布都/12スレ/473 504 562
霊廟組の爛れた内情 導士○○の過去


寝所の中、○○は魘される。

「止めて、ください……布都様、屠自古様……!!」

幼い頃から住んでいた物部一族のお屋敷。
傍系である自分がお仕えする筈だったお屋敷が、真っ赤に染まっていく。

倒れている使用人達、物部に仕える者達、そして物部に連なる血族達。

「そやつはやはり、生かすのですね布都殿」
「勿論だとも。あの御方の計画を実行に移すためには、物部の財力と貯め込まれた道具が必要。
大方の目的は達したのだ。我の我が儘を少し通してもよかろ?」
「……はぁ、あなたは何時も我が儘ですけどね。いいでしょう……心は操るのですか?」
「操るなんてとんでもない。
青蛾の術を持てば確かに上辺は手に入るであろう。だが、我は○○そのものが欲しいのだ。
身体だけではない。心だけでもない。全て、全部欲しい」
「……理解しかねます。あの御方の計画や、仙術を手に入れる事により人を超える企てに比べれば優劣は解りきった事ですのに」
「……」

屠自古に見えず、呆けたままの○○にはハッキリ見えた布都の顔。
あれはまさしく激昂の顔だった。
屠自古もこの時点では解らなかっただろう。
ただ一言。布都の行いを軽んじる発言で己の身を幽霊に留めさせられるとは。

蘇我氏を唆し、己の一族を○○を除いて滅ぼした物部布都はその財を自分の主君に献げた。
そして○○は導術を学ばされ、神子一派へ忠誠と献身を求められた。
身寄りが無くなり、彼らの後を追う事も、身を滅ぼす覚悟で復讐する事も出来なかった。
元々○○は布都を敬愛していたし、神子への敬服の念も抱いていた。
2つの相反する感情に挟まれたまま、○○は神子の計画へ参加する事となった。

霊廟を閉ざす前日。○○は施術を終えた布都に問うた。
何故、自分の心を操らなかったのかと。私が貴女に復讐する可能性を考えなかったのかと。
あの日に両親を殺された自分が、貴女達を憎むと考えるのが当然。
なのに、何故何もしなかったのかと。

○○は布都に抱き締められた。

「○○……尸解仙として復活したら、お主の好きなように我に感情をぶつけよ」
「……な、何を?」
「死ねぬのであれば、お前の憎しみも怒りも、我の仕打ちに憤る猛りを受けても我は一向に構わない。
いつものような気遣いも無く、暴徒のように我を犯せばよい。お前の住むべき場所だった所を奪い、お前を我がモノにしたのは我だ。
○○ぅ……」

布都の掌が、○○の両頬を挟む。
隠しきれないほどの感情が、○○を見据える。

「○○、お主のものであれば、怒りでも、憎しみでも、暴力でも、情欲でも、全て受け止められる。
○○、お主が居ればよい。お主が我が傍に有ればよい。○○、我が所業の全ては、お主の……」

そこで悪夢は覚めた。
汗を拭いつつ、真横を見る。
まんじりと自分を見詰め続ける、布都が横たわっていた。
良かった。何時も通りだ。○○は大きく息を付き、そのまま布団に身を沈める。
布都が身体にしがみつき、何やらささやきかけてくるのを夢見ながら、○○の意識はまた落ちたのだった……。

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最終更新:2013年01月08日 14:32