過去の作品群を見て直球過ぎると思い、ちょっと変化球を投げてみる。指くじいたなう。


古明地さとりは、目の前にいる最近増えた同居人と共に紅茶を飲んでいた。
外来人である青年の○○、人の良い彼は手先が器用で美味しい茶菓子を彼女は楽しめた。
しかし、この地霊殿の主である彼女は正直、心が乱れていた。

彼女は、○○の事が好きである。愛している。
忌み嫌われ避けられて来た、故に妹とペットとしか関われずに居た彼女を受け入れてくれた。
彼女の能力を聞いても驚きはしても拒絶はしなかった。ただ、素直に自分を受け入れてくれた。
これでさとりが惚れぬ訳が無かった。過去の傷を何百年も密かに引き摺った彼女ならば尚更。
自分の気持ちを告白して受け入れて貰い、己の身を委ねた。さとりはとても幸せだろう。だったろう。
しかし、頂点があれば下がるのも道理。見た目は○○との幸せで穏やかな生活を続けているさとりであるが、内面は全く別だった。

○○は絶えず自分を愛してくれているだろうか。○○が他の女に意識を取られてないだろうか。
さとりは○○と顔を合わせる度に心を覗く。そして不義が無い事に安堵しても不安は無くならない。
○○を狙う女が居たらどうしよう。○○は穏和で人柄が良く、誰にでも好かれやすい好青年だ。
勘違いした女に言い寄られる可能性は充分ある。否、○○は何とも思っていないのに勝手に好いている図々しい雌が居るに違いない。

ああ、○○を外に出すのはもう止めた方が良いかしら。
○○の趣味(珍品の収集)は止めたくないけど、○○が他の女と接触しただけでも頭が煮えくり返る。
里の骨董品店で店番をしていた小娘が品物の受け渡しの時に○○と手が触れ、赤面した記憶を見た時には脳内が真っ赤になった。
○○の世間体を考え、お燐にこっそり攫わせて地獄の窯に放り込ませようと考えたのを必死に自重した位なのに。
○○、ああ、○○、どうして貴方は私の心をかき乱すの。どうして貴方の心は誠実そのもので私を真摯に愛してくれるのにどうして、ねぇどうしてここまで私を心狂おしくさせるの!?

○○は、小刻みに震え紅茶を零すさとりの様子に首を傾げ。
二人をひっそりと見守っていた妹の口には嘲笑が浮かんでいた。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2012年08月05日 18:36