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一つ、昔話をしましょうか
私の家は結構な富裕層でね、何一つ不自由したことは無かったわ。
え?今でもそうでしょって?
さてね、それは関係無いことだから置いといて。

不自由無い暮らしだったわ。ねだれば何でも与えてくれて。洋服、人形、ネックレス。
ありとあらゆるものを私は手にしたわね。
ただ、それ故に自分で手に入れる欲が欠落してた。
ほら、自分で稼いだお金で買う物って特段、大切に感じるでしょう?あの感覚が無かったの。

ところがある日、隣に一つの家族が引っ越してきた。
私たちと違って、何と変哲も無い、ごく普通の家族だったわ。引っ越してきた当日、うちに挨拶にきたの。
父と母、それと男の子が一人。
男の子も平凡な顔立ちで、一目惚れとか、そういうのはあり得なかったわね。
でも好きになったんでしょって?
ええ、好きになってた。不思議よね。恋って突然なんだもの。

それでね、お隣さんだから出会う確率も高いでしょ?最初の頃は会っても挨拶する程度だけだったけれどいつの間にか一緒に買い物する仲にはなっていたのよね。初デートは結構緊張したわぁ…。後で聞いたら彼もドキドキしてたって。

それからね、彼とは何度もデートをする仲になって最後は2人同時に告白したの!もう私嬉しくて思わず泣いちゃった。

彼ね、本当に嬉しい時、くしゃっとなるのよ。その顔がまたたまらなく可愛いの!写真見てみる?あ、やっぱ貴重な顔を見せるのは勿体ないわね。
でね、そのうちに彼からあるプレゼントを貰ったの。なんだと思う?
ええ、お察しの通り指輪よ。思わず泣き出しちゃったわ。
彼と一生を共に過ごせると思ったら全身が湧き出すくらい嬉しくて……。

でも、そんな素敵な彼だから狙うコソ泥も多かったのよね。
その筆頭が、あなた。

うふふふふふ。ゴミムシを消すのも、良妻の役目よね。

ていうか、ここまで聞こえてる?
一応、意識が保てるようにはしてあるけれど……。
ま、いいわ。
あなたは境界の世界で永遠に彷徨いなさい。





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最終更新:2020年05月19日 22:56