな戦略の中では前座のそのまた前座であるとも。
確かに緊張や集中をすべきであるが、かといって入れ込み過ぎも良くはないと、そういうことだった。
「ひかりさんが無茶をしたのを見て、ちょっとね」
「珍しいね、先生が僕に素直に言い出すなんて」
「あらぬ噂を立てるでしょう、あなたは」
クルピンスキーの放った30ミリ機関砲が近寄ろうとしてくるネウロイを打ち落とす。
素早くマグチェンジをし、リロードを済ませながらも、クルピンスキーは心外だ、という顔をした。
「子猫ちゃん達との楽しい会話でも、ちゃんと言うことと言うべきではないことは弁えているよ」
「筆が滑ることもあるんじゃないの?」
思わずジト目で追及してしまう。
クルピンスキーは案外筆がまめだ。ファンレターも送られてくるし、それに逐次返信を書いていたりする。
遠方にいる知り合いにも近況を伝えるための手紙をよく書いているのは知っている。
一応軍の検閲が入るとはいうが、このよくわからない伝手を持つウィッチがそれを回避する方法を知っている可能性もあるのだ。
「流石にそこまでは……おっと?」
『AWACSより502W005およびW006へ。地球連合軍の増援が到着します、そろそろそっちからも見える頃ですね』
「やっと……確か地球連合軍の増援って」
『情報を共有しますね。
えっと、サブジェクトガード向けの大型武装ヘリだそうで……あ、来ました』
そして、二人は見た。
雲をかき分け風を切って、戦艦がそのまま浮かんでいるようなスケールの、重武装で大型のヘリコプターを。
独特のエンジン音と、周囲を圧倒する威圧感。そして、据え付けられている巨大な武装。どれもが圧倒的だった。
『こちらアルバトロス001、これより輸送艦隊の支援を行う。
手加減が少々難しいのでな、今送信した攻撃範囲の友軍は直ちに退避してくれ』
『002から004、準備完了しました』
『やれやれ、やっと来てくれたか!派手にやってくれ!』
「さて、いこうか」
「ええ……これなら、何とかなりそうだわ」
掃討戦向けと聞いていたそれらが4機もいるならば、もはや地上でしつこく粘るネウロイの命運も決まったものだ。
二人はAWACSからの誘導に従い、上昇していった。
彼女らだけでなく直掩に出ていたウィッチたちも上昇するか、あるいは母艦へと引き上げていく。
ここぞとばかりにネウロイが殺到しようとするが、そうはいかない。
『攻撃開始!』
そして、大地をえぐるような火力で、掃討戦が始まったのだった。
497 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/10/30(月) 21:01:37 ID:softbank126036058190.bbtec.net [159/308]
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やっと次で作戦行動が終わる…
最終更新:2023年11月12日 14:51