昔から穀物や果物には邪悪な霊気を祓う力があると考えらていた。
中でも豆は「魔滅」とあて、【魔を滅する力がある】があるとされ邪気の生じやすい節分の時期に撒かれるようになったとか。
人外が沢山居る幻想郷にも当然、節分の風習もあれば鬼も居る。
それが故に、知り合いの萃香や勇儀さんが「避難」と言う名目でウチ酒盛りに来た。
時期が時期だけに、ウチも豆を使った食べ物しかなく酒の肴にはキツいんじゃないかと思っていたが…。
良い具材が手に入らないから納豆を入れた気分だけは【恵方巻】実質、納豆巻きを今年の恵方を向いて食べていると。
「ちょ…ちょっと、萃香。自分が食べている反対側から食べてないで…はむ、はむ、クチュ…クチュ…」
一気に詰め寄って来て無理矢理キスから口の中を蹂躙された。
「ぷはぁ…ふふっ。〇〇の味がして美味しかったよ。」
少し呆れていると、今度は勇儀さんが炒り豆を人差し指と中指と親指で軽く摘まみ口元へ差し出してきた。
「食べな、〇〇。」
素直に勇儀さんの指ごと口の中に入れ、豆を食べて離すと勇儀さんは満足したように僕の唾液がついた指で再び炒り豆を摘み食べた。
「あぁ…確かに〇〇の味がすると美味いよ。」
…………。(いや、おかしくない。おかしくないよ。「邪気」じゃない寧ろ「無邪気」な笑顔をしているね…うん。)
ふと思った疑問に〇〇は自問自答し、さらに考えた。
(僕…愛されているんだよね。向こうに居る時、安いドラマの台詞とかでよく聞いたなぁ。『愛は全てを越える。』って。だからかなぁ?二人が苦手な豆に何ともないみたいのは…。だからかなぁ?最近、妙に腕力や体力が異常についたり『額に違和感あるなぁ~』と思ってたら角が生えて、いつの間に人間やめて種族の壁を越えていたみたいだ。)
「だから、豆を食べたら口や喉が焼けるように痛むのは…。」
「ん?口の中が痛むなら消毒しようか〇〇?」
「喉が痛むなら、この酒を飲みな〇〇。『百薬の長』って言うだろ?」
鬼の笑い声が木霊して節分の夜は更けていく。
最終更新:2013年07月04日 11:15