「妹紅ぉぉぉぉ! 出てこい、ぶっ殺してやる!!」
○○は恐ろしい剣幕で竹林を歩き回っている。
もっと気付くのに時間がかかると思ったけど、意外と早く気付いたものだ。
「妹紅、さっさと出てこい! よくも、……よくも!」
○○を不老不死にすればずっと一緒にいられる。
○○がそれを望んではいなくても、それでも私は……
「妹紅! いるんだろ、出てこい! ……さもないと」
「さもないと、何?」
余裕綽々な態度で○○の前に姿を現す。
「怒り狂う顔も素敵ね」 
「妹紅!」
「ようこそ蓬来人の世界へ。歓迎するよ」
「ふざけるな! 今すぐ俺を人間に戻せ!」
「あはは、私が何年蓬来人やってると思ってるの?」
怒りは殺意に変わっている。輝夜の真似事をすれば○○の怒りを煽るのは簡単だ。
私も輝夜と対峙する時はあんな顔をしてたのかしらん。
「どう足掻いたって、私の肝を食べたんだから、もうあんたは人間には戻れない」
「……っ、このっ」
怒りが臨界点を越えたのか、私に飛び掛かりそのまま押し倒す○○。
私の首にその手がかかり、強く締め上げる。
なるほど、首を絞めるつもりか。……だけどね○○。
「熱っ!?」
「何度私がそうやって死んだかか知ってる? そんなんじゃ私を殺せない」
体の表面に炎を纏うと、○○はその熱さに耐えかねて手を離してしまう。
その隙をついて抑え込み、身体を反転させる。
「くっ、……このっ!」
きっちりと身体を抑えてしまったから、もう○○は動けない。
それでも必死に抵抗してくる○○に、いとおしさが込み上げ、私は○○の唇に吸い付いた。
「むっ!? ……くっ、……このっ! んむっ」
……甘い。愛する人と交わす口付けはなんて甘美なんだろう。
これからずっとこの甘さを味わえる。
そう思うとたまらなく嬉しい。例え○○の瞳が憎悪に染まっていようとも。
「憎い相手に組み伏せられたまま唇を奪われる気分はどう?」
「……殺してやる。絶対にお前を、殺してやる」
いや、むしろ憎しみの視線に背中がゾクリと震える。
……ああ、そうやって私を憎むだけ憎んだ○○は、どうやって私を殺してくれるんだろう。
「やれるものなら、ね」
言いながら○○の上着を裂いて、あらわになった肩口に指を這わせる。
「熱っ!?」
そして肩口を熱をもった指でなぞれば火傷が○○の肌に刻まれていく。
その火傷痕が形作るのは鳳凰の翼。
「どうかな? ○○のために何度も練習したんだ。気に入ってくれると嬉しいんだけど」
「この……っ」
ああ、いいよ、○○。
怒りと悔しさの入り交じったその表情、とても素敵……
「それはあなたが私に屈服した印。今度はあなたを殺してからその印を付けてあげる。あなたを殺すたびに何度もね。
 私を殺さない限りあなたからその印が消えることはない」
「絶対に、……絶対に殺してやるからな」
「楽しみにしてる。頑張ってね」

憎しみの、私にとっては愛情の印を持った彼がまた竹林にやってくる。
私を殺すためにやって来る。
今夜もまた私は彼との殺し合いに酔いしれる。
この世界が終わるまできっとずっと、永遠に。

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最終更新:2017年04月08日 04:55