ネタ投稿

 大妖怪のスキマの中、暗く大きな部屋の中に人妖がいた。
賢者の計らいであろうか、お互いの顔が分からない状態で席に座る面々。
小さな、恐らくは少女であろう一人の人物が正面に座り、会議が始まった。
「それでは、某所の人気投票を踏まえた結果を基に、今回の会議を始めたいと思います。」
若い声が部屋の中に響く。各々が手元の資料を捲る音だけが聞こえた。
「今回の投票結果及び私の…、ゴホン、S書店の「いんたーねっと」上における貸本の歴代の閲覧履歴を踏まえ、
幾つかの結論を得ることが出来ました。」
ゴクリ、と唾を飲む音がする。少女は発表を続ける。
「貸本の人気結果と人気投票結果は、大凡一致しております。」
「…ふむ、妥当なところじゃの。」
年を取った面妖な妖怪の声が賛同の意を示す。
「しかし一部で大きな食い違いが見られました。それは年下属性に対する逆風です。」
「…なん、だと…。どうしてなんだぜ。」
「そうです、おかしいです。外界のヤンデレ教本には、妹ヤンデレの時代が来ると書いてあるそうじゃないですか。」
男勝りの声や、真面目な半霊の声が反論を唱える。
「事実です…。年下の属性を持つ者は、閲覧履歴件数の順位は人気投票よりも下がる傾向にありました。」
「な、なんてことなんだぜ…。」
「じゃあ、私はいいのかしら。495歳だし。」
幼い吸血鬼の声がする。
「いえ、実際の年齢には関わりがありません。むしろ、見た目の年齢に比例していると考えるべきでしょう。」
「そ、そんな…。」
絶句する声、一方で別の声が上がる。
「ならば、別の考えが出来るのでは?例えば、年上属性に追い風が吹いているとか…。」
月の天才の声に司会が答える。
「確かに年上属性には強力な追い風が吹いています。ヤンデレにおいては、重要な要素と言えるでしょう。」
「ちょっと待って!これって結局、胸が大きい方が有利ってことじゃないの!」
「気づいてしまいましたか…。幻想郷において意中の人の愛を得るには、胸の大きさは…くっ!憎い、私の体が憎い!」
天人に司会者が隠された真実を告げた。
ざわめく室内。これでは他の女に○○を奪われてしまうと、部屋の中に不穏な空気が流れ出した。
「ですが、それを回避する方法があります。」
「!!!」
一同の視線が司会の方に向けられる。

「歴代の履歴の中で一位を示すもの、博麗の巫女を押さえて堂々の首位を保つものがあります…。」
「な、なんなのかしら、私の地位を抜くなんて…。」
驚きを隠せない巫女。それに構わず司会は続ける。
「複数によるヤンデレです。」
「……。」
沈黙する一同。
「あらあ、それは一人で敵わなければ、大勢でってことかしらん。」
大賢者が茶々を入れる。
「いいえ、確かに一人よりも二人いれば相対的に有利なのかもしれません。
しかし、それでは各勢力の順位が各人の順位よりも低くなることがあります。
本質はそこではありません。思い出して下さい、ヤンデレは何を求めているかということを…。」
「愛、ですね。」
さとり妖怪が心を読む。
「そうです、愛です。それも独占的な愛です。他の誰にも向けられることのない愛を、自分にだけ溢れる程に注がれる…。
それこそがヤンデレに求められているのです。それが一人でなく、二人、三人と注がれる…。
これは正に楽園(エシュリオン)と言うべきことでしょう。」
「そ、そうだったのですね。流石幻想郷では常識が通用しませんね。」
緑色の巫女が感嘆を述べる。
「更に自分を巡っての激しい遣り取り、複数の女性が自分を巡って修羅場を演じる。
この相手を排除してでも自分の物とするという優越。更には上手くいけば複数の女性を手に入れられるという
贅沢な欲望。これを一挙にを叶えるのが複数という選択肢なのです!」
「咲夜に命じて早速させようかしら…。」
吸血鬼の姉が今後の予定に思いを巡らせる。
「それでは、各自に良きヤンデレがあらんことを」
「「夜も眠れない程の愛を」」
部屋は闇に包まれた。






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最終更新:2018年08月11日 20:51