「これは……良い兆候だと良いんだがな」
阿求が用意してくれた手の物が、雲居と物部が好いている件の歩荷を見つけるどころか。その友人との会話内容すら記してくれたおかげで。
極めて前向きに、当初の予定を変更する事が出来そうであった。
「うん、悪くない」
一通り読み終わった後、当然の如くその紙片を阿求に渡した。
「ふぅむ……なるほどこれは。この友人さん、有望そうですね」
○○の事を冷静に狂いながら愛し続けているからと言うのは、無論の事理由としては最も大きいが。
○○が計画の変更をどたん場で決めようとしていることに、阿求も随分と好意的に受け止めていた。
「阿求が用意してくれた人たちが記したこの情報――まぁ、正しいだろう。疑う余地はない」
少しばかり○○は、間と言うものを作ってしまったが。幸いまだ、阿求にはこの間が後ろ向きであるという事はバレていない。
少なくとも捜査の進捗状況と、これからを考え併せている。それぐらいにしか、今のところは思ってくれている。
そう、だから。あれやこれやが全部自分の物ではないことは、今は考えないほうが良い。考えてはならないとまで言い切ってもいい。
これから先も。

「しかし八意女史から嫌な奴らとまで表現された連中。やっぱり嫌われていたんだな、この友人も口が悪くなっているね。無理はないけれども
月の頭脳にすら嫌な奴らと匙を投げられるぐらいなら、普通の人間にとってはとっくに
鼻つまみと考えていいはずだったんだ。件の歩荷が、篤実(とくじつ)で実直すぎて、やや朴念仁の気配があるけれども
それは玉に瑕ぐらいには思われるが、それ止まりだ。職業上の、歩荷としての才能の高さの前には。
どれも些末だ。あれだけの男ならば、周りに評価してくれている人間もいる。この友人もそのうちの一人とみるべきだ」

○○がつらつらと喋りながら、もう一度。阿求の手の物が持ってきてくれた情報を。
見直すために、○○は阿求の肩の後ろから紙片を覗き見た。
その際、○○は阿求の髪の毛に触れるのはもちろん。○○の吐息が阿求の柔肌に対して。意図していなくとも吹きかかることになった。
○○は一瞬、この行為をすんでのところでやめておこうかと思ったが。
やめておこうかと言う思考が頭に走ったのよりも、さらに素早い思考で。やめずに続けるべきだとの判断を下した。
シャーロックホームズじみていて、どことなく行動はエラリークイーンも交じっていると。東風谷早苗からは批判されているけれども。
そんな批判が、外の世界を知っている彼女から来るのは先刻承知の上である。
それよりも。稗田阿求が求めるように、自分は舞台の上で踊り狂うべきであるし。第一自分はそれを――求めているはずだ。
外の世界では絶対に、自分ごときが立つことはできないほどに大きな舞台と、まぶしいほどの光と称賛。
そしてそれは、阿求が手を回してくれているから。百年後も二百年後も続く、絶対にだ、阿求がそう約束してくれた。
阿求と○○自身が息絶えても、この賞賛は続く。そう、繰り返しになるけれども絶対にそうなる。
稗田家が所有している蔵を一つどころかいくつでも空にしてでも。阿求は約束を守ってくれる。
だからこれで良い。そもそも自分はもう、十分すぎるほどの愛と称賛と大きな舞台を得ている。
自分が何かを言うのはお門違いもいいところだ。
それに今だって、こうやって。阿求の髪の毛をさらりと撫でて、肩から背中にかけて手を滑らせた。
阿求は自分の肉体的魅力の低さに、ともすれば緑色の感情すらわき起こしそうなほどに、狂ってしまうが。
だとしても稗田阿求が女性であることには間違いがない。
阿求はこうやって○○から不意に触られることを、許容しているどころか望んでいる。
阿求の表情は実に、実に嬉しそうであった。こんな顔をされてほだされない男がいるとすれば、そいつはかなりの悪党だ。
これだけでも、ずいぶんな対価であるのは。論ずるまでもないことのはずだ。


○○は気を取り直して、依頼に関することに思考回路の軸足を向けることにした。
「計画変更だ。件の歩荷とその友人の会話を出来るだけ聞き取って……その後は件の歩荷ではなくて、この友人に接触するぞ」
「何をお話になられるのですか?」
と、阿求は聞いてくれるが。緊張感と言う物がなかった。
既に何名かの命が、雲居と物部によって握られているはずなのに。やはり八意永琳ですら、露骨に嫌っているという事実を確認してしまったからか。
阿求は○○とのデートに浮ついていた。あんな嫉妬深い連中に比べれば、確かにそうなるだろうなと言う程度の感想に落ち着きたくはなるが。
それでも、死人は少ないほうが良いという考えができる程度には。
まだ○○は、殊勝な態度でいる事が出来ていた。

「この紙片を見る限りじゃ、件の男の友人はなかなか好青年のようじゃないか。それに少なくとも阿保ではない。
となれば、友人だってそこそこいるはずだ……幸い雲居と物部が厄介な連中にはいったんケガと言う形で退場させているから
件の男、あの歩荷の友人には、稗田の家柄を少しばかり見せながら。好きにすればいいと言えばいい。
幸いこの友人君も、件の男と同じ職業。歩荷のようだからね。仲間に根回しをするのに、俺達の姿は。
直接協力とかはしなくとも、一言二言、支持する言葉を与えておけば……」
ここまで喋って、○○は少し気がかりを脳裏に描き出してしまった。
月の頭脳にすら匙を投げられているほどに、性格の悪いあの連中であるが。かといって物の見事に市中に投げ放ってしまうのも。
これはかなりまずい事になりそうだという懸念が、いきなり湧き出してきた。
あの手合いが、己やこれまでを顧みることなど、期待しな方が心中がかえって穏やかで済むと言うのもあるから。
正直評価は低いままであるが、そんな連中であるからこそ、食い扶持が全部なくなったらどうなるか。まるで予想がつかなかったのだ。

○○は少しばかり考えてから。こればっかりはと思いながら、阿求に頼みを一つするしかないと、腹を決めた。
「阿求、連中の事だが。そう、八意永琳にすら匙を投げられた、あの嫉妬深い連中。
金を稼ぐ当てがなくなったら、何をするかわからないから……そう。稗田で世話をするのは最終手段かもしれないが
何か、自棄を起こさない程度には向こうも自活出来てくれていないと。こっちが不安になってしまう」
幸い阿求は神妙に首を縦に振ってくれた。
「そうですね、まぁ、乗り掛かった舟と言うのもありますし。依頼人の方々。
今はナズーリンさんだけではなく、蘇我屠自子さんも依頼人の内で。あの二人の一番の要望は、身内が凶行に走らないことですからね」

もう走ったようなものではあるのだがな。ただくたばり損なったというだけで、もしかしたらそれをあの二人は口惜しいと思っているかもしれない。
それにあの凶行の計画と実行は、おそらく雲居一輪だ。ロープをネズミにかじらせるのは、ナズーリンと近い彼女がやったとみるべきだ。
となれば……物部布都は次にどう動くかな。雲居一輪の一手が思いの他、パッとしないことに。
あるいは自分にお鉢が回ってきたと思うか、それとも雲居一輪の手際が悪かったことを、本人の前でなじってくるか。
……ど知らか一つだけ遠い宇野は考えにくい。たった一つの原因だけで事が進んでいるのならば、実に簡単で良いのだが。
両方を内包しながら。そして今はまだ○○でも思いついていない第三の感情も、あると見るべきだ。
「身内の手が血でまみれるのを、ナズーリンさんも蘇我屠自子さんも望んではいないだろう」
そう言って神妙な顔をする○○の手は、血で汚れているのだけれども。
けれどもあの時、自分の財布の中身を横領していた連中を。○○自身の手で処断していなかったら……もっと酷くなっていた。
とても残念な話だ。血でこの手を汚すのが唯一の妥当な解決法であり。そもそも、そのための武器は阿求が用意している。
きっとまた、自分がこの手を血で汚すようなことがあっても。
阿求は恍惚に満ちた笑みを見せながら、比喩ではなくて本当に返り血を浴びた場合でも同じように、笑顔を見せてくれながら。
自分の手や体を、それはそれは甲斐甲斐しく洗ってくれるだろう。

そんなことをしてくれる存在が、そんな存在とデートしている事に。愉悦がないわけではない。
けれどもそんな状況は、出来る限り少なくするべきなんだ。
だから今日だって、ちょっとした聞き込み調査と並行して。つつましくデートをするぐらいで終わらせたいと○○は願っているのだ。
問題は依頼のためとはいえ、盗み聞きですらデートの範疇に含んでいる。
稗田阿求の思考や感情であろうことは、東風谷早苗ならばすぐさまその点を突いて避難してきそうだが。
幸い今ここに、東風谷早苗はいない。


かくして、稗田阿求の手の者たちの活躍――暗躍とは言わない――により。
結構ゆるゆると、稗田夫妻は街歩きデートを楽しんでいたはずなのに。ついたころは件の歩荷と友人が席に着くよりも早いぐらいであった。
そしてきっと、この店にだって。件の歩荷過疎の友人が、その日その時の気分で決めたはずの店だけれども。
手が回っていないと考える方がおかしい。おあつらえ向きに、稗田夫妻が座る席の真後ろであった。
この友人は、件の歩荷に何かまじめな話をしようと考えているからだろう。普段よりは少しはお高めの。
完全な個室ではない物の、ちょっとした話をするにはなかなか適当な店を選んでいたが。
そこは稗田の家格がたっぷりと活用されているのは明らかで、○○が目当てとしている件の歩荷と友達。
それと稗田夫妻、それ以外の目につく客はもしかしたら関係が。
あるいは無かったとしても、稗田への信仰は人里で生まれた人間の義務……お願いは命令と同義。極まればありがたいご神託だ。
霧雨魔理沙ほどの能力があれば例外かもしれないが。そこまでの存在ならば、既に有名だ。

(――栓も無い事だ)
稗田阿求が何かをやったという気配は、感じざるを得なかったが。不意に首を横に振る代わりに、湯飲みのお茶を飲みほした。
そしたらすぐに店員が――男だった――急須を持ってきて、お茶のお替りを入れてくれた。
これも含めて、栓も無い事だ。



「お前はこの状況を大いに活用するべきだ」
怪しまれないように、阿求と取り留めのない会話を――楽しい会話だ――繰り広げながら。
件の歩荷かその友人が喋りだすのを待っていたら、やや苛立ちを乗せている声で友人のほうが声を出してくれた。
これは有望そうだ。往々にして苛立っている、冷静さを欠いている人物からは色々聞ける場合が多いし。
今回は稗田○○はまだ、外野で観察している立場だ。苛立っている原因に○○の姿は、絶対に上がってこない。
しかも目の前にすら――少なくとも彼らの主観では――まだいない。期待できそうであるし。
「お前はもっといい目を見るべきだ。正直あの連中は好きじゃないどころか、気に食わん。
あんな連中百人よりお前ひとりのほうがよほど、尊いとすら思っている。
奴らの上りを全部持って行っても良いぐらいとすら、俺はまじめに思っているぞ」
そのうえこの友人君は、義憤で動いている。義憤と言うのは口の滑りをよくする効果がありそうだ。
ますます、期待してもよさそうであった。

「それから……証拠を抑えていないのが残念だが。あいつらはお前の道具に――
ちょっと待てお前。お前今、『やっぱり』って顔しなかったか?気づいても黙ってヘラヘラしてたのか!?」
その上、八意永琳にすら匙を投げられる性格の悪さは。隠そうとしても隠せるものではないようで、既にまっとうな連中にとっては。
どんなに悪くても『あいつ等め……』といった具合の、暗黙の了解に近いものがあったのが、この口ぶりでよくわかった。
「いつからだ?いつからだと聞いてる、結構長いはずだぞ。お前の道具にいたずらをやりやがったのは」
ややまくしたてるような友人の声に件の歩荷は『まぁまぁ』だとか『周りの迷惑になるよ』などと。
やはり性根は相当純粋なようで、さっきから至極まっとうなことしか言っていなかった。
極めつけの言葉は、多分これだろう。
「連中がそう簡単に戻ってこれるというか、来るというか……そもそも君も含めた周りが、受け入れる?」
努めて優しい声色を件の歩荷は出していたが、紡ぎだされる言葉は突き放していたのは言うまでもない。
出来るだけ柔らかい表現をするならば、住む世界が違うから。お互いにとってうっぷんをためる原因にしかならない。
ぐらいの表現であったが、腹の底では戻ってこないほうが良いとは思っていそうであった。
しかしながら天性の純粋さがそうさせるのか、あくまでも件の歩荷は、雲居と物部が好いているこの男は。
「山向きの性格じゃないんだよ。もっと人気の多い場所のほうが、多分、今よりは……」
お互い違う道のほうが多分、対立せずに済ませられる。ぐらいの表現を使おうと苦心していたし。もしかしたら本心かもしれなかった。


「お前なぁ。一歩間違えば、滑落していたのはお前かもしれなかったんだぞ!!」
だがこの友人君にとっては、仲間の装備に悪質な細工を施されていたというのが。酷い怒りを引き起こしているが。
証拠さえつかめれば……と言う悔やむような声色は色濃かった。
やはり人間の身一つでは、また本業と兼ねながらの調査となると中々しんどいという事だろう。

……少し物騒な想像をしてしまった。もしもこの友人君が雲居一輪なり物部布都と接触したら。
やはり自分の懸念は本物だったと、その確証を得てしまった彼の動きがひどく心配になってしまった。
「阿求」
○○はもう一度、阿求に確認をとることにした。
「俺たち、稗田の名前を出す必要はないけれども。例の嫉妬深いあの連中、日銭を稼げるぐらいには動いてほしい」
「ええ、心得ていますわ。あなた」
阿求との約束は、確認は、これだけで十分だ。それぐらい信頼している。


「で、どうしますか。これから」
約束に確かな担保を、阿求が○○に与えた後。彼女は○○からの次の一手を心待ちにしていた。
「うん……あの友人君は煮え切らない件の男性に対する、抗議のつもりかな?会話もせずに勢いよく食べてる
多分、食べ終わったら即座に席を断ちそうだ。俺達も急ごう、あの友人君と接触する。阿求も付き合ってほしい」
付き合ってくれと○○に言われた阿求は、○○の役に立てると思いやる気を出したようで。
「はいっ!」
周りに気づかれないように小声だが、力強さは確かに感じ取れた。
最も、見方を変えれば。○○が阿求を利用していると、彼は自覚していた。


「お釣りは良い」
短く、小さく言いながら。この友人君は自分の分の料金を十分に払える金額を。
叩きつけようとしたが、すんでのところで思いとどまったらしく。握りこぶしをゆっくりと机に降ろした姿は、やや滑稽だった。
だがそれよりも滑稽なのは、この光景を横の席に座っていた客――のふりをした稗田家の配下――が。
手に隠し持っていた手鏡で、その様子を覗き見れると。阿求が教えてくれた事だろう。
自分はホームズを気取りたいと阿求に頼んでいるのに、ベイカー街遊撃隊すら満足に扱えないことに。
恥じ入るような気持ちが沸き上がるが。そもそも勝とうと思うのが間違いとも思えて。
「行くよ、阿求」
阿求の肩を抱きながら――自分への誤魔化しだ。勝つ事を諦めたことも含め――。
苛立ちを全く隠さずに、席を辞した友人君を追いかけた。
おあつらえ向きに、何人かの屈強そうな人間も席を立つのが見えたが。
そういう事は、基本的に求めていないので。手の平を少しばかり、押し出すようなしぐさで合図して。
自分たち夫妻だけで、出来うる限りはやると言うことを示した。
優秀である彼らはすぐに、○○のしぐさの意図を読み取ってくれたし。
簡単なしぐさや動作一つで、屈強な連中を動かしている○○の姿に。阿求はご満悦であった。


「失礼」
往来が少し――稗田家の手の物が周りに多いことを確認してから。○○は件の歩荷の、友人君に声をかけた。
「はい?」
はじめは道でも聞かれた程度にしか思わなかったが、○○と阿求が顔をはっきりとその友人君に見せると。
――○○はともかく――阿求の顔を見間違える人里の住人は、よくよくおかしな奴だ。
「……ひ、稗田ご夫妻?」
初めの『ひ』と言う言葉に、悲鳴のようなものを感じたのは。気のせいだと強引に自分を納得させた。
「大丈夫」
だが、まずやるべきことは。目の前の彼を出来る限り、落ち着かせて安心させることだろう。


稗田○○の顔はよく覚えていなくても、名探偵と言う役柄は阿求がしっかりと宣伝しているから。知っているだろう。
「今抱えている依頼で……あの歩荷さんの事を調べているんだ。正確にはあの歩荷さんの周り」
そう○○が言ったとき、彼は明らかに安堵して。そして幸運を目の前にして、喜んだような表情を。
後、汚い感情をも含めれば『ざまぁみろ』と言う色も、○○の目には確かに見えた。

「立ち話もなんだし、往来の人の迷惑になる。コーヒーぐらいなら奢るよ」
そう言って○○は――稗田夫妻は歩き出して。彼はその後ろを黙って、しずしずと付いて行った。
どたんばで計画を変えたが、上手く行っているようで何よりだし。阿求も機嫌がよさそうだった。


だが聞き取り調査と言っても。八意永琳から聞いた、嫌な奴らだという感想が事実であるという事。
それ以上の収穫は、残念ながらなかったが。○○からすれば、本命はこの後にあった。
「ひとつお願いがあるんですが……例の、滑落事故に会った連中の事ですが」
歩荷とは言わずに連中と○○は表現した。目の前の彼も、当然だという風にうなずいた。彼からしても、同じ扱いは自尊心が許さないだろう。
「件の歩荷さんの周りを……落ち着けるのが私への依頼なんですよ。依頼人の事を明かす事は出来ませんが。
しかしながら、あの連中を遠ざけることが安定の第一歩であることは。私の状況が分からずとも……
貴方や、貴方のお仲間。それに渦中にいる件の歩荷さん。それら全部の利益であることは……」
○○は確認するように彼の顔を見た。
「いなくなってくれたら、清々します!」
吐き捨てるように言った。問題はなさそうだ、皮肉気な感情が沸き上がるが。
「じゃあ、問題はなさそうだな」問題ないと言う時、少し心が痛かったが。
雲居と物部の動きが外に向くと、いよいよ隠せなくなる。せめて内側にしたい。
それなら、最悪の場合でも両勢力の首魁を呼んで話をすればいい。ブンヤにもかぎ分けられる心配は薄い。

「あの連中が、自分から歩荷以外の仕事を選ぶように仕向けてくれませんかね?無論、協力は惜しみません」
○○は筆記用具を取り出して、一枚の手紙をしたため始めた。
そして書き終えた手紙を、脇で控えていた。阿求が用意してくれた自分の護衛兼監視に渡した。
「八意永琳先生に、この手紙を渡してほしい」
護衛兼監視は、恭しく礼をして永遠亭へと向かった。
「もしも、連中が何かごねましたら……八意先生を頼ってください。連中の不法行為を、八意先生なら
……残念ながら、入院生活が暇すぎたのが悪かったのでしょうね。悪い話ばかりしています。
貴方のお友達のお道具に、悪い細工をした事も。話しているようなので。それを記録してくださいと頼みました」

命蓮寺にせよ、神霊廟にせよ。
依頼人であるナズーリンにせよ、蘇我屠自子にせよ。問題や恥は外に出したくないから、内々に処理したいだろう。

けれども。これで終わるとは、○○だって思っていない。雲居と物部は、戦友とは程遠い関係なのだから。
今回はたまたま、好いている男に利益があるから。ギリギリ協力できているだけだ。
晴れ晴れしい笑顔で、稗田○○にお礼を言う目の前の彼と違い。○○は全く喜べなかった。







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最終更新:2020年05月18日 22:34