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 壊れたお守り

 「これ…何…?」
 彼女がそう言って何かをつまみ上げた。彼女は細い手にすっぽり収まる程の小さい物をじっと見ている。気怠い午後の昼下がりの空気が鋭利な刃物で、
瞬く間に切り刻まれていった。この一瞬を絵画に切り取るならば、きっと印象派のいい素材になるであろう。そう思える程の綺麗な彼女。しかしながら、
その美しさは白刃の日本刀のそれであり、
「何でこんな物…、持ってんの?」
目の前に彼女の指が突きつけられると、自分の首下に刃物が突きつけられているような感覚がした。僕の額から汗が滴り、首筋を流れた。
「何のこと…かな?」
彼女の勢いに押されて、思わず弱い口調になってしまった。これではまるで、尋問をされているようですらある。
「これよ、これ!」
「ああ…。ただのお守りじゃないか。」
「どこで手に入れたの?」
「こ、この前、博麗神社に行った時に貰ったやつ…。」
「買ったの?」
「違うよ…貰ったんだよ。」
「本当…?」
彼女の顔がじっと見据えてくる。下手な嘘や誤魔化しを見破る勘は、今日も健在そうであった。数秒の無言の時が流れる。いつの間にか僕の口の中がカラカラに乾いていた。
「ふうん……。そっか。」
「いいの?」
「買ったんじゃないなら、いいや。」
彼女から無理難題を突きつけられていた筈なのに、反感よりも先にホッとしていた自分が居た。細い息が口から漏れ、背にしていた壁からずり落ちるように、腰が抜けたように畳に落ちていく。
「……もし買ってたのなら、只じゃ置かなかったけれど。」
「!!!」
弛緩しきった体に、再び雷に撃たれるような衝撃が走る。実験台にされたモルモットのように激しく反応を示す僕の側に彼女が寄ってくる。腕が取られ、
彼女の体が寄せられるが、嬉しさよりも別の感情が心を占めていた。
「ねえ、天人の私がいるのに、ホント何考えているのかしらあの巫女。折角の私が付いているのに、○○にお守りなんて居る訳が無いじゃないのにねぇ?」
僕の目の前に翳された物が、煙となって消えていった。
「はい、これで○○は私だけのものになりました。○○には私が付いていればいいんだからね。」






感想

  • ○○が天子のものに!(驚愕) 許せない!(嫉妬) -- 名無しさん (2020-05-31 15:53:47)
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最終更新:2020年05月31日 15:53