「すまない○○、手伝って欲しい事があるんだ」

承知いたしました、藍様。

「○○、遊んでー」

分かりました、橙様。

「すまないが○○、結界についてだが…「ごめんなさい藍、○○借りるわね」…はっ」


「いつもお仕事お疲れ様、○○。
 流石私が見込んだだけはあるわね」

…ねえ紫さ…、紫

「あら、改まってどうしたの?」

僕は紫にとって運命の人らしいけど、
もし紫の元に僕が現れなかったら、どうしていたの?

「そうねぇ…今より少し寂しい感じで仕事をしていたかも…ね。
 まあ、大きく変化はしなかったんじゃない?」

時々気になるんだ、何で紫が僕に目をつけたのかって

「あら、あなたは外の世界で色んな物語を読んで、見て来たでしょう?
 その中にはいくらでも違和感のある描写なんてあったはずよ」

ああ、一目惚れ…ってやつ?

「そうそう、言ってしまえば陳腐な描き方よね。
 どことは言わないけれど、その人の何かが気になってしょうがない。
 具体的に惚れた理由をひとまず置いておいて、恋愛描写を優先するための苦肉の策ね」

まあ嫌いじゃないけど…

「ドラマティックな展開を出すためには必要ね。
 まるで運命の糸に引かれたように惹かれ合う2人、これって…素敵な話じゃない?」

つまり紫も…そういうこと?

「そう。 あなたが幻想郷に来てちょっと顔を合わせた時、ピンっと来たの。
 この人は私の運命の人だって」

僕には分からなかったけどなあ…
そういうものなのかな

「あなたが読んでいた本にもよくいたでしょう? 鈍感な男主人公なんて。
 あなた、ああいうキャラクターにそっくりだったわよ?
 あの手の話と比べるとあなたの場合、控えめで素直で可愛いって所は異なるかもしれないけど」

うーん…かわいい、かぁ…

「私は今の○○が好きよ? 悩んで、考えて、うじうじして。
 真実を考えようとして煮詰まってしまうあなたが愛らしくて…とっても愛しいの」

…は、恥ずかしいよ、紫

「だから今のままでいて…? 貴方は何も変わろうとする必要なんてないの。
 今のあなたは必要とされているから。
 私だけじゃない、みんな、今のあなたの事を大事に想っているわ」

僕は、このままでいいんだ。
強くなろうとか、危険な妖怪を討伐するとか、考えなくても良いんだ

「そういうのをやってるのが霊夢であり、私であり、みんなだからね」

分かった…あっ紫様、それでは失礼いたします

「あ、長く引き留めちゃったわね。 ごめんなさい」

藍様からの頼まれごとを、っと…


「ねえ○○、運命の糸が意図的に作られたものだったとしたら、あなたはどうする?」

「あなたがここに迷い込んだことも、私と出会ったこと、
 いいえ…あなたという存在が生まれたことそのものまで」

「全部私が望んで作り出した結果と聞いたら、あなたはどうする?」

「怖いかしら、恐ろしいかしら、それとも私は狂っているのかしら?」

「卑怯な女よね、その辺の男を惑わして恋人にするんじゃなくて、
 1から自分の理想となるように運命の人を作り出すなんて」

「見た目、性格、生き方、過去、考え方、体格…
 全てが私の理想通りになるように育てたわ」

「どうやったかって? 簡単よ、本当の親の知らないところで親として貴方を育てればいいんだもの」

「そういえば何かの本にもいたわね。
 自分の理想の女として少女を引き取って育てた男が。
 私はその逆を行っている…いえ、行った、というわけね」

「あははははは…こんなこと、彼に聞かれたらどうなっちゃうのかしらね?
 ねえ、藍?」

『立ち聞きしてしまい、申し訳ございません』

「別に良いのよ、○○は?」

『人里まで使いに行かせています』

「入っても良いのよ?」

『いえ、このままでも私は「良いから入りなさいな」…はっ』


「ねえ、○○とは最近どうなの?」

「最初こそ私の態度に冷たさを感じていたようですが…
 最近はそれも優しさとして認識し始めたようです」

「ごめんなさいね、一杯褒めてあげたいでしょうに。
 …全く、私のためとはいえ、彼に厳し目に対応するなんて」

「○○は紫様の大事な人ですから。 私がそれを奪うような事があってはいけません。
 それをしたら…」

「ええ、あなたを式神としてではなく、怨敵としてみなすでしょうね」

「…恐ろしい話ですね」

「流石は九尾。 動じないわね」

「ええ、紫様にはそれをやってのけるだけの力がありますから。
 …その気になれば私が恐怖で怯える間も無く私の事を始末できますから」

「もちろん、実際にはそんなことなんてしないわよ」

「彼も紫様も知人が死ぬのは見たくはない…そういうことでしょうか」

「○○が残忍な性格だったらまた別かもね」

「そんな性格の○○なら今の紫様は目を付けたりもしないでしょう」

「ええ、『今の』○○が一番大事で、一番愛している存在だからね」

「苦労を重ねたものです」「ええ、そうね」

「とにかく、紫様は理想の男性を見つけたのです」

「ええ、あとは永遠に楽しい生活を営むとしましょう? 藍」

「はい、紫様」

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最終更新:2017年04月08日 04:47