「あなたは好きなのでしょう?こういうの。」
「違う。僕が君の物だなんて、そんなの認められない。」
僕の否定する言葉にも彼女は動じない。心を読めるというためなのか、彼女はいつだって僕の事を知り尽くしているかのように振る舞っている。たゆたうように、揺らめくように、彼女の言葉が宙に舞う。
「嘘…。本当は心の奥ではそう思っている。」
心を抉り取るようなゾクリとする感覚は、僕の首筋にかけられた吐息のせいだけではないのだろう。
「本当…?」
ねっとりとまとわりつく声。彼女の細い指が僕の顔を撫で、自分の心臓が今動き出したかのように大きく鼓動をたてた。
「君が僕の物だ。」
「ふうん…。」
横に座る彼女の体重が僕の方に掛かり、彼女の唇が合わさって舌がうごめくと、僕の体の血液も合わせるように踊り出す。
「君は一生僕だけの物。他の男には渡さない。」
「嬉しい。」
彼女が蕩けるような笑顔を見せる。彼女の毒にも似た感情によって僕の理性が溶けていく。
「でも、本当は怖いのでしょう?私があなたを捨てないかって。」
ドキリと心が揺れる。心の奥に潜む本音が彼女によって暴き出されていく。呼吸が速くなり心臓が強く打ち鳴らされる。彼女が僕の首筋を撫でると、何かがそこに差し込まれる感覚がした。
「奪われる恐怖があるから相手を支配しようとする。だから…ずっと繋がっていればいい。」
僕の口から荒い息が漏れる。視界が熱を帯びたように歪み、グルグルと回転する。揺らぐ視覚を繋ぎ止めるかのように、両腕で抱きしめている彼女の感覚を強くした。
「あなたを溶かしましょう。全てを溶かして私と一つに。」
薄れゆく意識の中で彼女の声だけが聞こえていた。





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最終更新:2019年06月17日 20:44