最近の少女達は前に出すぎだ。たまには引き撃ちも効果的だぜ



僕の家には妖精がいる
湖のほとりに住む大妖精さん。僕は大ちゃんって読んでる
掃除、選択、食事、彼女の生活の全ては僕が支えてる。ボランティアでも奉仕でもない、これは贖罪のためだ
溺れていた僕を助けるため、大ちゃんは湖に飛び込んでくれた。そのおかげで僕は溺死を免れたが、彼女の片羽は折れてしまったのだ
拾ってもらったこの命だ、飛ぶことができなくなってしまった彼女に検診することなんてなんでもない
……それに、彼女は可愛い女の子だしさ。男だったら気になっちゃうよね
けど彼女はものすごい遠慮深い。僕のせいで片羽を失ったのに、いっつも僕に遠慮してるんだ
気にしなくてもいいのにって、何度も言ってるんだけどね

大妖精「いつもいつもごめんなさい。私の世話なんて、面倒なことを……」
○○「いいんだって、大ちゃんのおかげで僕は生きてるんだから。なんてことないよ」
大妖精「でも……」
○○「いいのいいの。あと、この話はもうおしまいだよ」

そんなある日、朝食ができたと大ちゃんを呼びに行ったら、無人の部屋に手紙が一つ置いてあった

[○○さん、今まで本当にありがとうございます。でも私は、あなたに甘えすぎてしまいました
 あなたは優しい人だから、あれくらいの恩義をずっと忘れずに私に献身的に尽くしてくれましたね
 そんなあなたの優しさが嬉しくて、今までずっとここに住まわせていただきました
 でも、私はあなたにとって重荷にしかなりません。だから私は帰ります。あなたは、あなたの人生を生きてください
 さようなら。重荷でしかなかったけれど、こんなことを言う資格はないのかもしれないけれど、私はあなたが大好きでした]

ここを出たのはおそらく早朝。飛べない彼女の足は僕よりもずっと遅いはずだ。つまり、走れば追いつく!

○○「……って、わけだよ」
大妖精「なんでですか? どうして私を追ってきたんですか?」
○○「だって……ねえ……自分を好きって言ってくれた娘を黙って見送るなんて、そんなの嫌だし」
大妖精「あの……それって?」
○○「いや、ほら……僕も、大ちゃんのことが……好き、だよ」


こうして僕らは付き合うことになった
もっとも付き合うといっても特に何かが劇的に変わったということはない
あいも変わらず、なーんにも変わらず、仲良く暮らしているだけ。愛を確かめ合ったこと以外は、さ



文「あの、大妖精さんと○○さんのお住まいはこっちですか?」
にとり「そうだよー。あの二人に何か用なの?」
文「大妖精さんが片羽になった経緯から今の関係になるまでのお話を聞きたくて、ずっと探してるんです
  まるで私を避けるように住居をよく変えるので、なかなか見つからなくって困っちゃいます」
にとり「あれ? それ知らないの。有名な話だと思ってたけど」
文「ええ。ですが気になるのは、どうして[片羽のままでいるのか]なんですよ」
にとり「?」
文「妖精は人間よりも回復が早いんです。だから羽が折れたくらいなら、一月もあれば全快するはずなんですよ」
にとり「へー、それは知らなかったよ。でも、私も何か関係あるのかな?」
文「どういうことでしょう?」
にとり「あのね、○○が湖で溺れたのは、光学迷彩で姿を消した私が足を引っ張ったからなんだ
    ほんのお遊びだって大妖精さんに頼まれたんだけど、こんなことになるなんて思ってもみなくて
    それを言ったら、今後一切自分達に関わらなければ許してあげるって言われたから黙ってたんだけど……」
文「……なーるほど、読めましたよ。大妖精さんが私の取材を避けようとしてたわけが」
にとり「へ?」
文「彼女は、同情を買ったんですよ。治った片羽を隠し続けることで」


大妖精さんのことですか。ええ、知ってます
話せば長い 最近の話。知ってますか? 恋人は三つに分けられます
相思相愛の者  無理矢理付き合った者  相手を騙した者 この三つです
彼女は――――
彼女は『片羽の妖精』と呼ばれた存在   『彼』の妻になった少女
私は『彼』を追っている

文「うん、今回の見出しはこれで決まりですね。居場所もつきとめたし、これから取材に行きましょう!」
最終更新:2011年03月04日 00:57