ゴト師の呟き


「あなたが件の・・・・ご案内します」

ゴト師と聞いて何を想像する?
もともとゴト師ってぇのは、ゴタゴタを解決する奴らのことをそう呼んだ
まぁ、今じゃあまり大っぴらにできない仕事をする奴らの総称になっちまったが
見捨てられたモノ達が行きつく楽園 幻想郷
それでも因果ってやつで、俺は東京湾で水中花になるはめになった仕事をここでもやっている

「特殊清掃」

主に人死を坊さんに渡して、部屋の後始末をする仕事
ここ幻想郷では妖怪に喰われる人間も多くいる
大概は骨以外は綺麗にしてくれるから俺のようなゴト師が呼ばれることはあまりない
だが別の意味で綺麗にしなければならない場合もある
寺や神社のような客商売の場合は特に・・・

「こいつは・・・・・」

引き裂かれた男物の衣服
血が滲む縄
おおよそ男一人が出せる量を超えた白い飛沫
そして蘭の花の匂いに似た男女和合の残り香

「・・・この部屋の住人は?」

「今、部下のナズーリンが手下総出で探しに出ています・・・」

聞くと、この部屋の住人寅丸星は寺男として奉公していた○○という男性に恋心を抱いたあげく、この凶行におよんだらしい

「星は・・・戻ってきますか?」

「生憎と素人探偵は死にかかってから辞めていてな・・・」

「そうですか・・・・」

恐らく件の彼女は戻ってこないだろう
僧籍にある人間が大切にする僧衣が脱ぎ棄てられ、宝塔も白濁した飛沫に汚れていた

「舐めても大丈夫なくらいに綺麗にしておくさ」

俺はマスクを外し、折りたたまれた長い舌を出す

妖怪 垢舐め

それが俺
幻想入りした人間はそのまま外界へ戻る手筈になるのだが、中には許されない場合もある
能力持ちの人間
妖怪と番になっちまった人間
そして妖怪になった人間

俺の顔を見たクライアントが不快な顔をする

「冗談だ。俺が垢舐めでも本当に舐めたりしない」

手なれた手つきで仕事道具を広げる

「このことはくれぐれも内密に」

「ああ。偽装用の抹香も準備してある」


幻想郷の地下
表に居られなくなったモノ達のもう一つの楽園
地霊殿
その一室

「今日もお疲れの様ですね」

ピンク髪の少女 古明地 さとりが俺の雇い主兼飼い主
妖怪化し行くあてのなくなった俺を拾ってくれた人物

「今日の給金は物納じゃなかったぜ」

俺が給金を渡そうとするがさとりは断る

「あなたとの取り決めには金銭は入っていないわ。だからそれは好きにしてかまいません」

「家賃と仲介料だろ?」

「私はあなたのことを使用人ともペットとも思っていません!・・・・妹も」

なあ人間を妖怪にすることは難しいと思うか?
簡単だ
強い妖怪と交わったり
妖怪の肉を食べたり
妖怪と一緒に生活したり

笑えるよな
幻想入りして以来、俺は目に見えない同居人と一緒に外来人長屋で生活してきたんだぜ?
さとりの妹 古明地 こいしと、な

「夕食を一緒にどうですか?今日は私がっ」

「悪りぃ、遅くなったから外で食べてきた」

「そう・・・ですか」


フラグは早めにへし折るに限る
とりあえず「俺自身」の後始末を自分でするのは遠慮したい

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最終更新:2012年07月17日 00:56