古明地さとりのカウンセリング19

 いやはや、そんなに息を切らしてさぞお疲れでしょう。
どうですか、ここで少しゆっくりとしていきませんか。
それ程急がれていては、あなたの考えも上手くいかないでしょうから。
下手の考え休むに似たりと言いますし、お話をするうちに良い考えも浮かんでくるかも知れませんしね…。

 おや、そうですか。恋人の女性から逃げ出したいが逃げ出せないという事ですか。
そうですね、鬼の四天王の一角となればその力はとても強いのでしょうし、
唯の人間のあなたからすれば単純な力任せの作戦では、とてもとても太刀打ちが出来ないのも当然ですね。
余りにも拘束をされるということは、それは中々にお辛いことでしょうね。
妖怪の私でも同情致しますよ、ええ。
 そうですね…。そこまでに拗れてしまっている関係ならば、もはや常道の手段ではどうにかもすることが出来ませんので、
これは相当に強硬な手段を取る必要がありますよ。
これを聞かれるのであれば、あなたも覚悟を決めることが必要になるのですが、
どうでしょうか、そこまでの気持ちはあるのでしょうか?
いくらそこまでと行ってしまったとはいえども、中々に相手を裏切って自分の手に掛けるのは、
相当に辛いものがありますからね…。

 ええ、そうです。ここまで相手があなたを手放さないのでしたら、
結局はあなたは相手を殺す必要があるのですよ。
なにせ相手は妖怪の中でも一際強い鬼ですから、中途半端な手段ではどうにも成らないのです。
策を弄しようにも、相手の怪力はそれを正面から打ち破れる訳ですし、
単純に後ろから包丁で刺そうにも相手が能力を使って霧状にでもなってしまえば、
ただの人間であるあなたはお手上げになってしまうでしょう。
ですから、何かしらの作戦を使う必要があるのですよ。
 そうですね、勿論これはとても卑怯な手段でありますし、追い詰められて後が無い手段であるのですが、
ただの人間が妖怪に立ち向かうにはそうでもしないといけないのですよ。
そして不幸中の幸いと言っては何ですが、今回に限ってはあなたがする作戦は必ず成功するのですよ。

 どうして成功するのかが不思議ですか?
実はあの妖怪は遠い昔に、大江山で暴れていたことがありましてね。
その時に討伐を受けたのですが、その時には友好関係を結ぼうという名目の宴会で、
飲んだ酒に妖怪に効く毒をタップリと混ぜられていまして。
その毒が全身に廻ってから、討伐隊に部下諸ども皆殺しにされたのですよ。
ですから彼女は嘘を嫌っている訳ですが、あなたが彼女に毒の入った酒を注げば
彼女はそれが毒入りだと分かっていても、それを飲んでしまうでしょうね。
自分自身が恋人に嘘を付かれる事に耐えられないのですから。
ですからあなたは、毒で動けなくなって恨みがましくあなたを見つめるであろう彼女の×を、
昔と同じ様に切ってしまえばいいのですよ。
 ああ、そういえば言い忘れていましたが、彼女はその時に×だけになっても、
斬り掛かった武士の兜に噛みついたらしいですね。
そして七枚の兜の六枚までを噛み切ろうとして力尽きたらしいですが、
まあ、恐らくは彼女の周囲の人物がその武士に復讐をしようとした事の暗喩だったのかも知れませんね。
どうですか、あなたも武士が兜を被ったように、信頼できる人に護衛して貰う事が必要になるかも知れませんね。
もし、居ないのでしたら…そうですね、余り愉快でない想像は辞めておきましょうか。






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最終更新:2017年12月19日 21:33