きるも死ぬも、心が止まれば大して変わらない。

外界に帰る気も起きず、人里にも愛想が尽きた。
そうして目的もなく竹林に掘っ建て小屋を構えたのは、いつの日だったのか。

いつの間にやら何の希望も絶望も抱かなくなった俺は、いつ適当な妖怪に喰われても良いような腹づもりで日々を転がした。
欲望らしい欲望も、もはや無い。
死ぬまでの暇つぶし程度にしか、ここでの生活を捉えていなかった。

ここで知り合った妹紅と体だけの関係になったのも、やはり暇つぶしでしかなかった。
付け加えるなれば、それはお互いにとっての暇つぶしであったが。


そう、ただの暇つぶしなのだ。
一時の快楽に気をやってしまう間は、少なくとも、互いに余計な事を考えずにいられた。

生きている事を、暇つぶしと捉える余裕すら無くせる時間。
眠って思考をシャットアウトするような事と、俺達の関係は同じだった。

お互い、愛もクソも無い。
抱えた虚無の潰し合いをするには、互いに都合が良かっただけだ。


「不老不死なんて、死んでるのと大差ないよ。」


いつかの情事の後、あいつはそう吐き捨てて。
そして、笑いながら耳元で囁いた。


「だけど、あんたも似たようなものだ。」と。



例えば死んだ後にあの世に行ったとして、そこに話し相手などいるだろうか?

「苦痛ですら慣れるものさ。」と、いつか妹紅は言っていた。

やがて苦しみも、退屈と演技に変わるなんて事もありえるな、と。その時に思った。


今夜もまた、暇つぶしに体を重ねた。
布団で眠る妹紅に後戯もせず、俺は縁側で、呆然とタバコを吹かす。

やがて半箱吸い終えた所で、俺の肩にしなだれかかる腕を感じた。


「死んでるのと大差ないよ。生きてる事なんて。」


なら、どちらを選んでも結果は同じか?


「暇つぶしが、あるかないか。
あるのはどの道退屈なんだよ。それを潰せるか潰せないか。

……あんたも暇でしょう?だったらさ……。

私の暇つぶしの玩具になってよ。永遠に。」


腹を裂く音。
鮮血のにおい。

血の泡を吐きながら。
「酒の肴さ」と、妹紅は嗤ってそれを取り出した。


死ぬも生きるも、もはや俺達には色の失せた事。
ならば、永遠に暇つぶしを繰り返そうか。

退屈に染まったこいつは。
俺と言う暇つぶしの玩具を、手放す気は無いようだから。


それは俺にとっても、同じ事。


……ああ、まずい肝だことで。
酒の飲み過ぎじゃねえか?


「煩いな。」


その時見た妹紅の目は。
随分と、ご満悦なようだった。

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最終更新:2015年10月08日 23:19