「この時期になると蝉が姦しくなりますね。まあ、夏を感じることができるので嫌いではないですが」

「知っていますか?蝉の鳴き声は求愛行動なんだそうですよ。遠くまで響く、多くの者に聴かれる声で愛を叫ぶなんて、なんだかロマンチックですよね」

「そうそう、蝉といえば私の場合親近感も湧いてしまいますね。蝉は地中で数年を過ごし地上で僅かばかりの時を生きますが、私も地獄で長く閻魔様に仕えその後現世で人の半分もない寿命を生きるわけですから」

「ですので、私も近しい境遇の蝉を見習って少しばかり求愛行動を取ってみようと思うわけですよ」

「蝉の場合求愛するのはオスの役割なんですが、それはこの際どうでもいいですよね」

「……ごめんなさい。私もこの短い命で恋を成就させるために必死なので、手段は問いません」

「里の人達に協力を願い出たところ、多くの人が快く引き受けてくれました。この意味は言わなくてもわかってくれますね?」

「ここから逃げ出したって良い事はありません。その点、受け入れてくれさえすれば衣食住で不便などさせませんし、私も精一杯あなたに尽くします」

「ですから、どうか私を嫌いにならないで下さい。同情でも、演技でも構いませんから」

「お願いします。どうか私を愛してください……おねがい……」

蝉=短命、阿求=短命とかいう超短絡思考でできた小ネタ

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最終更新:2017年07月17日 23:02