姿見の前で私は裸になる
赤と青の羽、短く切り揃えられた黒髪、色素の薄い肌
女とも男ともつかない私の顔 
これは私の顔?
それともそう思い込んでいるだけ?
冷たい硝子の中の私は答えてくれない
○○は教えてくれるかな?本当の私を


「ぬえぇぇ~ん。私は○○にどう見えているのかな?」
「なんじゃいぬえっこ?いい年になって恋煩いかの」
「・・・・うん」
「相手はこの前、言うとった○○という青年かえ?」
「・・・・もういい」
「冗談じゃよ冗談!ワシにはいつもと変わらないぬえじゃがな」
「本当?じゃあ私はどう見えているの?」

私はマミゾウおばちゃんのもふもふ尻尾をもふりながら全てを話した。

「正体をわからなくさせる能力の所為で自分以外の人間にどう見えているのか不安か・・・」
「・・・・・うん」
「ならその能力を使っていつもと違う姿で○○という青年に会ってみたらどうじゃ?」
「ぬえ?」
「まあ聞け。能力を使って似てもにつかん姿で○○に会って、そっと自然に自分の事を聞くのじゃ。そうすれば完璧じゃろ?」
「やっぱり妖怪の切り札は違う~」
「うれしいことを言ってくれるのう!飴ちゃんやろ。じゃが、変化の術は多用すると自分が喰われることになるから気をつけるんじゃぞ?」


姿見の中には肩までの長髪を持った大人の女性がいた
魔法の森の道具屋から入手した白いブラウスとタイトスカートに身を包む
こんなにうまくいくとは思わなかった
誰も私をぬえと分かるものは居ない
白蓮が人里の信者と勘違いしたのは傑作だった


人里で○○は貸本屋を営んでいる。
○○と出会ったのは○○のところにあるディックという人の「ヴァリス」という宗教書を借りに行った時だ。
私が本棚の奥にある本を取ろうした時、本棚の本が雪崩落ちてきてしまった。

「あぶない!」

○○は身を挺して私を守ってくれた。
それ以来、私は○○の貸本屋に手伝いに行ったり一緒に無縁塚で本を探しに行ったりした。
男の人と此処まで親密になることはなかった。
そうしていくうちに不安になってきたんだ・・・・
自分がどう見えているのかを。


○○は私をぬえではなく一人の客として歓迎してくれた。
姿が異なる安心感から○○に親密なスキンシップをすることができた。
私が耳に息を吹きかけたり、背中に胸を当てたりする度に○○は顔を赤らめる。
ふふっかわいいわ・・・


この前のことだ
私が食卓に着いた時にムラサが言った
お前誰だって
部屋に戻ると鏡にはあの女がいた


今日だ今日で全てがわかる
○○が誰を愛しているかを知ることができる
さぁ私を選んでくれたらどんな御褒美が良いかしら?
私なら貴方の欲望を満足させてあげるわ



「どうして・・・・どうして○○が!」

目の前には心臓を貫かれ、糸の切れた人形のように動かない○○
ふと手を見る
手の中にはまだ鼓動を刻む心臓が握られたいた

「おぇぇぇぇっぇぇぇぇ!」

私はこみ上げるものを押さえられず、嘔吐を繰り返す
顔をあげると血に濡れた硝子の中であの女が笑っていた


~ コ・レ・デ・○○・ハ・ワタシ・ノ・モノ ~

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最終更新:2017年04月08日 04:53