ただ恐怖を感じていた鈴仙という妖怪に
少し話をしていただけなのに、体が震え、嫌な汗が出る
「どうしたんですか!すごい汗ですよ!」
そう言って伸ばしてきた手を強く弾き、隣のベットに突き飛ばす
「きゃっ!」
そしてそのまま、鈴仙の入ってきた戸から出ていく・・・

どうして?なんで○○さんは私を突き飛ばしたの?
私から逃げるの?なんでなんでなんでなんで・・・

畜生、身体が痛い・・・全身が裂けそうだ
そんな事を思いながら俺は竹林を走っていた
逃走した理由はただ一つ、怖かったからだ
俺は幻想郷の女性に溺愛・・いや、狂愛された奴の末路を知っている
ある奴は死ぬまで、又は永遠に監禁され
ある奴は身体を失ったり、殺害されていたりもする
実際、それで何人も友人を失った
俺はそんな風にはなりたくない
ああ、早く里に帰りたい
早く帰ってあいつに、××に会いたい
そう思っている内に里に着いた
すると、その入り口に誰かが居る
よく見てみると、それは××だった
「××?何でこんな所に?」
そう言うと、俺に気付いたのか、××がこっちにくる
「あ、○○。お帰り」
そういって、俺に抱きついてきた
「え、××?おま、お前何を」
お、おい?今そんな事してる場合じゃ・・・?
その時、俺は××に違和感を感じた
暗くて余り見えないが、服装が違うような
それに声も少し違・・・!まさか
「ふふ、やっと抱きしめてくれましたね?○○さん」
病室からここまで、本当に一回も鈴仙の目を見なかったか?
やばい、そう思ったときにはもう遅くて
「私の目を見て話してくれましたね」
一体何を・・・まさか
「私分かったんです、貴方に愛される方法を」
やめろ・・・
「私が愛されないなら貴方が愛してる人になれば良い」
それだけはやめてくれ!
「さあ、○○さん・・・こっちを見てください」
そして、鈴仙に赤い目を魅せられて、俺は意識を失った

最近鈴仙の様子がおかしい
この間、悪戯しても怒らなかったし
不意に何処かに行ってるし・・・
変に思った私は、鈴仙の後を尾行した
そうしたら里の近くの目立たない所に建つ、小屋の中に入っていった
気になった私は、その家を覗いてみた
「一体何が・・・?」
そこではうちにきていた○○と鈴仙が一緒に生活していた
しかし、どこかおかしい
鈴仙が人里の、それも男物を着ていた事、そして
「××は本当に優しいな」「ふふ、僕はそんないい奴じゃないさ」
××と呼ばれ、自分を[僕]と言った事
これを永遠亭に伝えようと思い戻ろうとしたとき
鈴仙が、こっちに殺意と怒りが混ざった様な視線を向けていた
「あ、ああ・・・」
私は余りの怖さに、逃げられなかった
いや、逃げたら殺される。そんな考えが一瞬で浮かび動く事すら出来ない
そんな状態でいたら、鈴仙が入り口を開き言った
「ねえ、てゐ。この事を話したら
アンタデモ殺スワヨ?」
その言葉を聞くと同時に頷き、永遠亭に走る
その時、あの小屋に居る○○を思い出し、少し心が痛んだ

まったくてゐは・・・油断も隙もないわね
この二人きりの空間を邪魔するなんて
「どうしたんだ?××?」
後ろから○○さんに尋ねられる
私は少し低めの声で言った
「何でもないよ?気にしないでくれ」
「そうか・・・ならいいんだ」
○○さんはそういって、笑顔で家に戻った
ああ、幸せだ!愛する人と二人きりなんて!
・・・でもなんでだろう、何で○○さんは心から笑ってくれないの?
なんで・・・嬉しいはずなのに、私は泣いてるんだろう・・・

その頃、商店の中で××は呟いた
「・・・はぁ。○○まだ直らないのかな・・・」
その言葉を聞いた老人が、茶化すように言ってくる。
「そうじゃのう、そして××ちゃんと結婚してくれたら、村も安泰なんじゃがの」
「お、おじいちゃん!?そ、そんなことは」
××が赤くなって言った。
老人は、更に続ける。
「ほっほっほ。二人はお似合いじゃし、技量もいいからのう
ま、村の馬鹿な若造どもはそれに嫉妬して自ら首を絞めとるんじゃが
あ、そうじゃ、○○が帰ってきたら積極的になったらどうじゃ?」
そう言い終わると、老人は帰っていった。
「まったく、あのおじいちゃんは本当に・・・
それにしても、遅いなぁ、○○は・・
・・・少しだけ、積極的になろうかな?」
この時、××は知らない。
○○が狂気の目を見て、自分の幻影を愛していることを
その事を知らないまま、希望を膨らませていた
後に、絶望することも知らずに・・・


END1 愛に狂う兎

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最終更新:2015年12月16日 22:28