永琳の日記



○月×日

今日も○○のお昼ご飯はニンジンが山盛りになっている。よっぽど好きなんだろう
一生懸命ニンジンをほおばる姿を眺めているだけで、今日のお昼が終わってしまった
一緒に食べましょう
そんな一言は、今日も言えなかった


○月□日

今日も言えなかった


○月×△日

今日も言えなかった


×月□日

今日も言えなかった
けれど、そんな日々は今日でもうおしまい
先月からほとんど寝ずに作っていた惚れ薬がようやく完成した
毎日少しづつ摂取することで、私を少しづつ、自然に、違和感を感じることなく愛してしまう薬
あとは、これをどうやって○○に飲ませようか


×月▽日

昨日の薬を7本のニンジンに滲みこませた
ニンジンが大好きな○○のことだから、ちゃんと食べてくれるはずだ
初めはお昼ご飯に混ぜようかと思ったけれど、他のイナバ達が食べては意味がないのだし
夕方、○○が自分の家に戻って自炊するときに使ってもらうのが一番良いだろう
くだんのニンジンの袋を○○に渡すと、とても嬉しそうに微笑んでくれた
もうすぐだ、もうすぐこの笑顔が私のものになる
そう思うと、私も笑みを押さえることができなかった
一日一本ずつとちゃんと言っておいたから、○○が本当に私を好きになるのは、7日後の×○日の予定だ
今からその日が待ちどおしい


×月□○日

一日目
初めて一緒にお昼ご飯を食べた。私の突然の誘いを断らなかったところを見ると、やはり薬は効いているらしい
いつもの恥ずかしくてできないような話も、嫌われていないと分かっているだけで安心して話せる
この調子で、もっともっと私を好きになってほしい


×月□△日

二日目
○○がお昼ご飯を作ってきてくれた
口に合わないかも、なんて言ってたけど○○のご飯が美味しくないわけがない
特に嬉しかったのは、私の好物の川魚の天ぷらが入っていたこと
昨日何気なく話しただけのことを、きちんと覚えていてくれたことに感動してしまった
ちょっと気になったのは、あれだけ大好きだと言っていたニンジンが一つも入っていなかったこと
きっと夜にたくさん食べて、お昼に入れるのは止めておいたのだろう


×月□□日

三日目
毎日来る患者の診察と、あの薬を作るために連日徹夜した疲れが出たのか、私は倒れてしまったらしい
そして目を覚ますと、布団で寝かされて枕元に心配そうな顔をした○○がいた
聞けば、一日中私に付き添って看病をしてくれていたらしい
少し涙が出てきたけれど、熱のせいだと言ってごまかした
薬は着実に効いている。早く×○日が来てほしい


×月×□日

四日目
今日も○○お手製のお弁当を食べているとき、急にデートに誘われた
これが四日前以前なら何も言えずに逃げてしまっていただろうけど、薬で好かれていると分かっている今なら何も恐れることはない
村で買い物をしたり、茶屋で二時間も話し込んでしまったり、夜になって手を繋いで帰ったりと、私の生涯最高の一日だった


×月×▽日

五日目
いつものお弁当のお礼に、今日は私が○○の晩ご飯を作ってあげた
またあのニンジンを食べさせようと思ったけれど、袋の中に入っていたニンジンは残り二本
すでに朝に一本食べてしまったらしい
薬を過剰摂取させるわけにはいかないので、○○の好物だと言うコロッケを作ってくれた
○○は美味しいと笑った後に、良いお嫁さんになるよと言ってくれた
……薬は効いていると言うのに、鈍感なところは変わらないみたい
あと、○○のペットの兎にもとてもなついてもらえた。もうすぐ私があなたの飼い主の奥さんになるからね
でも、兎にラビット鈴木なんてつける彼のネーミングセンスはどうかと思う


×月××日

六日目
今日は彼は休み
けれども薬の効果できっと私を求めているのだろう
明日になれば、私の至上の時間がずっと続いていくことになるはずだ
今日一日は、明日のための充電期間だと思って耐えた
……ほんとうは、私も○○分が足りなくて泣きそうになってたんだけど


×月×○日

七日目
やはり私は大・天・才! だった
○○が、私に付き合ってほしいと告白してくれたのだ
嬉しくて、嬉しくて嬉しくて嬉しくて、みんなの前で○○に強く抱きついてしまった
これこそがハッピーエンドなのだ

……けれど、薬を使った後ろめたさを感じないと言えば嘘になる
だから、これから私は私の記憶を消す薬を作ろうと思う
○○と付き合うまでの経緯を、全て消す薬を


○○の日記


○月×日

定食の時間→ニンジンいらないよ→うわぁ……(山盛り)
いつもの光景だ。ウサギだらけだからニンジンいっぱいも分かる。しかし嫌いな奴がいるってことも考えてくれ
まあ、八意先生の助手(の助手の助手程度)くらいの俺の言うことなんて聞いてもらえるとは思えんがね
そして、あいも変わらず背中には八意先生の視線が突き刺さってるのが分かる
ニンジンを食べきるまで帰さないぞ、と言う意思表示なのだろうなぁ
綺麗で美人で瀟洒でクールで俺なんかじゃつり合うはずもない人だけど、そんなとこばっかり面倒見がいいんだから


○月□日

定食の時間→ニンジンいらないよ→うわぁ……(山盛り)→先生の監視


○月×△日

定食の時間→ニンジンいらないよ→うわぁ……(山盛り)→先生の監視


×月□日

定食の時間→ニンジンいらないよ→うわぁ……(山盛り)→先生の監視


×月▽日

八意先生からプレゼントをもらった。これがニンジン詰め合わせじゃなかったなら夜通し踊って喜べるんだがなぁ
しかし一日一本と強く念を押されたのはなんなんだ? 薬じゃあるまいし
まあ、たとえニンジンでも八意先生から物をもらえたってだけで、少なくとも嫌われてはいまい
そうプラス思考でいこうと思う


×月□○日

このニンジンは結構いいものみたいだな。ラビット鈴木も大喜びで食ってた
いやね、いくら八意先生からもらったものでも、家でニンジンを食べるのははちょっと……
そんなことより、今日は初めて八意先生がお昼に誘ってくれた
好きな本、好きなご飯、楽しかったこと。たわいもない話ばっかりだが、俺にとっちゃ至高の時間だ
一緒にいて嬉しいし、話も楽しいしな。これでニンジン山盛りでなけりゃ最高なんだが


×月□△日

毎日毎日ニンジン漬けはもう嫌だぉ……だからお弁当作ってくぞ!
ってなわけで、今日から俺は弁当持参で行くことにする。無論ニンジンなんか欠片も入れねぇぞ
八意先生のニンジンは、今日もラビット鈴木が大喜びで食べましたとさ
そして八意先生の分まで弁当を作っていく作戦はみごとに好を征したようで、大喜びしてもらえた。やったぜ
胃袋を征したものがその女を征するってけーね先生が言ってたと誰かが言ってた


×月□□日

今日は八意先生が過労で倒れた。医者の不養生とはこのことだろう
自分から申し出て看病することになったが、着替えと体拭きだけはやらせてもらえなかった。ちくしょう
まあ心配だったと言うのももちろんあるけど、これで少しでも好印象を持ってもらえたら、なんて姑息なことも考えていた
しかし、涙ぐんで喜んでくれた八意先生を見れただけでも、一日看病してたかいがあったってもんだろう


×月×□日

昨日の成功があったせいで、俺はどうやら天狗になっていたらしい
そうでもなきゃ八意先生をデートに誘うなんざできっこねえ
その上俺なんかがOKもらったって、何これ? 夢? 今日一日のデートが夢だって言われたほうがまだリアリティがあるぞ
有頂天になりすぎて、どこ行って何をしてどんなこと話たかぜんぜん覚えてねぇ


×月×▽日

お弁当のお礼と言って、八意先生がご飯つくりに来てくれた。先生のエプロン姿万歳! 眼福ってレベルじゃねーぞ!
晩飯うめぇ! コロッケうめぇ! きざんだだけのキャベツもなぜかうめぇ!!
そんでラビット鈴木も妙に先生になついていた。隙あらば人に噛み付くのが生きがいみたいなウサギのくせに
やっぱ先生はウサギに好かれる程度の能力を持ってるんだろう


×月××日

フラグが立った。たぶん立ったと思う。立ったんじゃないかな。まあちょっと(フラれる)覚悟はしておけ
実は、先生は俺のことを憎からず思ってくれてるんじゃなかろうか
それじゃ、明日当たって砕けてみるのも有りだよな!
……書いてみるとたった三行だが、こうして決心が付くまで丸一日にかかった


×月×○日

まさか受けてもらえるとは思いもしなかった。俺なんかの何が良かったのかわからんが、俺と永琳は晴れて恋人になったのだ
……まあ、イナバいっぱいの食堂で抱きつかれるとは思いもしなかったけどね!
一つ悪いことしたなぁと思うのは、せっかく永琳にもらったニンジンをみんなラビット鈴木に食わせちまったことか
今日から頑張ってニンジンを食べられるように頑張ろうと思う
ああ、明日から始まるバラ色の交際日記を綴るのが今から楽しみだ

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最終更新:2020年01月05日 02:10