「香霖さん、お疲れ様です」

「おや、もうそんな時間かい。
 じゃあ、そろそろ閉めようか」

 彼の名前は○○。
外来人でありながら、この店に働きに来ている若者だ。
こういう人は外から流れてきたものの事をよく知ってるから非常に優秀だ。

「今日はどんなお客さんが居たんだい?」

「えーっと…チルノやその友達…だったと思います。
 外の世界のおもちゃを見てはしゃいでましたね」

 そう言いながら彼は紐と変な三角形の物体を僕に見せる。

「それは?」

「コマって言って、紐を使って回す遊びですね。
 結構大受けでしたよ。
 いやあ、可愛かったなあ」

「それは良かった。
 でも、よく妖精相手にイタズラされなかったね」

「友達の子がチルノの事をよく見張ってましたからね。
 一瞬姿が見えなくなったりはしましたけど、
 特に店が荒らされたりはしませんでした。
 イタズラされたかったなあ」

 ○○くん、君は所謂ロリコンとかいう奴なのかい?
それにしても妖精がいたずらをしないというのも珍しいね…。

「ふーん…そういえば友達は何人くらい居たんだい?」

「…何か色々居ましたね。
 緑の髪の子とか赤というかオレンジというか…
 あ、そういえばチルノがあの三妖精と仲良くしてたんですよ」

「へぇ、それは珍しいことだね。
 あの子達はいつも小競り合いをしているからね」

「普段だったら『○○はあたいのだー』とか『私達のものよー』とか色々言い争いながら
 おもちゃで遊んでたり弾幕を撃ち合ってたりしてるんですけどねー」

「ははは、まるでこの前君が言っていた、ひるめろとかいう奴みたいだね」

「まっさかー、あんな小さい子達に取り合いをされるような存在じゃありませんよー。
 あ、もしものことがあればされてみたいですけどねー?」

「まあ、雑談はここまでにして…そろそろ寝ようか。
 明日もまた、変わったお客さんが来るだろうからね。
 それじゃあお休み」

「そうですね、お休みなさい」

 普段仲違いをしているものが仲良くしている。
それが大体悪い事を予感させるのはいつものことだ。
僕は自分の寝室に入り、机に手紙と僅かばかりのお金が置いてあるのを見つけた。


 拝啓 香霖様
 ○○を買い取らせていただきたく存じ上げます。
 品物は今夜受け取りに行きますので
 どうか物音がしてもそのまま気づかないフリをして眠っていてください。


 一体誰が書いたんだろう…?
と考えながら一言。

「よかったね○○君。
 選び放題だよ…多分」

>テ、テンチョー! ダレカニハコバレテ、アッー!

 翌日、○○くんが居なくなったのを寝室と店の周辺を歩いて確認し、ため息を付いた。

「次の外来人は誰に捕まるのやら…」
最終更新:2017年02月12日 13:49