幻想郷に自ら留まるという選択をした彼。
文明レベル、技術レベル、生活レベル、殆どが外界に劣るこの世界にわざわざ残りたいとは、面白いやつ。
――そう思っていたのだが、どうやら彼の決断には色恋沙汰が関係していたらしい。

命蓮寺。人妖平等を謳う大魔法使い。
どういうわけか、聖白蓮と外来人の彼は、出会ってからとても短い期間にゴールイン。
幸せいっぱいらしかった。
めでたい話だが……どこか、きな臭い。記者としての嗅覚がそう感じ取って調べてみると、中々に面白い事態が明らかになった。


まず、幻想郷に迷い込んだばかりの彼を聖白蓮が保護。
そこで彼女は、亡き弟の面影を感じたそうだ。
出会ったばありの赤の他人とは思えない程の愛情を注ぐ彼女。
彼はそれに若干引きながらも、見ず知らずの土地で献身的に接してくれる彼女に惹かれていく。

これだけならまだ普通の話だ。問題なのはここから。

――自分は、彼を見ているのだろうか。それとも彼の背後の弟を見ているのだろうか。
そんな葛藤が彼女の中に生まれ、迷いが生じたのは彼が命蓮寺に居候してから一ヶ月が経ったころ。

その隙を見逃さなかったのが、同じ命蓮寺の面々である。


ネズミも、入道を従える尼も、亡霊船長も、毘沙門天も、正体不明の怪物も。
信じがたいことに、皆が皆、彼に惹かれていた。
特に亡霊船長。彼に生前の恋人の面影を感じていたそうな。容姿ではなく、雰囲気が似ているらしい。

さてさて、大ボスの大魔法使いと違って自重の効かない面々。
互いに牽制し合うどころか、スペルカードルールをぶっち切りで無視した流血沙汰が繰り広げられることがあった。
タチが悪いのは、聖以外にそれを止めるものがいなかったこと。
幸いなのは、彼を傷つけたくは無いと考えて、その決闘が誰にも被害が届かない上空で行われていたこと。

このままでは人妖平等どころではない。今はまだ巻き込まれていないが、このままでは彼にも被害が及ぶかもしれない。
そう結論を出した聖白蓮。彼を自分の部屋に招き、己の胸の内を全てさらけ出した。

弟の面影を重ねていたこと。それでも一人の男性として愛していること。
外の世界よりも、幻想郷を選んで欲しいということ。

結果として、彼はそれを受け入れた。
そうして発表される人間と大魔法使いの婚約。
命蓮寺の面々はあくまで彼の幸せを第一に考えているので、表立って反発することはなかったようだ。
ただ、「少しだけ」寺の雰囲気は以前よりもギスギスしているらしい。

一部のものは、これが妖怪と人間の架け橋になると喜び。
一部のものは、隙を見つけて彼を寝取ってやろうと息巻き。
残りの大多数は、宴会ができる、酒が飲めるとはしゃいでいた。

一時期はパワーバランスが崩壊するかもしれないと危ぶまれた命蓮寺と人里周辺。
しかしここは幻想郷。のど元過ぎればこんなもんである。

記事を纏めながら、文は宴会に持って行く酒のことを考えていた。

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最終更新:2011年11月26日 09:34