地下には来ない夜明け

あの日、幻想郷の山が一つ崩壊した。
下手人は現場にいた伊吹翠香、星熊勇儀と思って間違いはなかった。
理由はいつもの酔った上での喧嘩と思われた。
そう、誰もがいつも通りと思っていた。
人里に住む外来人○○もそうだった。

「毎度ありがとうございます!」

何時もの焼酎を地下の酒屋に運び○○は頭を垂れた。

外来人○○は人の身でありながら、空を飛べたため地上の商品を運び地下で御用聞きをしていた。

無論危険はある。

しかし、○○は地下の有力者、星熊勇儀と知己を得ていたためある程度の安全を保障されていた。

「おう、○○じゃないか!いつもの店に酒を運んでいたのか?」

「勇儀さんいつもありがとうございます。今回はどれくらい酒を運びますか?」

「・・・いや、今回はいい。それより今日は時間があるか?」

「ええ地下を運ぶ分の酒は運びましたから。」


勇儀の家

地下の妖怪のまとめ役と物々しい肩書を持つ勇儀ではあったが、家は質素だった。

○○が勇儀の家に行くのは今回が初めてではない。

翠香と勇儀とで朝まで酒盛りをしたのはいい思い出だ。

そういえば・・・

「なあ翠香はどうしてんだ?最近見てないんだが」

僅かに勇儀の顔に影が差す。

「・・・あいつは今忙しいんだ。」

「そうか翠香は腕のいい大工だし忙しいのかな」

「そうだ!なかなか手に入らない酒があるんだ飲んでみないか?」

「いいのか?酒好きな勇儀がそんなことを言い出すなんて。明日は槍じゃなくて御柱が降ってくるかもな。」

こうして何時ものように酒盛りが始まった。○○は翠香がいないことを若干さびしく思っていたが。

勇儀は最高の女性だった。

酒に強くて勇ましい。

○○は何度勇儀を組み敷いて犯したいと思ったか。

既に酒は何本も開けられ、勇儀も○○もかなり酔いが回っていた。

着物の裾は捲りあがり、勇儀の純白の褌が露わになっていた。

「なあ○○、まぐわらないか?」

○○は思わず酒を噴き出してしまった。

「勇儀!からかうのも大概にしろよ!」

「じゃあ何であたしの褌をさっきから何度もちらちらと見てんだい?鬱陶しいったらありゃしない。」

「それは・・・男の性というか・・・」

「じゃあアンタは心の中からあたしとまぐわいたくないっていうのか・・・」

○○が口を開いた瞬間だった。

「グッあぁぁぁっぁぁぁっぁぁっぁあああああ!」

○○の全身に刺すような痛みが走った。

「嘘はいけないな○○・・・・」

「そんなことっがぁぁぁっぁぁっぁぁぁぁ!」

再度痛みが襲う。今度は股間を焼きゴテで焼かれるような痛みが襲った。

「勇儀ッ俺に何をした・・・・!」

ー それはあたしから答えるよ○○ ー

頭の中に翠香の声が響く。

周りを見渡すが翠香の姿は何処にもなかった。

あるのは勇儀の「とっておき」の空き瓶だった。

ー あたしも勇儀もアンタのことが好きだった。時にはどっちが○○をモノにするか喧嘩して一山消したこともあったっけ ー

ー でもあたしも勇儀も知っていた。嘘をつく人間と一緒になんかいられない ー

ー そこで嘘をつけなくした ー

ー 姿を分解し、酒に偽装して○○の中に入り身体全体と一体化する。そうすれば嘘をつこうとしたら・・・ ー

「ひぎぃ!ぎゃあぁぁぁぁっぁぁぁっぁぁぁぁぁ」

「なあ翠香。おしおきはそれくらいにしてやれ。痛めつけて立たなくなった男を手籠にしてもおもしろくないからな」

目の前には一糸まとわぬ姿の鬼がいた。その瞳は淫欲の華に満ちていた。

「あの日、山一つ吹っ飛ばしても決着はつかなかった。だからあたし達はこうしたのさ・・・」

「あたしが○○の身体を頂く」

ー あたしが○○の心を頂く ー 



「ははっ!翠香も悦んでいるよ○○の身体はすごくいいって!熔けちゃいそうっだって!」

狂ったような哄笑を叫びながら勇儀は○○を凌辱する。

死ぬことすら許されない自らの身体を嘆きながら、なおも○○は救いを求める。

地下に夜明けは来ない。

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最終更新:2011年08月10日 19:57