「・・・やばい、迷った!」
俺は今、迷いの竹林にいる
しかも、道もまったく分からない。つまり迷子だ
まいったな・・・ここは妖怪も出るってのに

俺の名は○○。何の力も無い人間だ
仕事は、里の外への運搬や雑務をしてる
まあ、いわゆる何でも屋だ・・・相手を選ばなさすぎて人に疎まれてるが

そんな俺がなぜ迷いの竹林にいるかと言うと
半ば嫌がらせとして、薬の材料と書かれた等身大の袋2つを渡された
『ムカつくが、仕事だ。しかたない』
そう自分に言い聞かせながらここまで運んできた
・・・のだが、途中で迷子になった
力の無い奴は、[迷いの竹林で迷子=死]と考えた方がいい
これからどうしようかと思ったとき、後ろから物音が聞こえた
獣か低級妖怪が出たかと思い振り向くと、聞いたことのある女性の声が聞こえた
「あれ、こんな所で何してるんですか?○○さん」
よく見ると、永遠亭の兎の・・・
「え~と?冷麺だっけ?」
「鈴仙です!鈴仙・優曇華院・イナバです!」
「冗談だ、冗談。そう怒るなって」
お前の名前長いんだよ
「まったくもう・・・それより、なんでここにいるんですか?」
「いつものやつだ。後、ついでに筍取ろうかと・・・!」
そう話すと、鈴仙がだんだん怒り出してきた
「またですか!まったくあの人達は本当に何度言っても・・・
○○さんは悔しくないんですか!」
「いやそれは・・・」
もう慣れたしな・・・悲しいけど
「はぁ・・・もういいです。それより永遠亭に行きたいのなら、案内しますよ?」
「ほんとか?助かった!ありがとう!」
死因[迷子]とか洒落にならないしな
「い、いいからいきますよ!」
そういって少し早足で進んでいった
置いて行くなんてしないよな!
・・・しないよね?

「・・・よく持って来られたわね」
永遠亭の薬師 永林さんに呆れたような顔で言われた
「仕事だから仕方ないな」
「でも薬草の量、頼んだ分より多いわよ?
まあ、蓄えが増えるのはありがたいのだけど」
「ま、まじですか」
道理で異様に重いと思った!
そこまで俺が憎いか?里の人達よ・・・
「ああそれと、私からの依頼よ」
「ん?何だ?」
今なら、大体の無理難題は引き受けられそうだ
できるとは限らないが
「薬の整理を手伝って欲しいの」
「まあそれくらいはいいが・・・」
流石にやばい薬は勘弁だぞ?
「ふふ。なら今からお願いね?」
「はいはい、やりますよ」
少し疲れ気味に言いながら、永遠亭の中に入る・・・


「はあ、はあ。こんなに有るなんて聞いて無いぞ・・・?」
永林に頼まれてから数時間。あと四分の一という所までできた
ったく、ここの全ての資材があるって位あるじゃないか
「どうですか?終わりましたか・・・
って、凄く綺麗になってる!?」
「おう、鈴仙か・・・休憩か?あと少しだから待ってろ」
「いや十分ですよ!これくらいでいいです」
「いや、でも」
完全にやらないと、何でも屋としてのプライドが・・・
「それに!今帰らないと夜中に帰らないといけませんよ?」
「え?嘘だろ!」
「本当ですよ。さあ、どうします?」
鈴仙が、少しニヤ付いて行った
畜生、背に腹は変えられん
「じゃあ、帰るよ」
「はい!師匠には、私から言っておきます」
そのあと、ぼそりと『勝った!』という言葉を聞き逃さなかった
「調子に乗るなよ、うどんが」
そういって、鈴仙にでこピンする
「イタッ!と、とにかく行ってきます!」
そういって慌てて走っていった
「まったく、騒がしい奴だ」
まあ、それがあいつのいい所なのかもしれないが
そんなことを考えながら、里に帰った・・・

「はぁ~今日は疲れた。さっさと帰って寝よう
・・・っと、大事なこと忘れてた」
そうつぶやき進んでいくと、小さな商店が見える
「よう!景気は良いか?」
「ぼちぼちだよ、残念だが」
中からでてきたこいつは××。里で数少ない俺の味方だ
「米俵を、1俵か2俵くれ」
「はいはい、1俵ね」
「・・・××のケチ」
「ケチで結構。というか、二つも持ったらろくに動けない事分かってる?」
「俺は基本運び屋なんだがな・・・」
その方が後々楽なんだが、贅沢は言えないか
「はいはいそうですね。はい、米1表」
そういい、米俵を下にどさりと置く
「ありがとう!じゃあお代を」
「お代は良いよ」
「えっ」
・・・俺の耳は腐敗してるのか?
今、お代は良いって言ったような・・・
「な、なんで?」
「なんでって、いつもひいきして貰ってるし
今の状態じゃ辛そうだからね、返したいなら何時でもどうぞ。
あ、[僕が死んでから]とかは無しだよ?」
その時ぶわっと、俺の目から涙が出てきた
「あ、あびがどう!おかげヴぇ:;・@”!$%&’%:!」
「と、途中から何言ってるのか分かんない・・・
わっ!服で涙拭かないで!」
「うぇっく、ひっく。ありがとうなぁ・・・じゃ」
俺は出る前に、泣きじゃくったのが急に恥ずかしくなり、逃げるように走った

「はぁ、まったく・・・毎回あの急変には驚かされるよ
・・・また、来てくれるかな」


あぁ!恥ずかしい!大の男が泣きじゃくって!
恥ずかしい!今度行った時自分だけ気まずくなるよ絶対!
そんなことを考えてると回りからぼそぼそと声が聞こえる
『見ろよあいつ』『またあいつかよ』
『ちっ、見てるだけで気分が悪い』
『糞が、出てきゃいいのに。あんな寄生虫』
そんな言葉が聞こえ、心に突き刺さる
・・・そんな事言われても困るんだが
すると人ごみの中から子供が数人来る
「こんにちは!○○おにーちゃん!」
「おう!元気だな、お前ら!」
「うん!」
「○○にーちゃんは?」
「いつもと同じ、元気満点だ!」
そういって、かっこつけたポーズをしてみる
「あはは、変なの!」
「ええっ!」
結構自身あったんだがな・・・
こいつらは、寺子屋から依頼が来たとき懐かれた
ときどき、家にも遊びに来る
「それでね、今日はね」
「何やってるの!」
そう話そうとすると、子供達の親が来てみんな連れて行こうとする
「あっ、やめてよお母さん!」
そんなわが子の言葉も聞かずに行ってしまった
そこまでされると悲しいな
「おい、○○」
悲しんでいるとき。そう後ろから声をかけられ振り向こうとすると、急に引っ張られそのまま強引に、建物の隙間に引き込まれた


「○○、今すぐ里から出て行けよ」
俺はその言葉を聞くと同時、よく状況を確認する
ここは、建物の隙間の狭い空間で
そこで5人に囲まれ、壁に押し付けられてる
おまけにこいつら、里の問題児集団、いわゆる不良
人の来る気配無し
・・・あれ、詰んでね?
そんな状況整理をしていると、顔を殴られた
「おい!聞いてんのか?」
「き、聞いてるよ。でも悪い、今ここを引っ越す分けにも行かないんだよ」
そういうと、今度は腹を蹴られた
ボコォという衝撃が体に響き、俺は膝を着く
持っていた米俵が落ちたが、それどころではない
「お前の意思とかどうでも良いんだよ、とにかく出て行け」
震える体を動かし相手の方を見る
今喋っている奴の後ろで他の奴らは俺の事を嘲笑っている
そのとき、後ろの一人が提案した
「いっそのこと、こいつを再起不能にすれば良いんじゃね」
「それいいな!」
「そうしようぜ!」
「「賛成!」」
どうやら、その提案は全員一致で賛成らしい
まったく冗談じゃない・・・!
不意に脇腹を蹴られる
そして、間髪いれずに頭を木刀ほどの棒で打たれる
「!!」
余りの痛みに、声すら上げられなかった
やがて行為が段々激しくなっていき、意識も薄れてきた
(あ・・あ・・・せめ・・・て・・め・・し・・くい・・たかっ・・・たな・・・)

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最終更新:2015年11月01日 01:57