「ねぇ、あなた……起きてる?」
 夜も更けた頃、顔を洗っているとノックの音が聞こえた。
 ドアを開けると、其処にはレティの姿があり、
 自分を見ると少し照れくさそうに、にっこりと笑ってみせた。
「今夜は一段と冷えるみたい。
 ……また、目が覚めちゃった」
 冬も終わったというのに、急激に冷えた夜の日は、彼女はこうしてやってくる。
 目が覚めた、というのも半分は建前の様に思えた。
「今日もきっと、寒くなるわ。だから、いつもの様に……」


 レティはさっさと布団に潜ると、自分を見つめたまま、待ち続ける。
 ……寝る準備を整えていると、いつもの様に鳥肌が立ってきた。
「……。
   ……。
     まだ……?」
 家の中だというのに、凍えてしまいそうになる。
 寝巻きを着ている途中、それを投げ出すと、レティの居る布団へと飛びこんだ。

 ……あたたかい。


「……遅いわよ」
 レティは自分を抱き寄せると、少し驚いた様な顔をする。
「あら……上は何も着てないのね。
 こんなに寒いのに、風邪を引いたらどうするのよ」
 そうして少しもぞもぞとして離れると、すぐにまた、肌を重ねた。
「それならこうして……もっとあたたかくなるように、しないとね」
 レティも服を脱いだらしく、柔らかい感触が伝わってくる。

 少し恥ずかしくなり、レティと距離を取ろうとすると、
 背中をなぞるような冷たさに襲われる。

「やっ……離さないで」
 レティを少しでも離す度、冷気の様なものに襲われてしまう。
「あなたが居ないと、私はね。
 寒くて、寒くて、眠れないの。

 本当は何時だって、一緒に居たい」
 彼女の傍へと体を寄せると、レティは自分の手を取った。
「でも無理だって分かってる。
 ……だからこうやって、あなたに会える日には。

 私の気持ち……分かって欲しいの。

 こうやって、私を手離したら」
 レティが手を離すと、温もりが無かったかのように消えてゆく。
「あなたは凍えてしまいそうで、とても眠れはしないでしょう?

 ……私だって。

 私も、あなたが居ないと眠れない」
 再び手を取ると、レティは胸に顔を埋めながら。
「眠るまでいいの……壊れるくらい、強く抱きしめてて」
 震えるように、そう言った。


 目が覚める頃に、彼女の姿は無い。
 朝食と置手紙を用意して、出て行ったようだ。

 手紙には、こう一言
『早く冬になるといいね』
 と。


 ……そしてまた、その夜も。

 酷く寒い夜だった。

 レティは何時もよりも頬を赤らめながら、部屋へと入る。

 自分を、押し倒すようにして。

「今日はその……大丈夫な、日だったから。

 私が暖めて、眠らせてあげる……ね?」

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最終更新:2015年05月06日 20:59