予告通り書いたどー

一人の人間が迷いこんできた。芳香と戦っているのを見かねて私が一旦保護している。
話を聞くとこの世界から抜けだしたい、と願いさ迷ううちにここにきていたのだとか。
ふむ…あのお方の力に反応したのかしら?
あのお方はそんな能力ないけどね。
そんな事を考えながら私は微笑んだ。
「もう遅いですし、私が一晩面倒をみましょう。」
すると男は喜んだ。ありがとう、と。
その眩しい笑顔を横目に、私は壁に穴を開けた。

「どこからいらっしゃったのです?」
「…ここではないところだ。3ヶ月前に迷い込んだのだが…里の人は冷たいんだ。」
この人間、里では受け入れて貰えなかったらしい。よく3ヶ月も生き延びたものだ。
とりあえず温かな食事をもっていき、寝床を用意する。
私は違和感を感じた。
しかし、その違和感に気付けずに私は眠りについた。

次の日。
その男に名前を聞いた。昨日は色々あって聞けなかったからだ。
その男は○○といった。
その一挙一動に何かを感じた。
こう…何か、思いだすような事。
何かしら?
そう自問自答していると○○がお礼に、と旅の話してくれた。
それは、本当に体験しているかのような高揚感、そしてその熱意。
私はすっかりその話の虜になった。
それではと去ろうとする○○を引き留める。
「あの、…よろしければここに住みません?」
○○はきょとん、としたあといいや、迷惑がかかる、と断った。
私が必死に願うと了承してくれたが。
○○。
なかなかつかえそうな男だ。

「食事ですよ~」
私は○○に呼びかける。
今回は○○が住むかわりに、と里で買って来た材料もあるので少々華やかだ。
芳香にはあげたし、あとは○○とたべるだけ。
○○が料理を作りたい、と言ったので任せた。
…おかずを一品。
私がそれ以外を作る。
○○がおかずを運んできて、食事になった。
…美味!
「美味しいわ!○○、凄い凄い!」
「ありがとうございます。えぇと…」
「青娥でいいわ。」
そんな感じで食事を終えた。

寝る前にお話をしてくれる○○。
それはいつか見たような光景。

こんな感じで1日は過ぎる。そして1ヶ月が過ぎた。
私は○○に好意を抱いた。誉め言葉。日々の新しい刺激。全てをくれるのは○○だった。
芳香に門は任せてある、心配は無い。
○○はまた新しい話を聞かせてくれる。
私は耳を傾ける。
そこには、邪仙と呼ばれる彼女ではなく、一人の少女がいた。

ちくりちくりと、その記憶は蘇る。
それは彼女が、○○がとある少女と話しているのを目撃したときだった。



○○が里へ買い物に行ったっきり帰って来ない。
何かあったのだろうか?
○○はなかなか使える人間。もしかしたら…
私は最悪の結末を予想し、身震いした。
急げ、里へ。

里の団子屋の前で○○はある少女と談笑していた。
少女の頬は寒さからか紅色に染まっていた。
白い髪、赤いリボン。
…○○の隣に居る。それだけで私の心は荒れ狂った。
「○○?」
私が呼びかけると、その少女と○○は振り返った。
「あぁ、青娥。」
「遅い。さぁ、夕飯の支度をしないと。」
私が話している間、その少女は不快、といわんばかりに睨みつけてきた。
私は嘲笑うように少女を見下す。
「青娥。この子は藤原妹紅さん。」
何を思ったのか○○はその妹紅とかいうのを紹介してきた。
どうも、と頭を下げる妹紅。
私は、
「さようなら。もう会わないといいのですけれど。」
と残した。

家に戻る。
あの少女を見て、嫉妬以外の感情を抱いた。
そして、ようやく心の中の疑問が解けつつあった。
彼女は悩みに悩みぬいて、辿り着いた。

○○は、私の夫に似ている。
随分昔に私が欺いたあの人。うりふたつなのだ。
○○はあの人の生まれ変わりだ。何故、今迄気付かなかったのか?
彼女は自ら仙人になるために不必要な記憶に封をしていたから。
邪仙は、新たな疑問を見いだす。
ー私は、無意識に夫に似ている○○に惹かれた。なら私が真に愛しているのは、○○ではなく、私が裏切ってしまったあの人?ー

それから青娥は○○と少し距離をおくことにした。真に好きなのは誰か、知る為。
そんなことをしている間に妹紅も○○に近づいていた。

青娥はまた見た。○○があの女と話しているのを。また、まただ。
わかった。私は○○が大好きだ。激情に駆られるくらい。
もうあいつを滅っするしかない。
しかし、青娥が調べていくうちに大変な事がわかった。あの女は蓬莱人なのだ。
永遠に生き続ける人間。
…私はいずれ死に至る。不老ではあっても不死ではないから。
…私にできて、あの女にできないこと。
青娥は、危険な賭をしようとしていた。

青娥は○○がまた遅くなったので、里に出た。
そこで、みたのは。
○○とあの女が、抱き合っている所。
あの女は…あの、あいつは。
…はははは。あはははは。
青娥は、壊れた。

○○を呼び出す。次の日の夜だった。景色のいい場所で私は○○と向かい合う。
「好きです。」
○○は呆ける。そうよね、あの女が好きなのよね。
でもあの女の事はいつか忘れるでしょう?
なら、私はー。
ナイフで思い切り首を切る。
鮮血が舞い、○○の顔を赤く飾っていく。
ああもう、そんなかおしないの。
わたしはあなたをあいしてた。わすれないでね。
私を確かに○○の心に刻んだ。
私は勝ち誇った笑みを浮かべー…息絶えた。

「なん、で。ど、して。」
○○は青娥を愛していた。あの妹紅に好かれ、襲われたのは誤算だったが。

壊れた少女を抱きしめ、そうして時は過ぎー…
少女の傍らにもうひとつの亡骸が寄り添うようになった。

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最終更新:2012年08月05日 14:43