古明地さとりのカウンセリング

 おやおや、ようこそどうぞ。まあまあ其方の椅子にお掛け下さいな。地霊殿は初めてですか?実は私、自分の
能力を生かしまして、最近外界で流行のカウンセリングというものをやっているのですよ。といっても別に何か
が魔法のように変わる訳ではありませんが。残念ながら、早々都合の良い物は未だに存在していないようでして、
魔法使いが大空を飛ぶこの幻想郷の中で、魔法の様に貴方を楽にすることは出来ませんが、まあ少し話をすれば
多少は楽になることは請け合いますよ、ええ。

 フウム、フウム、そうですか。貴方が幾ら相手の人に尽していても、その人から愛されないと…。成る程それ
は中々に大変な苦しみですね。さぞ苦しかったでしょう。どうすればいいか、ですか。流石は有能と言われて
おられるだけあって、すぐに行動に移されるのは流石ですね。中々難しい問題ですので、ここは順々に追って
解決していきましょうか。ええ、大丈夫ですよ。この問題は解決しますので。

 そうですね、まずはあなたが、貴方自身について理解することが必要ですね。そうですね、当然相手の問題
なのにどうして自分について知ることが必要なのか、疑問に思いますよね。実はこの問題は相手では無く、あ
なたの問題なんですよ。驚きましたか?そうですね、相手が愛してくれないのに、どうして自分が悪いのか、
そう思われるのは当然の事ですね。実は貴方は自分でその原因を作り出しているのですよ。

 おやおや、椅子に座って下さいな。ええ、貴方の尽くし方は完璧でしたよ。瀟洒の二つ名にふさわしい、ま
さに完璧な物ですね。記憶の専門家の私が保証しますよ。そう、貴方は完璧すぎたのですよ。それが原因なの
ですよ。…図星、という顔ですね。貴方も分かっていたのでしょう?貴方が尽くせば尽くすほどに、相手の人
は自分から離れていくという事に。

 尽くさないと、相手から愛されない。そう貴方が思われるのは無理の無いことかも知れません。貴方は献身
すれば、相手はきっと貴方の事を愛してくれると思っているのですから、そう、それは最早貴方の心の中に呪
いとして染みこんでいるのですよ。そしてその呪いは実は別の効果がありまして、貴方は何かしないと愛され
ない、貴方が愛されるには何か対価が必要だ、何もしない貴方は無価値だ、唯の貴方は愛されない存在だ、と
いうものになっているのですよ…。

 そう、貴方は愛されない、そう貴方は心の奥底で思っているのですよ。だから必死になって当主に仕え、恋
人に奉仕する。そうしないと貴方の存在価値は無いと思っているのですね。だから貴方は苦しいのですね。自
分で自分を否定しているのですから。貴方は愛されるには、認められるには他の人よりも努力しないといけな
いと思っている。だからそんなに時を止める能力を駆使して、他の人の何倍も働くのですね。苦しかったでし
ょう、自分が認めていないのですから、いくらどんなに頑張っても、誰も認めてくれないのですから。

 大丈夫ですよ。貴方は素晴らしい人ですよ。ええ、貴方がいくら自分で自分のことを価値が無いと思ってい
ても、私は貴方を認めます。大丈夫です、貴方は愛されていいのですよ。貴方は何もしなくていいのですよ。
例え他の誰が貴方のことを駄目だと言っても、貴方はあなたでいいのですよ。だから、まずは自分で自分を大
切にしましょうね。自分すら愛せない人は、誰からも愛されないませんから。自分の食事は時を止めて、あり
合わせで食べなくってもいいのですよ。冷たい水ではなくて、愛する人に紅茶を煎れるように、自分のために
紅茶を注いでいいのですよ…

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最終更新:2017年06月15日 21:43