エイプリルフールネタに便乗して…


「四季先輩、ちょっとお話があるんですけれども。」
「何かしら○○くん?」
黒色のスーツをビシッと着こなしたいつもクールな先輩が、携帯電話を片手に持って不思議そうな顔をする。
普段の先輩はは勘がとても鋭いので、エイプリルフールなど簡単に見破られてしまうのではないかと心配になるのだが、今日の様子だと大丈夫そうだ。
「実は、商店街のくじ引きで温泉旅行が当たったので、どうかなと思いまして…。」
「えっ、そうなの!」
予想外に驚く先輩。ここまで驚かれると、後でネタばらしをしてがっかりさせるのがちょっと申し訳なくなってしまう。
「そう…じゃあ…」
僕の手を握る先輩。白く細い指が僕の指に絡みつき、思わずドキリとしてしまった。
「ゆーびきーりげんまん、嘘付いたら、地獄におーとす。ゆーび切った!」
「ッウ!」
突如、指先を鋭い痛みが襲う。指の先から腕を通って、脳に渡るような痛みが神経を走る。
「どうしたの、○○くん。」
嬉しそうな顔で僕を見つめる先輩。
「ひょっとして…嘘、ついちゃったんじゃないよね。」
クールな美人によく似合うと評判のいつもの声であるが、何かが違う。まるで心の奥で僕をとらえて離さないように、
先輩は笑顔の筈なのに先輩の目の奥は笑っていない。
「も、もちろんですよ…ヘヘッ」
痛みで脂汗を流しながらも、無理やり笑いながら嘘を取り繕う。
「そう…。」
先輩は僕の耳元に顔を近づけて小声で言った。
「私、温泉は箱根辺りがいいな。丁度お泊まりで行けるし。」
-じゃあね-と言い残して去って行く先輩の後ろ姿を、僕はただ見つめていた。






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最終更新:2018年04月10日 01:05