夢こそ真実


「はぁはぁ・・・やっとやっと帰還したぞぉぉぉぉぉぉぉ!」

○○は肺臓の隅から隅まで外界の空気を吸った。
ガソリンの生み出す黒煙、うっすらと漂う電気機器特有のイオン臭。
そして眼下にそびえるのはコンクリートとガラスでできたビル街。
「いやっふぅぅ!!!!!!!!!!!!」

外界で彼が真っ先にしたこと。
親に連絡する?それとも体験談を神主に売る?いやいや、それはラーメンを食べることだった。
ふらりと入った寂れたラーメン屋。
その味に惚れ込んだ○○は大学へ復学することなく、弟子入り志願し今では自分の店を持っている。
少々頭の弱いバイトの女の子と何故か○○のみに敵意を向けるツンデレバイトと妻の覚子に囲まれなが幸せな生活を送っている。

「覚子、明日は定休日だし店の掃除もそこまでにして一緒に飲まねぇか?」
「貴方いやですよ。女房酔わせてどうする気?」
「そりゃぁ・・・・明るい家族計画さ!」
「いや~~~~~~~ん」
結婚以来、子供は授からなかったが○○は幸せだった・・・・


夫婦布団から覚子は音を立てずに起き上った。
亜麻色の髪は紫色の変わり、その胸には一つ目がついた球体が繋がっている。
「○○さんは寝ましたね・・・・」
そして、そっと「店」の奥を開ける。

石作りの大広間

荘厳なステンドグラス

そこは彼、○○が逃げ出したと思い込んでいる「地霊殿」だった。

帰還前日彼は「覚」に計画を読まれないように酒を飲み泥酔した。
しかし、○○は知らなかった。
覚が夢をも覗き見ることができることを・・・
計画を知った覚は計画そのものを潰すのではなく、その夢を現実と思わせた。
○○の夢にあるラーメン屋を地霊殿に秘密裏に建設し、バイトとしてややチョイスに難があるが空とお燐を用意した。

「でも嬉しかったわ。夢の中でも私を愛してくれて・・・・。」
覚は時期を見計らって髪色を変え、第三の目を隠し○○の前に現れた。
そして○○は覚の狙い通りに恋に落ち、夫婦の契りを結んだ。
全ては夢と同じであることに不信感を抱かぬままに。


その胸に覚と同じ第三の目が鎮座していることを知らずに、○○は穏やかに寝息を立ている。
その目は幸せな夢を見ているかのごとく閉じられていた。

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最終更新:2011年08月29日 14:54