「知り合いの話なんだけど」
僕へ茶菓子を出すと、アリスはそう話を切りだした。
よくある定型句だ。僕か白黒魔法使いぐらいしかまともな知り合いの居ないアリスのことだから、
それがどういう意味なのか察するなという方が難しい。
「好きな人ができたかもしれないんですって。だから相談に乗ってほしいの」
これは思いがけない話題を出してきたものだ。僕か白黒(中略)だから、僕への告白にしか聞こえない。
気分を落ち着けるために、僕の分の紅茶に口を付ける。
アリスが僕のことを好きだというのならこの話を僕に振ってくるのは少し不自然な気もするが……
「そういう話なら魔理沙の方が適役じゃないのか?」
「男性目線の意見が聞きたいの」
「そういうことなら話を聞こうじゃないか」
僕もアリスも、ものすごく白々しいやりとりであることは自覚していると思う。
「独りで部屋にいるときその人のことを思い浮かべると胸が苦しくなるんですって。これって恋だと思う?」
「それは恋だろうね」
「ずっと一緒に居たいと思っていて、別れの瞬間がとても辛い」
「それも恋だな」
「その人が他の女の子と話しているのを見ると無理にでも止めさせたくなる」
「恋だろうなぁ」
「いっそ監禁して私だけのものにしたい」
部屋の空気が何度か下がったようにも感じられた。
「恋だな。愛とは呼べないような独り善がりな恋だ」
「そう、よね」
アリスは見るからに落ち込んだ様子だ。
「今日のところはこのぐらいにさせてもらうよ。紅茶と茶菓子、ありがとうね」
僕はそう告げて椅子から立ち上がる。が、足腰にうまく力が入らない。立っているのがやっと。
「紅茶、美味しかったでしょう? 珍しいものを入れてみたの」
気づかぬうちに一服盛られていたらしい。これは完全に一本取られた。
「ごめんなさい」
「謝るぐらいなら、こんなことしないでほしかったな」
「でも、もう我慢できないの」
アリスは僕へ歩み寄ると、抱きついた。
「これからは、いっしょよ。ずっとね」
感想
- 誰も殺すことのない、平和な可愛らしいヤンデレアリスだと思います。ありがとうございます -- 甘酒チャチャチャ (2019-02-08 22:18:41)
最終更新:2019年02月08日 22:18