XXの日記

 X月X日
 今日は被験者として、○○という外来人を検体に選んだ。この人物は外来人であり特殊な
能力は持っておらず、私の実験には最適であると思われる。被験者に催眠術を掛ける前に身体
測定を行っておく。中肉中背で既往歴無し。更に特殊な能力は保持していないことを再度確認
し、私は彼に催眠術を掛けた。
 催眠術を掛けた彼の状態は譫妄、幻覚は見られずに安定的。私を姉と思わせる深層意識への
働き掛けは順調であり、私の事を家族と認識している。之れまでの知識、記憶に齟齬が生じな
いように後催眠を掛けておき、本日の試験を終了する。彼の記憶が定着する一週間程度は、
慎重に推移を見守ることが必要で有ると思われる。

 X月X日
 本日は○○に、私がいなくなるというanchorを無意識に追加する。これの働き掛けによりtrig
-gerが起動した結果、○○は私が少しの間現場を離れようとした際に、非常に強く私の服を掴み
抵抗を示した。これは今までに見られなかった結果であり、○○のsuper-egoが弱体化を示す兆
候であると思われる。この事例はEsの強大化と結びつけることが可能であると見るべきかもしれ
ないが、私としては幼児化によるEsの解放よりも、むしろ恐怖によりsuper-egoが破壊されつつ
あるとする説を、之れまでの催眠が理性の弱体化を目指す効能がある点を持って支持したい。
 これは私にとっては最適な展開であると言えよう。この実験により私の目的は達成されるで
あろうことは間違い無い事である。

 X月X日
 本日は○○に対して罰を与えることへの実験を行った。○○が行った行動を咎めた後に反省を
促し、更に此方からremedyとしてショ糖を与える。実際はhomeoeo-pathyの一派でしか通用しない
手段であるが、催眠下にある○○にとっては、これが蓬莱の薬と同等の効力を発揮すると信じて
いると確認できた。此方が制止するまで自己総括の自傷行為を繰り返しており、私が救済を告げ
た後には、至福の状態にある様子であった。
 今回の実験では○○に対して強い催眠効果が確認できたが、それ故にこの種の実験には注意が
必要であることが再確認できた。今後はより強い24時間の監視体制を実行し、○○の行動をすこ
しも余さずに監視及び記録することが必要であると思われる。

 X月X日
 深刻な事案が発生した。○○が私の言葉に応答しなくなってしまった。一体、一体何故なのか
この月の天才と謳われた私に不可能は文字通り無い筈なのに!!


「し、師匠・・・一体、何をなさっているのですか・・・?」

「あら、優曇華、チョットね・・・。運の悪い子。」

「え?」

プス・・・バタン

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最終更新:2017年06月09日 22:40