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日の出と夕暮れ時に塒に帰って○○と食事をとり、夕暮れ時には酒盛りをする。その繰り返しの日々がしばらく続いた。
数日が経過した頃に○○が「昼間が暇で暇で死にそうだ」と言ってきたので何冊か本を渡した。彼はその中でも幻想郷縁起がお気に入りのようで、そのことが私を苛つかせた。
「そんなにこの塒の外のことが気になるのかい?
ここは森の奥だから、人間の足じゃ人里までは最短距離でも丸一日はかかるだろう。しかも道中には言葉も通じないような妖怪がたくさんいる。余計な気を起こすんじゃないよ」
彼が一から十までちゃんと縁起を読んでいればこれが警告として機能するが、外の世界を想像するために縁起を読んでいるのであればそういう都合の悪いところは読み飛ばしているだろう。ただただ心配だった。

私が本を数冊買って帰ったことは極一部で話題になったらしい。私は普段本を読むような妖怪ではないし、何かあったと推測するのは簡単だろう。
話題にするだけなら勝手にすればいいが、天狗が尾行してきたのにはさすがに閉口した。
「射命丸、そこに居るんだろ?」
「やはり誘い込まれていましたか。萃香さんなら尾行を受け付けない移動方法をお持ちですし、妙だとは思ったんです」
「天狗が鬼を尾行しようだなんて随分と思い上がったものだね。明日の一面に私を載せるつもりかい?」
「いやいやいやいや、記事にはしませんって。さすがの私だって喧嘩を売っていい相手ぐらい弁えてます」
こいつは馬鹿ではないし、天狗にしては私と親しい方だ。嘘は吐かないだろう。
「それなら尾行なんてやめることだね。記事にもするな。
 いいかい?もし記事が出回るようなら、それがお前の新聞じゃなくてもお前の羽をへし折りに行くからな」
「は、はい。それじゃあはたてに釘を差してきます。念写するつもりかもしれないので」
射命丸は一目散に飛び立っていった。少し脅しすぎたか。
「ま、こればっかりは譲れないね」
素直に答えてやっても良かったが、○○のことが広まるのは、なんというか、気に食わない。彼は私の物だ。私だけが彼のことを知っていればいいのだ。
「しかし、天狗なら脅せばいいが、他の奴が来たら厄介だな。
○○はもう少し人里から遠ざけないと駄目かな」





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最終更新:2022年02月09日 22:21