秋に囚われた男


秋、それは実りの季節
夏の陽気を忘れ、人々に実りを与える

秋、それは凪の季節
冬の厳しさが猶予され、人々に束の間の平穏を与える

秋、それは・・・


幻想郷
おおよそ近代産業が存在しない、この場所では多くの人間は農作業に従事している。
牧歌的ではあるが、しかし高性能な農機具が存在しない幻想郷では全ては手作業。
土に触れたことのない現代人、つまり外来人にとっては非常に重作業だ。
故に彼らは生きていくために危険度の高い職業に就かざるを得なくなる。
彼、○○もその一人だ。

炭焼き

明治頃に外界から隔離された幻想郷では、炭が主な燃料となっている。
そのため、○○は炭焼き職人として働いていた。
危険は多い。
まず、炭の原材料になる良質な木材は妖怪の山にしかない。
何の加護も能力の無い人間は無力。
良くて半生、悪くて妖怪の餌になることが多い。
彼らは最も原始的で、最も野蛮な方法をとった。
妖怪の山を仕切る天狗などの妖怪に外来人達を婿入りさせる・・・・つまりは生贄として差し出したのだ。
プライドの高い天狗が人間、しかも男性に身を委ねるのか?
それには妖怪の山の上層部の意向が見え隠れする。
切っ掛けは外界から移住してきた神々の存在があった。
半神半人の現人神。
人間の力と神としての力を持つ、規定外の種族。
天狗はその力を恐れると同時に強い関心を持った。
今の幻想郷は理想的な環境だ。
しかし、種族が天狗なら天狗に、河童なら河童にとそれぞれが固定化される。
「イレギュラー」が存在しないのだ。
種族として固定化された存在に未来はない。
あるのは緩やかな絶滅。
妖怪よりも力がある神と云えども、外界から移住する羽目になったことがそれを如実に語っている。
他の種族が消え去っていくなか、半妖という手駒がもたらす利益はプライドすら凌駕する。
外来人達はそれにうってつけなのだ。



妖怪の山の麓の門をくぐる。
○○はそこに見知った顔を見つけた。

「貴様!通行証明を提示しろ!」
「ははっ!天狗様!これにございます!」

平服し、木の板を若い男の天狗に渡す。

「ツル(賄賂)が見当たらんな~。ちょっと番所に来い!」
「許してくだせぇ~近頃は炭の売れ行きがかんばしくなくて・・・・」
「ならん!」

頭襟を付けた若い天狗は○○の首根っこを掴むと番所に引きずっていく。
その姿を犬耳を付けた若い女の天狗が笑みを浮かべながら見ていた。

「すまんな・・・○○」
「いいさ。お前も仕事で大変だってくらいわかっているから」
「俺も一応天狗として見られているからな。許してくれ」
「あそこにいたのは□□のカミサンか?」
「ああ、俺の上司で俺の監視役だ。今も見ている」
「許してくだせぇ~天狗様」
「ここでは演技しなくてもいいぞ○○。ここは結界を張ってあるからな」
「もうそこまで・・・」
「哨戒科課程を修了したからな。自分じゃ人間のままだって思っているが・・・・」
「こうして俺と話をしている以上、□□だって人間だよ」
「そう思ってくれるのは○○だけさ。先日、▽▽に逢ったんだ・・・」
「河童になったアイツか」
「俺はキセルを修理に出しに行っただけだった。でもアイツは終始敬語だった・・・・アイツの中じゃもう俺は天狗様なんだ」
「□□・・・・」
「遅くなったな・・・・。じゃあ行くか?」
「ああ・・・痛くしないでくれ」
「それは約束しかねる」

番所を突き破って○○が出てくる

「こんな安物の簪がツルだと?舐めるな!」
「許してくだせぇ~許してくだせぇ~」

□□が六尺棒を振り上げる

「□□三等兵!止めなさい」
「はっ!犬走一尉殿!」

犬走と呼ばれた天狗が放り投げた簪を手に取る。

「綺麗な朱色・・・これ貰っていいかしら?」

彼女の口調は柔らかいが、侮蔑が滲みだしていた。

「差し上げます!だから通してくだせぇ!」
「いいわ。通行を許可します」
「ありがとうごぜぇます!」
「でも、帰りに炭を奉納しなさい」
「へへ~!」

炭焼き小屋へ向かう○○がそっと振り向くと、先ほどの簪を付けた女の天狗と□□が一緒に番所に入るところだった。

「結界はつまりそういう用途のためか・・・・」



妖怪の山 中腹
○○の炭焼き小屋

そこに一人の少女が待っていた。
紅いワンピースと紅葉を象った髪飾りをつけた豊穣の神 秋静葉だ。

「○○遅かったわね。妹の穣子は元気?」
「ああ、元気さ。今日は麓で天狗に呼び止められて・・・」

不意に○○の唇に静葉の唇が重なる。
そしてそのまま床に押し倒される。

「アノ子の味がするわ・・・」

○○の内股に濡れそぼった布の感触が伝わる。
そしてそのまま自慰をするように、前後に擦り付け始めた

「ねぇ感じる?私こんなにも濡れて止まらないの。だから・・・貴方を頂戴?」

静葉が自らのワンピースにその白い指を入れ、下着としての用を為していないソレを破り捨てる
○○は彼女の激情に身を委ねるしかなかった。

一人一人と、同僚の友人たちが女妖達に婿入りしていき、やがて○○の番が来た。
しかし彼を見初めたのは妖怪ではなかった。
妖怪の山に住む八百万の神 秋姉妹だった。
姉妹が揃って○○に求婚したのだ。
そして・・・・

大飢饉が起きた。

まがりなりにも豊穣の神が内輪もめをしたのだ。
むしろ、その程度に収まったのが奇跡だといえる。
解決案は二人を引き離し、○○が通い妻、もとい通い夫になることだった。

炭焼きの期間は秋 静葉と過ごし、山を下りたら妹の秋 穣子と過ごす。

神という、妖怪の山の利益にはならないモノと番った○○の立場は悪い。
しかし、それを承知で彼女達は○○に通い夫になることを強いた。
弱く、彼女達の庇護なしでは生きていけない「か弱い存在」であると○○に知らしめるために・・・

永遠の秋に囚われた彼は、冬に怯えながら春を見ず夏の陽気も知らない・・・・

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最終更新:2013年04月01日 20:07