外来人である○○の家では、最近になってポルターガイスト現象が発生するようになっていた。
借家であるのだが、前の入居者が自害したなどという事はない。
だが○○が在宅していると、気分がおかしくなる奇怪な音がしたり物が勝手に動きだすといった事態が起こるのだ。
幻想郷にきて大分経つとはいえ、元々オカルト事象に関して全く造詣が無い彼はほとほと困り果ててしまった。
しかし、どこからその話を聞きつけたのか、女友達であるリリカ・プリズムリバーがそれを解決してやると名乗り出た。
その胸は平坦であった。

「ほ、本当に大丈夫なのですか、リリカさん! あの変な音とかを止められるんですか!」

「大丈夫だよ、問題ない。私は騒霊だから音に詳しいんだ」

そうして2者は今正に○○宅にいるのである。
…そういった事象は妖精の悪戯ではないか? そう、実際その通りであるのだ。だが、実はそれだけではない。
高い妖怪注意力を持つ者ならば分かるが、○○の住宅内にいるのは○○、リリカ、そして安っぽい楽器を手にして能力を用い隠れている光の三妖精の5名。
…やはり妖精の所為だったではないか? 否。
さらに高い妖怪注意力を持つ者ならば、光の三妖精が揃ってリリカに恐怖に満ちた奴隷めいた視線を投げかけているのが解るだろう。
高い妖怪分析力をお持ちの方はこれでお分かりだろう! そう、全てはリリカが○○からの好意を得んとして計画した自作自演行為!
ブッダの掌を彷徨うマジックモンキーめいてリリカの思い通りなのだ!
外界の人間のオカルトに対する無知さを利用したリリカの、なんたる狡知か!
周囲の事物を利用し、自身に有利な状況を作り出す! これぞフーリンカザンである!
そしてリリカが○○に気付かれぬよう妖精達にサインを出す! 途端に鳴り響く奇怪な音!
ブーンブンブン…ブーンブブン…パワリオワー!
部屋中で反響する楽器の音! 思わず嘔吐を催す程不快感を煽る音だ! 音楽と呼ぶ事すら憚られる! コワイ!

「アイエエエエ! 変な音だ! こんなのテストに出ないよぉ!」

(○○カワイイヤッター…)

今にも失禁せんばかりに怯える○○にしがみつかれ、サディストめかした満面の笑みを浮かべるリリカ。
これには協力させられている妖精達も苦笑いだ。ヤンナルネ!
リリカは抱きついて震えている○○を優しく抱きしめ返し、サディストの笑みを優しげな微笑みに変える。

「大丈夫だよ○○、ほら見てて? イヤーッ!」

そして、おお、なんたる事か!? 突如幽霊力を片手に集め、スリケンめいて弾幕を発射したのだ!
だがこれもまたリリカの計画した通りの展開!

「アイエッ…アバーッ!?」

弾幕はサニーミルクの顔面に直撃! 弾幕を受けた妖精はその場に昏倒する!

「アイエエエエ幼女!? もしかして妖精!?」

叫ぶ○○! 更に発射される弾幕!

「オボボボ」

スターサファイアの顔面に直撃! 弾幕を受けた妖精はその場に昏倒する!

「また妖精!? 妖精ナンデ!?」

叫ぶ○○! 更に発射される弾幕!

「アレーッ!?」

ルナチャイルドの顔面に直撃! 弾幕を受けた妖精はその場に昏倒する! これで隠れていた三妖精の姿が露わとなった!
打ち合わせではこれで目を覚ました妖精達が悪戯をしていたと○○に謝罪し、それで手打ちにする方向に持っていくという話であった。
だが、おお、ナムアミダブツ! リリカの眼を見よ! あの邪悪なる、障害となりそうな事物を一切の容赦無く排除する覚悟を湛えた眼を!
倒れた妖精達へ向けて、リリカの手から更に弾幕が放たれる! それもノロイめいた、弾幕ごっこに使ってはならぬ功性幽霊力で作られた弾だ!
なんたる事か! リリカは三妖精を一回休みの状態にして、口封じをする心算なのだ!
KABOOM! KABOOM! KABOOM!

「「「サヨナラ!」」」

ノロイ弾を受けた三妖精はネギトロめいた物体を残し爆発四散! 一回休みだ!
眼の前で起きたショッキングな光景に絶句する○○に、依然として優しげに微笑んだままリリカが告げる。

「ほら解決、私に任せて良かったでしょう?」

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数刻後、○○に向けていた笑顔とはまるで別人めかして冷酷な無表情のリリカがいた。

(失敗しちゃったかなぁ…次は姉さん達をあのネタで脅して使ってみようか? それとも寺子屋の先生を…)

最後に妖精達をその場で始末してしまったのが間違いであった。その所為で○○はドン引きしてしまったのである。
アブハチトラズを狙った心算が、虻蜂捕らずになってしまったのである。
だが彼女は諦めない。その胸の内で想いを巡らせ、更なる邪悪な策を練っていく。

(絶対諦めないよ、○○。君のお嫁さんになっていいのは私だけなんだからさ)

心の中で彼への想いを呟き、自然と笑顔になるリリカ。その様は騒霊というより悪霊と呼ぶ方が相応しかった。
最終更新:2017年06月04日 21:39